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[特集]

子どもたちの登下校を見守り続けて20年、強面のヒーローおじさん

2015/05/10 06:24 JST更新

(C) tienphong
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 南中部沿岸地方クアンナム省ズイスエン郡ナムフオック町には、子どもから大人まで皆によく知られた有名な強面のおじさんがいる。彼の名は、レ・バン・ティンさん(42歳)だ。ティンさんはこの20年間、子供たちの登下校を見守り、交通誘導をボランティアで行ってきた。  20歳の頃、彼はナムフオック町の三叉路にある小さな修理工の店に転がり込んだ。客はそれほど多くなく、暇を持て余して路上に座っている間、彼はいくつもの交通事故を目撃してきた。事故の多くは、標識や信号のない通りでお年寄りや子どもが左右をよく見ずに渡ってしまうことが原因だった。彼はそんな光景を見かけると、仕事の傍らすぐに駆け寄って道を渡る手助けをしてきた。そのせいで本業の修理店の客をカンカンに怒らせて、客を失ったこともあったという。  初めの頃、彼が幼い子の手を引いて道を渡っていると、それを見た誰もが「彼のような強面の男が何をしているんだ」「どうせすぐ飽きるだろう」と笑った。それでも彼は意に介さず、子供たちが登校する時間になると毎日通りに出て、道を渡るのを見守ってきた。

 午後になると、彼が通りに飛び出す回数は更に増え、老人や視聴覚障害者が道を渡る手助けをする。下校時間になると、彼の修理場には子どもたちが集まってくる。三叉路を渡るときには皆、ティンさんが誘導してくれるのを待っているのだ。  「登下校の時間帯の交通事情は最悪です。車がたくさん行き交い、運転手にゆっくり行ってくれと話しかけるのにも声を張り上げないといけない。家に帰ると足はくたくたで声は枯れ、生姜湯を飲まないといけないような日も多いんです」と彼は言う。2006年、彼はナムフオック町警察に2つの看板を作るよう依頼した。書かれた文字は「注意!子どもとお年寄りに道を譲ろう!」。1つは昼用、1つは夜用だ。看板ができると彼は笛を用意し、それを吹き鳴らしながら、看板を掲げて道を渡る手助けをするようになった。  彼が笛と看板を持つようになってから、誘導を求める人は更に増えた。1年生から8年生までずっとティンさんに誘導をしてもらっていた青年は、「おじさんのお陰で子どもたちも安心して道を渡ることができます。ナムフオック町で、おじさんは唯一無二の皆のヒーローです」と語る。子どもの親たちも、彼に感謝している。お礼を子どもに持って行かせようとする親も多いが、彼は丁重に断っている。

 ティンさんの働く修理店の脇でいつも水を売っている女性は、「サンダルを買うお金が十分にあるからできること」とからかう。毎日何度も道を行き来するので、サンダルはすぐにだめになってしまうのだ。それに対して彼は、「いくら非難されようと関係ありません」と取り合わない。  朝早くから修理店に出ているが、やっと帰れるのは真っ暗になってからだ。彼は、子どもたちの集団を誘導するのも、お年寄りを誘導するのも、全て自身の責任において行っている。たとえ送迎付きで報酬が高くても、自分が居ない間に事故が起こることを恐れて出張の仕事も断ってきた。自分が忙しい時には、バス停でバスを待っている人やバイクタクシーの運転手に代わりに誘導を頼んだこともある。  「道を誘導するときには、たくさんの人の命を背負っているのだから、細心の注意を払って決して事故が起こらないようにしないといけないといつも考えています。だから常に平静でいるようにし、酒も飲まないようにしているんです」。2014年、ティンさんは交通に関するイベントで、「交通ヒーロー」の称号を与えられた。ティンさんは今日も町の人々を手助けして通りを行き来している。 

[Thanh Tran, Tien Phong, 13:06 05/03/2015, A]
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