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[特集]

客も驚き、12歳のカリスマ美容師 父の背中を追って

2022/07/03 10:16 JST更新

(C) thanhnien
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 11歳のとき、「コアイタイ(「ポテト」の意)」のあだ名もあるファム・トン・ゴック・タイン・ビーさんは、ホーチミン市5区グエンビエウ(Nguyen Bieu)通りにある父親の美容室のメインスタイリストになった。

 多くの客は、満足のいく髪型にしてくれた担当の美容師がまだ少女であることを知ると、大きな衝撃を受ける。最近、この幼いカリスマ美容師の話がSNSで瞬く間に広まり、多くの人々が彼女の才能と努力に驚き、感服し、彼女を応援するために店を訪れている。

 客でにぎわう店内で、ビーさんは父親のファム・タイン・トゥンさん(56歳)と一緒に忙しく働いている。

 東南部地方ビンズオン省在住のファム・ティ・トゥエンさん(27歳)がタクシーを降りて店に入ると、ビーさんはトゥエンさんを温かく迎えた。ビーさんはトゥエンさんにオーダーをたずね、希望に合ったヘアスタイルを選ぶためにカウンセリングを始めた。

 「2cmくらいカットして、ストレートにしてね!」トゥエンさんが言うと、ビーさんは早速作業に取りかかった。

 「たまたまネットで彼女のことを知り、とても感銘を受けたので来てみました。私の髪を整えてくれているこの子がまだ12歳だなんて信じられません。プロっぽいし、信頼できます」とトゥエンさんは笑って言った。

 すると、隣で髪を染めていた別の女性客がトゥエンさんの話を聞いて驚き聞き返した。「え?まだ12歳なの?」その女性客はこの店に2回来たことがあるが、まさか自分を担当してくれた美容師が幼い少女だとは知る由もなかった。

 「ちょっとどころじゃなく本当に衝撃!彼女は仕事もプロだし、話し方も大人っぽいのでもっと年上だと思っていました。信じられない!」と女性客は続けた。

 ヘアスタイルが完成すると、トゥエンさんは満足して微笑んだ。トゥエンさんはビーさんにお礼を言うと、再びタクシーに乗り込んでビンズオン省に戻っていった。店を去る前にトゥエンさんは、またホーチミン市に来る機会があれば店に寄るつもりだと話した。トゥエンさんによると、ビーさんの腕は「最高」だという。

 こうして、多くの客が代わる代わるこの美容室に出入りしている。しかし、ビーさんが父親からこの仕事を学び始めたのは2021年5月で、まだ1年しか経っていないということを誰もが知っているわけではない。ビーさんはわずか3か月であらゆるスキルを身につけ、美容室のメインスタイリストになったのだ。

 「当時、ホーチミン市は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で社会的隔離措置が適用され始めたころで、娘に何もせず不健康に過ごして欲しくなかったので、仕事を教えることにしたんです。幸い、娘もこの仕事を気に入って夢中になってくれたので、あっという間に吸収していきました。3か月間毎日、1日4時間、私から仕事を学んでいました」とトゥンさんは語る。

 社会的隔離措置が終了すると、ビーさんにいよいよ実地で仕事をする機会がやってきた。トゥンさんは、3か月間で学んだことすべてを活かして完璧に仕事をこなしている娘の姿を目にして大いに喜んだ。ビーさんは、カット、パーマ、縮毛矯正、カラー、スタイリングまで、あらゆる技術をマスターし、男性客にも女性客にも対応できた。

 トゥンさんはビーさんの技術について「10点満点中10点」と評価するが、ビーさんにまだ足りないものは「経験」だと話す。将来、さらに上の美容師を目指すには、もっと仕事をし、もっと経験を積まなければならない。

 トゥンさん自身は2000年に南部メコンデルタ地方ビンロン省からホーチミン市に来て、理髪を学び始めた。そしてわずか1年後に美容師として働き始めた。キャリアのピークは2007年から2011年にかけて。当時は名の知れたカリスマ美容師で、フーニュアン区ファンディンフン通りの彼の店には近くからも遠くからも多くの客が訪れた。

 「当時は1日に30~50人の髪を整えていました。スタッフは15人いましたが、それでも間に合わないくらい。でもその後、体調を崩して仕事の勢いは衰えてしまいました。少なくとも3回はもう辞めようと思いましたね」とトゥンさん。

 そしてトゥンさんは、グエンビエウ通りに今の店をオープンした。スタッフがメインで仕事をし、自分は次の世代に仕事を継承するという形だ。そんな中で、喜ばしいことに娘が父親の仕事を継ぐことを決めたのだった。

 「小さいころ、お父さんが、テレビにも出るようなたくさんの有名人の髪を整えているのを見ていて、お父さんに憧れ、お父さんのように有名になりたいと思いました。今こうして仕事をするようになってからは、有名になりたいというよりもこの仕事が大好きだと思うようになりました。お客さんが褒めてくれれば嬉しいし、モチベーションにもなります」とビーさんは話す。

 ビーさんは小学校を卒業し、今は仕事に集中するために学業を休んでいる。毎日10人前後の客に対応しているが、単なるスタッフとしてではなく、自分の情熱のため、そして父親の後を継ぐためであり、自分の選択に満足しているという。

 しかしながら、父親のトゥンさんはしばらくしたらビーさんを再び学校に行かせるつもりで、学校でクラスの文化を学びながら仕事をしてほしいと考えている。

 「娘が労働の価値を理解し、私がここまでやってきた仕事に敬意を表してくれていることを嬉しく思っています。それは、私が娘に望んでいたことでもありますから。でも何より、私がここ数年間あまり愛着を持てなくなってしまっていた理髪の仕事に戻るために背中を押してくれて、原動力を与えてくれたのは、娘の情熱だったんですよ」と、トゥンさんは打ち明けた。 

[Thanh Nien 13:08 13/06/2022, A]
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