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[特集]

HIV感染者の世話を引き受ける強い母

2011/08/07 08:35 JST更新

(C) Nguoi Lao Dong, Khanh Linh
(C) Nguoi Lao Dong, Khanh Linh
 ハノイ市トゥーリエム郡ドンガック村に住むブイ・ティ・ドンさんは、かつて人生に絶望して自殺しようと思ったことがある。2人の息子が麻薬に溺れてHIVに感染したからだ。それでも彼女はめげなかった。息子と同じ境遇のHIV感染者の世話や、エイズで死亡した人の遺体を布で包む仕事を引き受けている。  1980年代の前半、ドンさん夫婦は子供を育てるため2人で共働きしなければならなかったが、ホン川(紅河)沿いの小さな家で幸せに暮らしていた。ところが、成長した長男は家計を助けようと働きに出たものの、ほどなくして麻薬中毒になってしまった。何度も治療を試みた後、長男がHIVに感染していたことが分かった。  さらにそれからたいして間をおかず、次男も長男と同じく麻薬に溺れていることを知る。ドンさんが絶望に沈んでいる中、夫は責任を放棄し妻子を捨てて消えてしまった。  ドンさんは当時を「朝は中毒患者の治療施設にいる長男を見舞い、午後には家で次男の世話をした。夜は一人で泣いていた」と振り返った。次男もHIVに感染していたことを知ったときは、気を失いかけたという。その後長男は亡くなった。

 しかしドンさんにとっては、子供を1日でも長く生きながらえさせることが自分の生きる力だった。毎日市場の掃除や荷物運びなどの重労働をこなした。薬代が足りなくなると、病院に行き血液を売った。2か月半に1回しか採血できない規則だが、1か月に4~5回売血したこともあるという。  ドンさんは今ニャッタン市場で茶店を開いているが、HIV感染者を助ける仕事もしている。20年以上前のことだが、近所の家の男性がHIVに感染しエイズの最終段階にあった時、男性の家族がドンさんに世話を頼みに来た。彼女はすぐに引き受けた。「男性は息子と同い年で遊び友達だった。不幸な運命を分かち合うのは当然と思った」とドンさん。  その後、ドンさんにHIV感染者の世話を頼む家族が増えていった。全身に発疹のあるエイズ発症患者の入浴を手伝った時のことを今でもよく覚えている。ドンさんが素手でいるのに、患者の父親は注意深くゴム手袋を付けていたという。  ドンさんはHIV感染者の世話だけではなく、エイズで死亡した人の遺体を洗い清めて布で包む仕事も引き受けている。この20年余りの間に接した遺体の数は数百体に上るが、この仕事ではお金を一切受け取っていない。  

[Nguoi lao dong online, 09/06/2011 00:08, O]
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