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[特集]

文化財を3Dで複製、17歳の若きレプリカ作家

2015/02/08 06:20 JST更新

(C) tuoitre クアンさん
(C) tuoitre クアンさん
(C) tuoitre クアンさんの作品
(C) tuoitre クアンさんの作品
(C) tuoitre クアンさんの作品
(C) tuoitre クアンさんの作品
(C) tuoitre クアンさんの作品
(C) tuoitre クアンさんの作品
 ハノイ市に住むグエン・チー・クアンさんはわずか17歳ながら、何百点にも上るベトナムの歴史的文化財のレプリカ(複製)のデータベースをウェブサイトで紹介し、注目を集めている。  工芸家の家に生まれたクアンさんは、幼い頃から父親に付いて国内各地の遺跡をめぐりたくさんの美しい文様や古物の型を収集していた。父親から文化財の価値を教わって育った背景から、文化スポーツ観光省が「ベトナム人の伝統や風習にそぐわないシンボル、商品、レプリカなどを使用してはいけない」という法令を出した時、「レプリカを作って多くの人にそれを知ってもらうことがなぜいけないんだろう」と疑問に思ったという。  ベトナム美術博物館が2014年11月に開催した「ベトナムの古代彫刻における獅子の形状」展を見て、クアンさんはこう語る。「このような実際の展覧会は空間的にも時間的にも制限があるので、見に来られない人もたくさんいます。かたや私のレプリカデータベースは、ウェブにアップすれば誰でも好きな時に見ることができます。」  こう考えたクアンさんは、持てる力と時間を注ぎ込んでベトナムの歴史的文化財のレプリカ製作に取り組んだ。彼のウェブサイト<http://vr3d.vn/>には「ベトナムの歴史的文化財」コーナーが設けられ、多数のレプリカが紹介されている。通常の立体作品と異なり、彼のレプリカは隅々まで正確に再現できるよう3Dプリンターを使って作られている。文様が少なく簡単なものでも、製作と手直しを経てウェブサイトに載せるまでに5日はかかるという。

 サイズが大きく、文様が多く、ゴツゴツしているものは製作にかなりの労力を要する。手が込んだ文化財を3D化するには多数のデータを集めなければならず、プリントだけで丸1日かかる。色は現物を参照し、サイズも正確に測る上、ホコリや苔も忠実に再現して、本物と「同じ」ものを作ることにこだわる。  ウェブサイトではレプリカを回転させて見ることができ、拡大して細部まで見ることもできるようになっている。クアンさんのこの「オンラインレプリカ美術館」は、これまでにベトナムの様々な年代の多種多様な文化財を紹介してきた。  レプリカの作り方は幼い頃に父親から教わったが、ウェブサイトにデータベースを掲載する技術は全て独学だ。中学2年生の時、彼は家族のために美術工芸品を販売するウェブサイトを制作した。掲載した写真はどれもあまり見栄えが良くなかったため、立体作品をウェブサイトに載せる技術をインターネットで調べ始めた。3D技術に夢中になった彼は同年の夏、両親に自分の興味を突き詰めるため進級せずに学校を辞めたいと申し出た。  「家族中誰もが高校は卒業するべきだ、とか、まだ中学校も卒業していないのに学校を辞めるとは何事だ、と大反対でした。でも当時の私は何よりも自分の作業に没頭している方がずっと好きだったのです」と彼は振り返る。その後はクアンさんの母親をはじめとする家族皆がクアンさんの気持ちを理解し、学校を辞めることにも同意。母親は「今になってみれば、あの子の決心は間違っていなかったと思います」と話す。

 クアンさんは「3D技術の研究をするために学校を辞めた時点では、ただ家族の美術工芸品をウェブサイトで紹介したいという思いだけでした。その後だんだんこの技術が様々な分野、例えばEコマースや歴史的文化財の保存などにも適用できるとわかってきたのです」と語る。彼は将来、このレプリカデータベースを活用してバーチャル遺跡を作り、それを全世界に広めるという夢を抱いている。  また、これらのレプリカの優れている点について、クアンさんは嬉しそうにこう語る。「レプリカは実際の光と3D環境内の光を使うので、光の当たり方を最適化することができ、細部の形や文様まで見ることを可能にします。最も重要なことは、誰もがいつでもどこででも見ることができるという点です。実際の展覧会と違って空間や時間に制限はありません」  文化財の注釈を付ける作業を手伝っている研究者チャン・ハウ・イエン・テー氏は「彼のプログラムで優れている点は、美物館に所蔵されていないような文化財まで全国の遺跡で収集してきていることです」とクアンさんを高く評価している。見る人は携帯電話やタブレット、パソコンなどの機器を使っていつでもどこででも見ることができるという点は、地方に住む人や教育現場においても非常に有益だ。クアンさんのプログラムは、ベトナムの歴史的文化財を海外に広めるツールでもある。こうしたクアンさんの努力の積み重ねで実現した立体作品の3D化は、ベトナムの文化財の保存と活用にとって大きな一歩となっている。 

[Vu Viet Tuan, Tuoi Tre, 18/01/2015 08:38 GMT+7, A]
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