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[特集]

映画「サイゴンボディガード」落合賢監督インタビュー【後編】

2016/04/17 05:00 JST更新

(C) VIETJO
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(C) Saigon Bodyguards
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 日本人監督によるベトナム映画「サイゴンボディガード(Saigon Bodyguards)」。日本人として初めて、ベトナム出資、オールベトナム人キャストのベトナム語映画のメガホンを取った落合賢(おちあい・けん)監督にベトジョー編集部が話を聞いた。

前編 → 映画「サイゴンボディガード」落合賢監督インタビュー【前編】

【ベトナム映画について】

―――これまでにも、観る側としてベトナム映画をご覧になる機会はありましたか?ベトナム映画の印象はいかがですか。

2015年12月にベトナムへ来てから劇場では5本くらい観ました。韓国映画「怪しい彼女」のリメイク(「Em la ba noi cua anh(英題:I’m your grandmother)」)などですね。

今までに観たのは、トラン・アン・ユン(チャン・アイン・フン=Tran Anh Hung)監督の映画です。ただ、ユン監督もベトナムというよりはヨーロッパで有名な監督ですので、純粋なベトナムの商業映画を見たのはこちらに来てからが初めてです。

僕は国によって映画の文法が違うと思うんですね。例えば英語で「I LOVE YOU」なら主語+動詞+目的語ですが、日本語は逆。そういう文法的なルールが米国と日本の映画でも違いますし、ベトナムの映画でも違うんじゃないかな。

特にベトナムの映画はどちらかというとストレートな表現が主流で、それが観客に受ける。逆に米国や日本では、なるべく伏線を張って言葉の裏を取るといった形の方が好まれているような気がします。

―――今後、ベトナム映画界はどのように変わっていくと思われますか。

個人的な意見ですが、ベトナムにはハングリー精神みたいなものが日本や米国の映画関係者よりも強い部分があるのではないかと思います。「もっと良いものを作ろう」という気概が感じられますね。これからどんどん伸びていく業界ではないかと思います。

それから、映画が観客に与える影響は、日本のようにエンターテインメントが多種多様だとまた違ってくるのでしょうが、ベトナムのようにエンターテインメントがまだ発展していない国では一番大きなメディアの1つだと思います。今後、映画がベトナムにもたらす影響はますます大きくなっていくのではないかと思います。

そういう意味では、日本は飽和状態ですし、米国も基本的には飽和状態ですね。ただ、残念なのは、ベトナムで日本映画のコンテンツを配給しようという雰囲気があまりないこと。これから日本の文化やコンテンツをもっとベトナムに持ってこられるようになって欲しいですね。

【監督について】

―――ホーチミンの街や人の雰囲気、住み心地など、ベトナムの印象はいかがですか。

「サイゴンボディガード」の話をいただいた2015年4月から4~5回ベトナムに来ていたのですが、12月から本格的に住み始めました。気候も好きですし、この時期(インタビュー時は3月)は雨が降らず、ロサンゼルスの気候と似ています。ご飯もおいしいですし、ベトナム人の人柄も良いので、馴染んでいますね。

ただ、撮影以外の空いた時間があまりなくて、2月に撮影に入る前のロケハンが観光の代わりという感じでした。でも、普通の観光では行けないようなところにも行けたので良かったです。

あと、ベトナム語の家庭教師をつけて、週3回2時間を2か月頑張ったのですが、2か月では身に付きませんでした。



―――今後、もし再びオファーがあればベトナム映画でメガホンを取りたいですか。

ぜひやらせて頂きたいです。もちろん「サイゴンボディガード」の成功次第ではあるのですが、続編の話も出ています。今はロサンゼルスが拠点で、日本で仕事がある時は日本に行くという形なのですが、今後ベトナムで仕事があればベトナムとロサンゼルスを行ったり来たりする、そういう風になっていきたいです。

―――今後の展望と、新たに挑戦していきたいことを教えてください。

監督としては、米国で長編映画をつくるというのが僕が目指していたゴールの1つなので、近い将来に米国で作品を作りたいなと思っています。ただ、アジアを中心に活動していくというのも続けていきたいので、ベトナム、タイ、台湾、韓国などで活動できるようになればいいなと思います。

僕の作品に共通するテーマは、自分探しの旅やアイデンティティなんです。やはり日本で生まれ育って、米国で20代を過ごしたということもあって、日本では日本人扱いされない一方で、米国では日本人扱いされる。そういうバックグラウンドもあって、「居場所を探す」というテーマが根底にある気がしますね。

居場所というのは、実際の場所というよりは心の拠り所や人だったり物だったり仕事だったりするんですが、自分の心の拠り所、つまり自分の居場所を主人公が探していくというテーマの作品に惹かれるので、今後もそういった作品を作っていけたらと思います。

―――ベトジョーの読者に向けて、『サイゴンボディガード』の見所と、一言コメントをお願いします。

この作品は「相棒」の話で、2人のボディガードが七転八倒しながら与えられた仕事をこなしていく、つまりクライアントを守っていくんですが、そんな中で、1人じゃできないことを2人で成し遂げる。お互い寄り添って2人の絆を築き上げていくという話が主軸にある中で、いろんなアクションやコメディーや恋愛が入ってきます。

でもやはり、見所はアクションとコメディーの部分なので、タイ・ホアさんのコメディーの部分とキム・リーさんのアクションを観てもらいたいですね。恋愛にはチー・プーさんも入ってきますし、キャストもすごく魅力的な人たちが揃っています。

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落合賢監督プロフィール

落合賢(おちあい・けん)

1983年生まれ。東京都出身。高校卒業後に渡米し、南カリフォルニア大学で映画製作を学んだ。大学卒業後は、アメリカ映画協会付属大学院(AFI)映画監督科で修士号を取得。

短編と長編合わせて30本以上の作品を国内外で監督し、ショートショートフィルムフェスティバルで東京都知事賞(「ハーフケニス」2009年)及び国土交通大臣賞(「井の中の蛙」2010年)、ローマ国際映画祭最優秀国際短編映画賞(「ハーフケニス」2009年)など数々の賞を受賞。2013年には、ウエンツ瑛士主演の「タイガーマスク」が公開。2014年公開の「太秦ライムライト」は、米国など世界中で広く上映され、大きな注目を集めた。 

[2016年4月17日 ベトジョーニュース A]
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