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[特集]

手作りケーキを売って20年、病気の妻を支える盲人

2015/06/14 05:51 JST更新

(C) zing
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 ホーチミン市10区グエンチーフオン通りには、毎日路上に腰掛けてケーキを売る盲目の男性がいる。11区に住むチュオン・ミン・クアンさん(66歳)は、目が不自由であるにも関わらず、20年ものあいだ「トゥン(thung)」と呼ばれる小麦粉と卵で作ったケーキを売り、病気の妻を養い一家の暮らしを支えてきた。



 クアンさんは9歳の時、天然痘にかかり、その後遺症で失明した。かつて「不治の病」「悪魔の病気」と恐れられた天然痘にかかったことで周囲の人から差別を受け、クアンさんの少年時代は寂しいものだった。その後、妻のグエン・ティ・キウさん(68歳)と出会い、ようやく人生に転機が訪れた。2人は結婚して2人の子供を授かり、貧しいながらも幸せな毎日を送っていた。



 生計を立てるため、クアンさん一家は故郷のメコンデルタ地方ティエンザン省を後にし、ホーチミン市へ引っ越した。クアンさんは宝くじ売りなど幾つかの商売を試みたが、盲目ゆえにしょっちゅうお金を騙し取られ、商売はなかなかうまくいかなかった。そこでクアンさん夫婦は、自分たちでケーキを作って売ることにし、今に至るまで20年ものあいだケーキで生計を立ててきた。





 長男は幼い頃に他界し、次男は現在もクアンさん夫妻と一緒に暮らしているが、学歴が低く、定職には就けていない。妻のキウさんは心臓病と糖尿病を患い重労働ができないため、クアンさんは毎朝キウさんとケーキを作り、午後になるとケースに詰め込んだケーキを抱えて、1人でバスかバイクタクシーに乗ってグエンチーフオン通りへ出る。そして、路上に腰掛けてケーキを売る。



 ケーキ作りでは、クアンさんが小麦粉と卵を混ぜる役目だ。目は見えないが、手に染み付いた長年の感覚で材料を混ぜ合わせて、なめらかな生地を作る。これをキウさんが、型に流し入れてふんわりと焼き上げる。



 以前はお金を騙し取られることの多かったクアンさんだが、今やもう紙幣を軽く触っただけでいくらなのかがすぐにわかる「紙幣識別のプロ」だ。ケーキ1個を8000VND(約46円)で売って、毎日約8万~10万VND(約460~570円)の利益を得ている。



 クアンさんは、ケーキを作って売るだけでなく、使った道具の洗い物も身の回りのこともすべて自分でこなす。タバコだって吸う。「目は不自由だけれど、老いても体はぴんぴんしています。だから頑張って働くのは当然のこと。稼いだお金で家賃と食費をまかない、万が一の場合に備えてちょっとした貯金だってできますよ」と自信たっぷりに語った。 

[2015年6月14日 ベトジョーニュース A]
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