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[特集]

難病の女性翻訳家、創作が生きる力

2011/03/27 08:47 JST更新

(C) Tien phong, Ho Huy Son
(C) Tien phong, Ho Huy Son
 紅河デルタ地方タイビン省ミンタン村に住むグエン・ビック・ランさんは、これまで海外の文学作品16本を翻訳した女性翻訳家だ。彼女の作品は読者はもちろん作家の間でも高い評価を受けている。一方で、彼女は難病の女性翻訳家としても知られている。彼女の病名は「筋ジストロフィー」。現代医療では、根本的治療法がない難病である。    発病後は学校にも通えなくなり、人生の目標を見失いかけていたランさんだったが、独学で英語の勉強を始めて、ついには大学の英文学科のカリキュラムを修了する。その後、自分の知識を活かせるようにと、自宅で無料の英語クラスを開くことにした。当時、地元では英語の教師がおらず、子供たちは英語を学ぶ機会を失くしていた。筋力の衰えた手で、床に置いた黒板に字を書くことは大変だったが、クラスで子供たちに教えることは生きがいになった。毎回、成績優秀者には、自宅の庭で育ったリンゴを贈るのがクラスの習慣になり、クラスはいつしか「リンゴのクラス」と呼ばれるようになった。  「リンゴのクラス」を始めて4年が過ぎたころランさんは病気が悪化し、入院生活を強いられるようになった。体力が衰え、クラスを続けることも出来なくなった。心身ともに弱っているランさんを何とか励まそうとした叔母からの薦めでランさんは小説の翻訳を始めた。

 こうして26歳のとき、最初の小説「Never doubt my heart」の翻訳を終えた。周囲の勧めもあり、翻訳した作品を出版社に投稿したところ、同出版社の編集者から評価され、翻訳の仕事を任されるようになる。出版社の依頼のほか、インターネットを通じて読んだ海外の作家の文学作品を翻訳する仕事も始める。  それらの活動を通して知り合った作家の中には、Shirly Cheng(生まれつき目が不自由なアメリカ人作家)がいる。Shirlyをはじめ多くの作家はランさんの活動を応援し、著作権料も要求しないという。これまでに翻訳した作品の1つAda Aharoni著の「From the Nile to the Jordan」(ユダヤ人の悲劇的な歴史と思いを綴った作品)を翻訳した際、原作著者に平和の願いを込めた短編を書き下ろして贈ったところ、同作品が国際平和文化文学開発フォーラムで紹介され、注目を集めた。    ランさんは、現在も病と闘いながら、自分と同じような病に苦しむ人、苦難に立ち向かう人を励ます内容の文学作品を毎年1作品翻訳し、児童擁護施設を訪れて、本を寄贈する活動を続けている。  

[HoHuySon TienPhong 2009 29/11 11:10 U]
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