VIETJO - ベトナムニュース 印刷する | ウィンドウを閉じる
[特集]

「11歳の母」、学校に通いながら5人の子育て

2014/04/20 08:25 JST更新

(C) Dan Tri, ゾーさん(中央)と子供たち
(C) Dan Tri, ゾーさん(中央)と子供たち
(C) Dan Tri, ゾーさん(右端)と子供たち
(C) Dan Tri, ゾーさん(右端)と子供たち
 タインホア省ムオンラット県ムオンリー村サールン村落に住むモン族の少女スン・ティ・ゾーさんは、9人兄弟の5番目に生まれた。彼女は幼いころから、畑を耕すだけの地べたに這いつくばるような苦しい生活から抜け出すため、文字の読み書きを勉強したいと思っていたという。  彼女は、学校に行くと決めてから1日も休むことなく、片道7キロ以上もの道のりを歩いてムオンリー中学校へ通っている。家族は別の畑で仕事をすることになり遠い村落に移って行ったが、彼女は学校に通うためサールン村落の家に残ることになった。  彼女の兄や姉たちは小さいころから両親と畑に出て学校に通えず、家族は誰一人として文字を読むことができない。「兄弟たちに文字を教えてあげたい」と彼女は言う。文字を知らないばかりに、畑と牛の世話しかできないからだ。  彼女は小学生かと思うほどかなり小柄な体格だが、教師や友人たちの誰もが感心するほど勉強への情熱は人一倍だ。更に彼女は、11歳になる前から両親と離れて暮らしているというだけでなく、4歳の妹、5歳の双子の弟に加え、4歳と5歳の姪の合計5人もの子供たちを「育てている」というから驚きだ。「畑に行かずに勉強させてもらっているのだから、子どもたちの面倒を見るのは当然のこと」と彼女は言う。

 毎日長い道のりを学校へ行くだけでも大変なのに、買い物、食事の支度、洗い物に洗濯、子供たちの風呂の世話など、あらゆる家事を一人でこなさなければならない。朝早くから起きて洗濯と水汲みをし、子供たちを学校に行かせると、食材を買い出しに市場へ行き、昼食の準備。彼女が学校に行くのは午後からで、学校から戻るとすぐ夕食の支度、という生活だ。時間があるときは子供たちに文字を教えている。11歳にして、彼女は姉であり、母親であり、先生でもあるのだ。  学校には遠方から通う児童のための寄宿舎もあるのだが、子供たちの面倒を見なければならない彼女は入ることができない。両親の住む村落はかなり遠く、会えるのは月に1~2回だという。食べるものにも事欠くことがあり、「時には森に入って山菜を取って食べます。塩とご飯だけしかないこともあるんですよ」とゾーさんは言う。  文房具や本を買うのにも苦労している彼女だが、学校の成績は優秀だ。担任の先生によると、彼女は飲み込みが早く、大変な努力家で、特に数学と英語の成績に秀でているという。そのため、最近彼女へ200万ドン(約9600円)の奨学金が支給されることが決まり、引き続き中学校へ通えるようになった。学校側も、彼女が学業を続けられるよう、できる限り手助けをしていくという。  遊びたい盛りの11歳にして、彼女は立派に学業と母親役を両立させている。ベトナムは経済発展しているとはいえ、山岳地帯の生活はまだまだ貧しい。彼女の努力が実を結び、明るい未来が待っていることを祈ってやまない。 

[Dan Tri, 10/04/2013 S]
© Viet-jo.com 2002-2024 All Rights Reserved.


このサイトにおける情報やその他のデータは、あくまでも利用者の私的利用のみのために提供されているものであって、取引など商用目的のために提供されているものではありません。弊サイトは、こうした情報やデータの誤謬や遅延、或いは、こうした情報やデータに依拠してなされた如何なる行為についても、何らの責任も負うものではありません。

印刷する | ウィンドウを閉じる