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[特集]

ペルーに渡ったベトナム人、波乱万丈の人生

2014/02/02 08:38 JST更新

(C)  petrotimes
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 1000日に及ぶ路上生活を想像出来る人がどのぐらいいるだろうか。祖国を離れて、レストランを経営している人物が、かつて一文無しで、彼の地の言葉も全く話せなかったなどと誰が想像できるだろうか。しかし、その人物は1000日の路上生活を経て、地球の裏側にあるペルーで成功を収めたのだ。  件の人物グエン・ティエン・バンさんについて、人づてで聞いた話は信じ難いものばかりだった。彼の営むレストランを訪ね、実際に会ってみて初めて、彼がまさに数奇な人生を歩んできたことが実感できた。バンさんは、北中部ハティン省カムスエン群で生まれ、18歳の時、台湾人の雇い主のもとで遠洋漁業の仕事に就いた。2年の航海の間、彼は一度も家に帰ることができず、馬車馬のように働かされたという。1日20時間の労働を強いられ、空腹に耐えながら、ぼろぼろになるまで働いた。  2000年の終わり頃、彼は船上の苦しい生活に耐えかねて、ペルーの港に給油で寄港した際に船から脱走した。その時の所持金は僅か100ドル(約1万円)、身分証明書すら持っていなかった。たまたま降りた先がペルーだったが、スペイン語も碌に離せない状態だった。  所持金は数日で底をついた。食いつなぐために何とか日銭を稼がなければならなかったが、市場に行って身振り手振りで働きたい意思を伝えても、だれも雇ってくれる人はいなかった。そこで米を担いでいる人を見ると、すかさず代わりに背負ってあげるようにした。何人か地元の人が彼を哀れんで、時にはパンを、時には小銭を恵んでくれた。夜は路上で寝泊まりした。風雨を避けられる場所を探して体を休める毎日。夜は10度ぐらいまで下がる時もあり、新聞紙を毛布代わりにして寒さをしのいだ。

 3年間、彼は首都リマの市場付近で路上生活を続け、皿洗い、飴売り、新聞売り、ガム売りなどの仕事をして暮らした。そんなある日、彼はフローレス地区にあるレストランで皿洗いの職にありつく。中国人の店主は、彼が長く路上生活を続けていたことを知っており、仕事の早さを買って雇い入れたのだ。  数か月働いた後、彼はサン・マーティン地区にある他の店に移る。この店の主人は、他の地区に新店舗を出そうとしていた。店主はバンさんの機敏さや辛抱強さなどを評価して、厨房での仕事を与えた。2004年初めに、店で寝泊まりすることを許可され、彼はようやく路上生活に別れを告げることが出来た。彼はこう語る。「以前5つ星のホテルに泊まったこともあったけど、路上生活から抜け出した時の喜びはそれとは比べ物になりません」その頃にはアシスタントシェフに昇格し、月収も約200ドル(約2万円)まで上がった。  しかし、やっと手に入れた安定した暮らしも長くは続かなかった。他の中国人スタッフが入ると、店を追われ、また別の地区の店で一から働き始めなければならなかった。それでも、この頃にはスペイン語も上達し、コミュニケーションをとるのに不自由しないレベルになっていた。  また、新しい店では、ペルー人老夫婦との運命的な出会いがあった。夫婦はバンさんを可愛がり、彼を養子に迎えることを決意する。バンさんが自らの境遇を語ると、夫婦は泣いて哀れんだ。そしてバンさんを外務省に連れて行き、身分証明書の発行を申請した。しかし、申請は却下され、今度は赤十字国際委員会にベトナムへの渡航を斡旋してくれるよう頼んだが、これも叶わなかった。

 夫婦は、彼の身分証明書を得るため、チリまで赴き、当時の在チリ・ベトナム大使に直談判する。大使は異国で暮らすベトナムの同胞として、彼の身分証明書取得のために東奔西走した。2006年の終わり頃、バンさんはようやくパスポートを入手した。  店を転々としながら料理の腕を磨いた彼は、料理長を任されるほどになっていた。その後、ウェイトレスをしていた女性と結婚し、2009年に夫婦が資金を出し合って自分たちの店を開いた。店はそれほど大きくなく、テーブルは8つのみ、夫が厨房に立ち、妻が給仕や会計を担当している。今でも決して金持ちになったわけではないが、それでも自家用車を買うことができた。  彼はこう語った。「今ではペルーに住むベトナム人も増えました。主にベトテルのペルー支社で働く若者たちです。ベトナム人はどこに住んでいようとフォーが恋しくなるものなので、皆この店にやってきます」  経済的にも安定した生活を手に入れたが、彼は決して貧しかった日々のことを忘れない。「自分もかつて在ペルーのベトナム人たちに世話になった。その恩返しというわけではないが、ペルーを訪れる同胞たちの手助けをしたい。もしペルーに来て、ベトナムの味が恋しくなったら、私の店に来てほしい。故郷の味をごちそうするよ」 

[Nguyen Nhu Phong petrotimes 08:58 | 05/12/2013U]
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