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[特集]

フランス極東学院の資料に見る20世紀初頭のベトナム

2014/12/21 06:56 JST更新

(C) vov クアンナム省ミーソン聖域の調査の様子
(C) vov クアンナム省ミーソン聖域の調査の様子
(C) vov タインホア省の世界遺産、胡(ホー)朝城の発掘調査の様子
(C) vov タインホア省の世界遺産、胡(ホー)朝城の発掘調査の様子
(C) vov クアンナム省ドンズオン遺跡(寺院遺跡)の彫刻
(C) vov クアンナム省ドンズオン遺跡(寺院遺跡)の彫刻
(C) vov 1926年のハノイ市の様子
(C) vov 1926年のハノイ市の様子
 フランス極東学院(EFEO)が保管する、20世紀初頭におけるフランス統治下のベトナムを写した写真55枚や多数の考古学遺物が、ハノイ市にあるベトナム国家歴史博物館(1 Trang Tien St./25 Tong Dan St., Hoan Kiem Dist., Ha Noi)で展示されている。







 同博物館とEFEOによる企画展「ベトナムの視点―フランス極東学院の資料に見る20世紀初頭のベトナム」の開幕式が12月3日、同博物館とフランス文化センターで行われた。同企画展は2015年3月まで。







 ベトナムでは長らく続いた戦争により、数え切れないほど多くの考古学的遺跡や遺構、遺物が失われてきた。特にチャンパ(2世紀から15世紀後半ごろまでベトナム中南部の沿岸地方に存在したベトナムの初期国家)やオケオ(2世紀から7世紀ごろまでメコンデルタ地方で栄えた扶南の都)については、主にレンガ造りの建造物が数多く残されていたが、爆撃などで大きく破壊され、資料としての写真でしか当時の姿を見ることができない。







 ベトナムの重要な遺跡の幾つかは、20世紀初頭にEFEOの研究者によって発見された。1898年には南中部沿岸地方クアンナム省にある世界遺産のミーソン聖域はフランス人によって発見され、その後EFEOの研究者らが建造物や彫刻、碑文などの調査・研究を行った。現在でもミーソン聖域の建造物の分類に用いられている「A10」や「B5」といった遺構ナンバーも、EFEOの研究者らの功績によるもの。









 EFEOは調査・研究だけでなく、ベトナムにおける博物館の基礎も築いた。1926年、歴史的な遺物の保管を目的として、後のベトナム歴史博物館、そして現在の国家歴史博物館の前身であるルイ・フィノ博物館をハノイ市に建設(ルイ・フィノはEFEOの多額の資金援助をした人物)。更に1915年には、EFEOの研究者アンリ・パルマンティエが南中部沿岸地方ダナン市に現在のチャム彫刻博物館である博物館を建設し、1936年にアンリ・パルマンティエ博物館と名付けられた。







 現在EFEOが所蔵する資料には、カンボジア関連の写真3万枚、ベトナム7000枚、中国3000枚、ラオス3000枚などが含まれる。今回の企画展で展示されている写真55枚は莫大な資料の中から厳選されたもので、オリジナルの写真は19世紀後半に発明された「臭化銀(シルバー・ブロマイド)ゼラチン乾板」(ガラス板に臭化銀粒子を感光剤として散乱させたゼラチン乳剤を塗布した乾板)を用いて撮影された大判や中判のネガフィルムとなっている。いずれもデジタル化され、復元処理が行われた。







 展示されている写真は、◇考古学、◇各博物館の建設、◇20世紀初頭のベトナムの暮らし、◇南郊壇の儀式の4つのテーマに分かれている。







 「考古学」では、EFEOの研究者によるベトナム各地の遺跡の復元など、当時の考古学的調査の過程を紹介している。注目すべきはチャンパとオケオの文化に関わる新発見の数々で、発掘された建造物や遺物などの写真が残されている。







 「各博物館の建設」では、EFEOが建設した各博物館の写真を紹介。EFEOはベトナム、ラオス、カンボジアを合わせた領域のフランス領インドシナ(1887~1954年)に8つの博物館を建設した。このうち国家歴史博物館及びチャム彫刻博物館を含む5つが現在のベトナムに建てられた。









 同企画展の中で最も多くの写真を占めるテーマが「20世紀初頭のベトナムの暮らし」で、農業など様々な儀式や祭、村の鎮守の神や祖先崇拝に関わる儀式、葬儀といった当時の人々の民俗文化、また生活の様子やかつてのハノイ市の様子などを紹介している。







 「南郊壇の儀式」では、阮(グエン)朝(1802~1945年)の第13代且つ最後の皇帝バオダイの時代に当たる1939年に行われた南郊壇の儀式の写真を紹介している。







 これらの資料のほか、同企画展では国家歴史博物館が所蔵する約50点の考古学関連遺物も展示されている。これらはいずれもEFEOの調査・研究に用いられていたもので、展示キャプションや遺物分類登録書、考古学的分析サンプル、遺物ケース、発掘調査日誌、カメラ、写真乾板、ネガなどが含まれる。







 また、ベトナムの考古学を語る上で重要なホアビン文化(西北部。中石器または新石器時代初期)、バクソン文化(東北部。中石器または新石器時代初期)、ドンソン文化(北中部。金属器時代初期)、サーフィン文化(中南部。鉄器時代)、オケオ、チャンパといった全国各地の各時代における遺跡から出土した遺物も多数展示されている。これらの各文化は現在も世界各国の研究者により調査・研究が進められているが、EFEOの研究者たちが研究の基礎を築き、大きく貢献してきたことで知られている。







 なお、3月14日から6月9日にかけて、フランスのパリにあるチェルヌスキ博物館でもEFEOの写真を展示した企画展「実在のベトナム」が越仏国交樹立40周年記念事業の一環として開催された。 

[Thu Linh, VOV, 07:00, 04/12/2014, A]
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