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[特集]

サイゴンの市場に名を残す1人の将軍と5人の女性たち

2015/11/15 05:28 JST更新

(C) vnexpress, かつてのオンライン橋市場
(C) vnexpress, かつてのオンライン橋市場
(C) vnexpress, 上:かつてのオンライン橋、下:現在のオンライン橋
(C) vnexpress, 上:かつてのオンライン橋、下:現在のオンライン橋
(C) vnexpress, 上:1968年のバーチエウ市場、下:現在のバーチエウ市場
(C) vnexpress, 上:1968年のバーチエウ市場、下:現在のバーチエウ市場
 ホーチミン市には、数多くの市場が点在している。中でも1区のオンライン橋市場(Chợ cầu Ông Lãnh)、10区のバーハット市場(Chợ Bà Hạt)、タンビン区のバークエオ市場(Chợ Bà Quẹo)、ビンタイン区のバーチエウ市場(Chợ Bà Chiểu)、ビンタン区のバーホム市場(Chợ Bà Hom)、そしてホックモン郡のバーディエム市場(Chợ Bà Điểm)は、同市の人々にとって馴染みのある、数百年の歴史を持った有名な市場だ。 1人の将軍と5人の女性たち  19世紀の学者チュオン・ビン・キー(Trương Vĩnh Ký、1837~1898年)によると、オンライン(Ông Lãnh)ことグエン・ゴック・タン(Nguyễn Ngọc Thăng、1798~1866年)は、阮(グエン)朝(1802~1945年)の第4代皇帝トゥドゥック(Tự Đức=嗣徳)帝(1847~1883年)時代の将軍だった。タン将軍はナムキー(Nam Kỳ)での最初の抗仏戦争に参加している。  先に挙げたホーチミン市の市場に名前を残している5人の女性は、タン将軍の妻だったとされている。タン将軍はそれぞれ異なる地域に5つの市場を建てて、1人1か所ずつ管理させていた。それは妻同士が互いに顔を合わせることを避けるため、またビジネスに専念するためでもあった。  タン将軍は、メコンデルタ地方ベンチェ省ゾンチョム郡の出身で、各地での抗仏戦争に参加していたが、1866年にゴーコンの地で戦死し故郷で埋葬された。現在、彼はタイン・ホアン(Thành Hoàng)やチャン・フン・ダオ(Trần Hưng Đạo)と共に1区コーザン通り(đường Cô Giang)のニョンホア廟(đình Nhơn Hòa)に祀られており、廟の近くの橋と市場には「オンライン」の名前がつけられている。また、11区にも彼に由来する「ラインビンタン通り(đường Lãnh Binh Thăng)」が存在している。  オンライン橋について、学者チュオン・ビン・キーは「この木造の橋は、近くに住んでいた将軍によって架けられたとされているが、恐らくこの人物がタン将軍で間違いないだろう」と述べている。この橋は現在、ベンゲー運河をまたいで1区と4区を結んでいる。

2度の火災で焼失した市場:オンライン橋市場(Chợ cầu Ông Lãnh)  1874年、オンライン橋の地域に市場が建設され、オンライン橋の名前がつけられた。この市場は、サイゴン川に沿ってメコンデルタ地方からタウフー運河に入り商売をする舟が行き交い、活気にあふれた場所だった。市場は、果物売り場、魚売り場、そして雑貨売り場の3区域に分けられていた。  市場は1971年の大火災で完全に焼失。その後に再建されたが、28年後に再び火災に遭い、家屋200軒が焼失した。それ以来、商人たちは売り場を変えて、オンライン橋市場は徐々に姿を消していった。現在、オンライン橋市場は1区グエンタイホック通り(đường Nguyễn Thái Học)に存在するが、その規模はとても小さい。 女神の市場:バーチエウ市場(Chợ Bà Chiểu)  タン将軍の妻とされる女性たちが管理していた市場の中で、バーチエウ市場は最も長い歴史を持つ市場の1つだ。初めは小さな市場だったが、1942年、ビンタイン区の中心地で面積8500m2に拡張され、1987年に補修が行われた。現在、市場では約800店舗が40種類の商品を取り扱っている。  作家ソン・ナム(Sơn Nam)によると、バーチエウとは土地の名前で、トゥドゥック帝の時代にその名が使われ始めたという。「チエウ」の意味は、「自然の池」。つまりバーチエウとは「自然の池で崇拝されている女神」を意味する。 ビンロウジとキンマの葉の市場:バーディエム市場(Chợ Bà Điểm)  2番目に有名なバーディエム市場は、ビンロウ畑が多いことで知られるホックモン郡バーディエム村に位置している。学者チュオン・ビン・キーによると、バーディエム市場は多くの商品を取り扱っているが、最も有名なのはこの地域で栽培されたビンロウジとキンマの葉(ベトナムの結納品の1つ)だった。

現在のボータインチャン市場:バークエオ市場(Chợ Bà Quẹo)  5つの市場の中で、タンビン区チュオンチン通り(đường Trường Chinh)に位置するバークエオ市場は、1978年にボータインチャン市場(Chợ Võ Thành Trang)に名前を変えた。それにも関わらず、多くの人は今もまだバークエオと旧称で呼んでいる。ここはもともとクチ郡やホックモン郡、メコンデルタ地方ロンアン省などからの農産物を売買するための市場だった。 5人の女性は本当に将軍の妻か  しかしながら、学者ブオン・ホン・セン(Vương Hồng Sển)は、著書「かつてのサイゴン(Sài Gòn năm xưa)」の中で、タン将軍とバーチエウ、バーディエム、バーホム、バーハット、バークエオの5人が夫婦だったという説には慎重になるべきだと述べている。  同氏によると、バーハット、バーディエム、バーチエウはそれぞれの市場で最初に商売を始めた人物の名前であり、それにちなんで市場の名前がつけられたという。バーホア市場も同様に、ホアという名前の女性が市場を建設するために土地を進呈し、最初に商売を始めたことから、この市場にホアの名をつけたと言われている。  バーホムについては、「バウホム(Bàu Hom)」が訛ったものではないかという。また、バークエオも同様に、「ボークエオ(Bờ Quẹo)」または「バウクエオ(Bàu Quẹo)」に由来しているとされている。なぜならこの地域には、特徴的なクエオ(quẹo=曲がり角)の道があるからだ。  このほかにも、市内には、オントー(Ông Tố)、オンボン(Ông Bổn)、バーライ(Bà Lài)、バータン(Bà Tàng)、バーチエム(Bà Chiêm)など、多くの人名がついた土地が存在しており、人々に親しまれている。 

[Son Hoa, VNExpress, 27/9/2015 | 02:00 GMT+7, A]
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