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[特集]

70年前にダラットの農産物を初めてサイゴンに持ち込んだ女性

2017/02/05 05:51 JST更新

(C) vnexpress, Khanh Huong, ヘットさん
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(C) vnexpress, NVCC, 70年前のヘットさん
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 南中部高原地方ラムドン省ダラット市在住のグエン・ティ・ヘットさん(女性・87歳)は、今から約70年前にダラット産の野菜や花をトラックに載せて初めてサイゴン(現在のホーチミン市)へ持ち込んだ1人だ。  ヘットさんは現在のハノイ市タイホー区クアンバー村の出身で、17歳だった1947年に仕事のためダラットのハドン村落に移った。ハドン村落は、ダラットで初めての野菜と花の生産に特化した村落だ。ハドン省(現在のハノイ市)出身の人々が移り住んで野菜や花を育てるために開墾した地で、1930年代から80年近くもの歴史を有している。  当時は庭も土地もなかったため、ヘットさんはハドン村落で親戚らが育てた野菜と花をダラット市場に持って行き、売ることを思いついた。その後、ヘットさんは新たな市場を求めてサイゴンにも足を運ぶようになった。  商売でのつながりができると、ヘットさんは資金を借りて、親戚の女性と一緒にトラックを購入し、ハドン村落で育てた商品を初めてサイゴンに出荷した。最初は4tトラックを使って、キャベツを運び、後にカリフラワーやタマネギ、ニンニク、そして花も運ぶようになった。  毎朝、村落の人々が道の両側に並べた野菜や花をヘットさんのトラックが集めて回る。「午後になるとトラックはサイゴンへ向けて出発して、夜はラムドン省のバオロックで休んでいました。翌朝早くにまた出発して午後までにサイゴンへ着きます。当時は道も悪かった上、一方通行で更に戦争中だったので今のように早く走ることもできず、移動には丸1日かかっていました」とヘットさんは話す。  ヘットさんは、現在のホーチミン市1区カウオンライン街区にあたるカウムオイ市場の各商店に野菜などを卸し、残りの花は1区ベンタイン市場の各商店に売っていた。「当時ダラットは気候も良く土も肥沃で、キャベツ1玉7~8kgにも成長するので高く売れました。でも時には野菜や花を売っても数十VNDにしかならないこともあり、商売は細々としたものでした」。

 ヘットさんによると、たくさん売れた日は帰って売り上げ分を親戚に分けていたという。「逆に大きくマイナスになったときは、親戚が赤字分を一緒に負担してくれていましたので、夫と子供を養うには多少の余裕がありました」とヘットさん。  その後、ヘットさんはトラックをもう1台購入し、運転手も雇った。トラックは、毎週月・水・金曜日はダラットから野菜と花をサイゴンへ運び、火・木・土曜日はサイゴンから米や果物、苗木、肥料などをダラットへ運んでいた。  1950年代になると、ダラットでは同地産の農産物をサイゴンへ運ぶための数十台のトラックが活動するようになった。サイゴンで野菜や花の需要が高まっていた時期だったこともあり、商品の流通が最も盛んで、いくら運んでも足りないほどだった。  「親戚たちが育てた野菜と花を鉄道に載せて、ハノイで売ることもありました。商品だけ先に運んでおいて、数日後に私が飛行機でハノイまで行って、市内の各市場に卸してからダラットに帰るんです。特にダラットの野菜や花は人気が高く、需要も多かったです。でも、あまりにも往来が大変だったので、10回ほどで辞めてしまいました」とヘットさんは語る。  商売も繁盛していた1957年、ヘットさんは自ら商品を運ぶことを辞めた。商品は乗り合いバスに載せることにし、徐々に商売も縮小していった。「多くの人からどうして商売を拡大しないのかと聞かれましたが、私はお金持ちになりたいといった夢があったわけでもなく、ただ家族の面倒を見ることだけを望んでいたんです」。  ハノイ市を出てダラットに移り、農産物の商売に明け暮れたヘットさんは今、90歳を目前にしている。同世代の人々の多くは、既に旅立ってしまった。ダラット産の野菜や花が現在のように1つのブランドとして認識されるための基盤を作ったのは、まさにヘットさんのような先駆者たちのおかげだと言えるだろう。 

[Khanh Huong, VnExpress, 29/1/2017 | 08:52 GMT+7, A]
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