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[特集]

新型コロナで路線バス運休、仕事もお金もなく…車内で生活する運転手たち

2021/10/24 10:40 JST更新

(C) thanhnien
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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う社会的隔離措置により、ホーチミン市内の路線バスの運行が停止されてから4か月余りの間、多くの運転手や車掌は仕事もお金もなく、故郷に帰ることも家賃を支払うこともできず、バスの車内で生活し、運行再開の日を待ちわびている。

 ベトナム国家大学ホーチミン市校のバスターミナルは、以前のように次々とバスが行き交い、乗客が車内にぎゅうぎゅうに乗り込む賑やかな様子はなく、バスは休眠状態で寂しい光景が広がっている。

 バスターミナルには多くの運転手や車掌がいて、長らく運行がないにもかかわらず、ほとんどが制服を着ている。理由をたずねると、運行していたころは1日中働いてバスと自宅の間を往復するだけで、買い物に行くこともほとんどなく、手持ちの私服がないためだという。

 故郷に帰るにも検査などの費用がかかり、隔離も受けなければならない上、第3波までのように1~2か月も我慢すれば元の生活に戻れるだろうと考えていた多くの運転手や車掌は、ホーチミン市に残ることを選んだ。しかし、今回の第4波は思いのほか長引き、路線バスの運行が停止された6月20日からバスターミナルで立ち往生している。

 ハノイ市出身のマイ・タイ・クオンさん(男性・52歳)は、ハノイ市に妻と幼い2人の子供がいる。故郷では経済的に厳しく、2年前からクオンさんがホーチミン市に出稼ぎに行って路線バスの車掌をしているが、いまだに会社と正式な労働契約は結んでいない。以前は部屋を借りていたが、第4波が広がってからは支払いが難しくなり、部屋を引き払い、バスの車内に泊まらせてもらっている。

 6月19日の夜、ホーチミン市当局は市内の全ての路線バスの運行を一時停止することを決定した。そして翌20日、53番バスが最後の運行を終えてベトナム国家大学ホーチミン市校のバスターミナルに到着して以来、クオンさんはここで生活している。

 バスの車内には水も電気もない。雨水を集めてペットボトルに入れて保管し、水浴びや洗濯、料理など生活用として使っている。

 「正直なところ、3日に1回しか水を浴びられないこともあります。最初のころは車両の清掃もしていましたが、第4波があまりにも長引いているので今はもうしていません。新型コロナが収束したら、インスタントラーメンと卵はもう絶対に食べないでしょうね。首相指示第16号の適用中は1日2食、インスタントラーメンと卵しか食べていなかったので」とクオンさんは笑う。

 1人暮らしのクオンさんの持ち物は少なく、車内にはインスタントラーメンを調理するためのカセットコンロ、水を入れるバケツ、蚊よけスプレー、寝る時に敷くシートがあるくらいだ。水浴びや皿洗いはバスのステップで行っている。

 電気がないため車内は閉塞感がある。日中、クオンさんと同僚たちはバスターミナルの近くにある公園に行ってお茶をいれて座り、雨が降り出すとバスに戻る。夜になると車内はとても暑くなるが、蚊が入ってこないように窓を閉め切って寝ている。

 車内にある唯一の電化製品といえば携帯電話だけで、充電が切れればバスターミナル内の宿舎に住んでいる同僚の部屋に行って充電させてもらうしかない。夜の唯一の明かりは携帯電話のライトだけで、電池が切れた夜には早く寝て、電池があれば朝まで起きていることもある。

 一家の大黒柱であるクオンさんは、故郷にいる家族の話になると涙を流した。「家族も大変な状況の中、家族と一緒にいることもできず、仕送りもできません。でも、家族に心配をかけないよう、歯を食いしばって笑顔を作り、自分は元気だと言わなければならないんです」と打ち明けた。

 運転手のファン・バン・ホアンさん(男性・48歳)と、同じバスの車掌である妻もまた、家賃が支払えず、協同組合に頼んで53番バスの車内で生活させてもらっている。夫婦はこの仕事をして10年余りになる。ホアンさんはわずかな貯金を切り崩して大きなガスコンロを購入し、車内に電気を引いて扇風機や電球などを使っている。

 「住まわせてもらう分、車両もきれいにしておかなければなりません。以前はカセットコンロを使っていたのですが、ガスボンベは1本1万VND(約50円)で、たくさん調理するので2日で5本も消費しました。そこで、大きなガスコンロを購入してコストを削減することにしたんです。でも、ガスは高いので、冷え込む夜でも水浴び用にお湯を沸かすことはありません」と語る。

 先のクオンさんと同様、ホアンさんも生活用の水は雨水を集めて使い、飲料水はバスターミナルでバケツ1杯2000VND(約10円)で購入している。

 ホアンさんは蚊が寄ってこないようにごみを片付け、清潔に保ち、バスを「生活に適応するための下宿先」のように思っている。座って温かいお茶を注いだホアンさんは、これまでの人生でも多くの困難を経験してきたが、こんなにも悲劇的な状況に直面したのは初めてだと長いため息をついた。

 食べるものが足りず、他のバスで生活している人の中には自分で野菜を育てる人もいる。8番バスの運転手で、バスターミナル内の宿舎に住んでいるハイさん(男性)は、野菜を採ってからバスターミナルの奥に停車している10番バスに乗り込んだ。

 ハイさんによると、この10番バスに住んでいるのは知人の車掌だという。10番バスは他のバスに比べて狭く、車内も暑いため、住人は普段は宿舎で過ごし、食事や就寝のときだけバスに戻っている。

 一時的な生活ではあるものの、路線バスの運転手や車掌は皆、何とか生き延びているという状況だ。境遇は人それぞれだが、共通の願いは新型コロナが収束し、路線バスの運行が再開され、仕事に行き、自分と家族の生活を支える収入を得られるようになることだ。

 ベトナム国家大学ホーチミン市校のバスターミナルを管理しているグエン・ビン・トゥン氏によると、現在バスターミナルには約80台のバスが停車しており、約50人の運転手や車掌が生活している。ほとんどはバスターミナル内の宿舎に住んでいるが、一部は経済的な事情で部屋を引き払い、バスの車内で生活している。

 トゥン氏によると、協同組合は運転手や車掌に1人につき100万VND(約5000円)を支給しているが、国の支援による給付金については対象が定められているため、受け取れる人と受け取れない人がいるのが現状だという。 

[Thanh Nien 13:40 22/10/2021, A]
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