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[特集]

新型コロナで彼女の故郷に足止め、そのまま結婚したサイゴンの男性とモン族の女性

2021/10/31 10:19 JST更新

(C) vnexpress
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 4月30日の南部解放記念日に伴う連休に合わせて、西北部地方ライチャウ省に暮らす恋人のもとを訪れたホーチミン市出身のグエン・タイン・ゴックさん(1996年生まれ)は、同時期に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第4波が発生した影響でホーチミン市に戻ることができなくなり、そのままシンスオイホー村に留まって事業を起こし、恋人と結婚した。

 シンスオイホー村はラン科の植物であるシンビジウムの花の産地として、またライチャウ省フォントー郡のコミュニティツーリズムのモデル地として有名な場所だ。そして最近では、ホーチミン市出身のキン族の男性と地元出身のモン族の女性のラブストーリーでも知られるようになった。

 シンスオイホー村の村長であるバン・アー・チンさんによると、花嫁のハン・ティ・スーさん(1994年生まれ)はキン族のベトナム語と英語に精通し、地域の観光産業の発展に貢献している、村を代表する若者だという。スーさんは、観光客のホームステイの受け入れを行い、さらに自身でカフェも経営している。

 村を訪れる多くの観光客にとって、エネルギッシュなモン族の女性はとても印象的だ。新郎のゴックさんの姉であるグエン・ティ・ニューさんもまた、2019年に村を旅行で訪れた際にスーさんが子供たちにプレゼントを配っている姿を目にして、彼女のことが印象に残ったという。

 「スーちゃんはかわいらしくて、弟と縁があればよいなと願っていました。もし2人が夫婦になったら、2人は村がより豊かで美しくなるよう、力を合わせて貢献するだろうと思ったんです」と、ホーチミン市に住むニューさんは教えてくれた。

 当時、南部メコンデルタ地方キエンザン省フーコック島の5つ星ホテルでシェフ兼カメラマンとして働いていたゴックさんは、姉のニューさんからスーさんの携帯電話番号を受け取り、スーさんにメッセージを送った。共に若く、旅行と写真が好きな独身の2人が打ち解けるのに時間はかからなかった。「スーの英語力と、彼女が村の観光促進のために行っている様々な仕事にとても感銘を受けました」とゴックさんは語る。

 知り合ってから、ゴックさんは自分で調理した料理やフーコック島の美しい風景の写真を度々スーさんに送った。一方、スーさんはモン族の人々が日常生活で使う農具を吊るした美しい門、「ハートの滝」と呼ばれる村の景勝地への道中にある鳥の巣、自身のカフェに通じる橋などの写真を送った。

 時が経ち、2人はお互いのメッセージを楽しみに待つようになっていた。そして互いに自分のところへ遊びに来るように誘っていたが、2人とも仕事が忙しく、なかなか実現には至らなかった。

 2020年末、ゴックさんは出張で東北部地方ハザン省に行くことになり、その機会を利用してスーさんの村を訪ねた。初めて西北部地方の山岳地帯を訪れたゴックさんは道がわからず、3回も車を乗り継ぎ、朝の8時から夜の9時まで走り回ってようやくライチャウ市に到着した。

 その日、スーさんは早い時間から市内に出ていたが、1日中ゴックさんを待ち続けることになった。そして、肌寒い年末の夜、知り合ってから1年越しでようやく2人は初めての対面を果たした。実際にスーさんに会ったゴックさんは、写真で見るよりも美しく魅力的だと感じた。スーさんもまた、ゴックさんのスマートな容姿に惹かれた。

 夕食を食べた後、2人は約30km離れたところにあるスーさんの村へと向かった。真っ暗な中、でこぼこやカーブが点在する山道を初めてバイクで走ったゴックさんは、ゆっくりと慎重にバイクを走らせ、23時ごろにようやく村に到着した。

 翌朝早く、鼻から入ってくる冷たい空気を感じてゴックさんは目を覚ました。窓の結露は徐々に消えていき、民族衣装を着た老若男女がコンクリートの道を行き来しているのが見えた。ゴックさんはスーさんの案内で朝食を食べに行き、目にするものすべてが驚きの連続だった。

 村の道はとてもきれいで、「ごみはこちらにお願いします」と書かれた、竹で作られたごみ箱が一定間隔で置かれていた。村の人々は笑顔でゴックさんにモン族の言葉で話しかけたが、スーさんは恥ずかしがってあえて通訳しないこともあった。

 「スーから、10年前は村人の95%が何かしらの中毒だったと聞いて驚きました。しかし現在、村は『Noアヘン、Noタバコ、Noアルコール、Noギャンブル、Noポイ捨て』の5か条を守っています」とゴックさんは教えてくれた。

 当初は村に3泊して帰る予定だったが、スーさんへの想いと村への愛着から、ゴックさんは2泊延長して村に留まることにした。ゴックさんが村を去る前日の夜、2人はスーさんのカフェの軒先に座って話をした。そしてこのとき、ゴックさんは勇気を出してスーさんに告白した。

 2人は2年後に結婚式を挙げることを目標に、仕事に努力し、資金を貯めるという計画を立てた。ゴックさんはフーコック島での仕事を辞め、将来の仕事に役立つようホーチミン市に戻って英語を勉強した。そして2021年4月30日の祝日、再びスーさんを訪ねてライチャウ省に向かった。

 もともとは数日で帰る予定だったが、新型コロナの影響で移動が制限され、ゴックさんはホーチミン市に戻ることができなくなってしまった。ゴックさんはそのまま村に留まってスーさんの家族や村人と一緒に働きながら、すぐに村の生活に適応した。

 今まで鋤や鍬も持ったことがなかったゴックさんだが、田んぼを耕して稲を植え、森に行って薪を拾い、薬草を摘み、時には村の青年たちと一緒に家も建てるようになった。そして昼には村人と一緒におこわや握り飯を食べた。

 料理ができるゴックさんは、スーさんの家族が運営しているホームステイのゲストに提供する食事を任された。小さいリンゴ(タオメオ=Tao meo)やプラム、桃などの果物を選別してシロップやドライフルーツを作り、地域の特産品として宣伝し、時にはケーキを作って市場で販売した。

 創意工夫を凝らすゴックさんの姿を目にして、スーさんの父親のハン・アー・サーさんは「彼は優しくて適応力も高く、何でもできる」とたびたび褒め称えた。

 ゴックさんはまた、村の観光をより良くするため、写真や動画の撮影技術をスーさんや村人たちに教えた。今年8月、ゴックさんとスーさんは何人かの村人と協力して「麻薬にNoと言おう」という麻薬撲滅のための動画を撮影した。動画ではシンスオイホー村に麻薬が蔓延し、貧しかったころを再現し、ライチャウ省の青年社会文化問題コンテストで第2位を受賞した。

 「動画を撮影した後、この土地とスーへの愛はより強くなり、私たちは両親に結婚の許しを乞うことを決意したんです」とゴックさんは語る。

 両家の支持を得て、2人は夢だった結婚式の準備に取り掛かり、今年9月25日に式を挙げた。この地域の結婚式の慣習である教会での儀式の代わりに、2人は花で飾った門とバラの花を敷き詰めたじゅうたんを作り、屋外で挙式を行った。

 友人たちが写真撮影を手伝い、豚や鶏を準備して披露宴を開いた。村人たちにとって、このような斬新なスタイルの結婚式に参加するのは初めてのことだった。2人の結婚式の写真は様々な観光サイトで紹介され、たくさんの人から「今年一番美しい山岳地帯での結婚式」と呼ばれている。

 新型コロナが収束したら、2人は両家の両親を招いて改めて披露宴を行う予定だという。現在は地域の観光業の発展に貢献できるよう、様々な新事業に向けた計画を立てている。 

[VnExpress 05:05 06/10/2021, A]
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