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[特集]

シクロの黄金期から衰退期まで、今も新車を造り続ける男性

2017/10/08 04:29 JST更新

(C)Vietnamnet
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 「あの頃は繁盛していましたよ。シクロ造りで家が建ったって人だっていたし。運転手たちは2人で昼と夜とで1台のシクロを走らせたもんです。私たち修理工もその恩恵にあずかりました」と語るのは、ホーチミン市5区でシクロ修理・製造業を営むホー・タン・ファットさん(男性・62歳)だ。

 ホーチミン市内ではシクロを見かけることも少なくなったが、ファットさんは60歳を超えた現在もシクロ修理を続け、その傍らで新車を製造し海外へ輸出もしている。ファットさんの店はこじんまりとしていて、修理道具や部品が入った棚があるくらいだ。その店先には組み立てられたばかりの新車のシクロが2台置かれている。国内では新車の需要がほとんどなく、この2台も輸出するのだという。

 「1975年以降のホーチミン市では、庶民の交通手段といえばシクロか三輪の乗合バスくらいでした。乗合バスは路線が決まっていましたから、何処へでも自由に行けるシクロは人々に好まれていつだってお客さんがいましたよ」と1台のシクロからタイヤを外し、修理に取り掛かりながらファットさんはシクロの黄金期を思い出す。

 シクロが庶民の主な交通手段だった頃は修理工たちも大忙しで、自転車修理を営んでいたファットさんもシクロ修理に転向した。グエンティニョー通りやグエンチャイ通り、チャンクアンカイ通りなどは瞬く間にシクロ修理店が軒を並べるようになり、それでも人手が足りないほどだったという。

 最盛期からファットさんは修理のほかにも新車を製造・販売するようになった。ファットさんは資材の曲げ加工から溶接、組立てと全工程を自分でこなす。当時の販売価格は品質によってゴールド0.1テール(3.75g)~1テール(37.5g)、購入後のナンバープレート登録手数料などが0.3テール(11.25g)かかり、シクロ1台を購入して開業するには4000万VND(約20万円)かかったことになる。それでも造るそばから売れていったそうだ。

 ところが2008年になると、ホーチミン市は市内を走るシクロの台数を制限する条例を施行した。シクロを街区当局へ持ち込み運転手を廃業する人には、転職資金として500万VND(約2万5000円)が支給された。「シクロ修理をする人も減ってしまい、今では私ぐらいなものでしょう」と言うと、ファットさんは遠くを見つめしばらくの間黙った。

 ファットさんの店は貸店舗で1日20万VND(約1000円)の賃料がかかるため、毎日それ以上の売上を出さなければならない。現在は修理の需要も減ってきているため、輸出向けのシクロ製造でなんとかもっているのだという。

 「このシクロももうすぐ輸出するんです。1300万VND(約6万5000円)で在米のベトナム人が買いました。これから解体して梱包するところです」とファットさん。最近では新車の発注は主に国内外のカフェやレストランからで、店内でオブジェとして展示されるそうだ。

 シクロは1939年にフランス人が発明したとされており、統計資料によると同年にはサイゴン(現在のホーチミン市)にシクロが40台存在し、翌1940年には200台に急増したという。 

[Tran Chanh Nghia, Vietnamnet, 08/09/2017 04:00 GMT+7, T]
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