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[特集]

身長110cm、生まれつき両脚のない先生が教える特別支援学級

2023/02/12 10:16 JST更新

(C) zingnews
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 生まれた時から両脚がなかったファム・ティ・トゥー・トゥイさん(女性・1997年生まれ)は、生後間もなくホーチミン市のツーズー病院に置き去りにされた。それでも、トゥイさんは今も自分を捨てた母親を心から愛しているという。

 「小さい時、よく友達から父親も母親もいないことでからかわれ、どうして母は私を生んだのかと自問していました。大きくなってからは、きっと母は何かしらの困難を抱えていて、私を育てられない事情があったんだと考えるようになりました。何にせよ、私は今でも母のことを心から愛しています」とトゥイさんは語る。

 トゥイさんは今、自閉症の子供たちの教員としてホーチミン市ビンタイン区にあるアンニエン教育心理学応用センターで働いている。膝から下がないトゥイさんにとって、毎日膝頭を使って歩くのはかなり大変で、1歩1歩の歩みもゆっくりだが、それでも自信に満ち溢れ、楽しそうに生き、ポジティブなエネルギーをまとっているトゥイさんに、多くの人が尊敬の念を抱いている。

 「生まれてすぐ、私はツーズー病院に捨てられました。幸いなことに、トゥードゥック市にあるタムビン児童養護センターが私を引き取り、育ててくれました。12歳の時、障がい者の生活施設であるツーズー病院平和村の一員になりました」とトゥイさん。

 トゥイさんは平和村で暮らす中で、どうして自分は捨てられ、障がいを持っているんだろうと自問することはあったものの、心の奥底では自分を嫌いになることはなく、自分は特別なんだと感じていたという。「私は日頃から特別な子供たちと接することが多いですが、彼らにとって私の見た目は親しみやすく、共感もしやすいんです」と、身長110cmのトゥイさんは話す。

 2022年7月、トゥイさんはホーチミン市師範大学の特殊教育学科を卒業し、自閉症の子供たちのサポートをしながら自身も生計を立てることができるという、アンニエン教育心理学応用センターでの有意義な仕事に就くことができた。「誰の人生にも真っ黒な面とバラ色の面があります。大事なのは、それを自分自身がどう受け止めるかなんです」とトゥイさんは明るく言う。

 トゥイさんはホーチミン市師範大学の手話クラブの部長も務めており、手話通訳に参加したり、聴覚障がい者の施設で手話を広めたりという活動もしている。また、恵まれない人々のためのフォーラムやテレビ番組、メディアなどを通じて、生きる力や人生の逆境に立ち向かう精神を伝えている。

 「もし教員になっていなかったら、きっと手話の通訳者になっていたと思います。どちらにせよ、特別な子供たちに関わる仕事であることには変わりないでしょう」とトゥイさん。トゥイさんはフェイスブック(Facebook)ページの自己紹介欄にこう記している。「美しさは、自分らしくいると決めた瞬間に生まれる。お母さん、大好き」。

 トゥイさんが小さかった時は、自身の身体についてまだよく認識していなかった。成長し、物事をより深く考えるようになると、障がい者であれ健常者であれ、誰だって人生で色々な困難に直面するものだということに気づいた。

 もちろん、トゥイさんも他人の視線に怯えた時期がある。だからこそ、自分自身の価値に気づいてからは、自分と同じように障がいを持つ子供たちに自信と知識を与えるには、教師になるしかないと考えるようになった。

 「当時、私は自分自身にとって、そして特別な状況にある子供たちにとって、何か役に立つことをしなければと思っていました。ただ知識を教えるだけでなく、子供たちが自信を持って、障がいと共に自分らしく全力で生きていく手助けをしたいと思ったんです。彼らの夢を妨げるものなど何もありませんから」とトゥイさん。

 トゥイさんによると、自閉症の子供たちに知識を与えることももちろん大事ではあるものの、最も大事なことは自閉症の子供たちを愛する気持ちだという。子供たちにとってできるだけわかりやすく、より効果的に教えることができるよう、トゥイさんは毎日計画を立てることに多くの時間を費やしている。

 毎朝、トゥイさんは授業の1時間前にアンニエン教育心理学応用センターに出勤し、机の周りをきれいに整理整頓する。昼には子供たちの食事を手伝い、昼寝の寝かしつけをして、午後5時に教室を片付けてから平和村の愛する我が家に帰る。

 トゥイさんの楽観的で前向きな人生は、多くの人々にとって貴重な教えとなっている。トゥイさんが三輪バイクに乗ったり、道を歩いたり、職場の階段を上り下りしたりする姿は力強く、強い意志を感じさせるのだ。

 トゥイさんは、日々生きて、息ができる、それだけで素晴らしいという。「私にとって、痛みは原動力であり学びであり、より充実した人生を生きるための基盤なんです。人生が完璧かそうでないかは人それぞれ、自分の運命をどのように見るか、そして自分の人生に信念と感謝の気持ちを持てるかどうかにかかっています」とトゥイさんは語った。 

[Zing 06:10 08/12/2022, A]
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