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[特集]

ホーチミンのペット供養サービス、飼い主の想いに寄り添う

2023/10/08 10:25 JST更新

(C) VnExpress
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 ホーチミン市ホックモン郡在住のフン・フイさん(男性・27歳)は、自身の腕の中で息を引き取ったばかりの愛猫ビムの葬儀を執り行うため、ペット供養サービス業者に泣きながら電話をかけた。

 生後18か月、体重3kgだったビムは、獣医からうつ病と診断されていた。外の土砂降りの雨と雷でパニックになり、3階から転落して死亡したのだ。

 愛猫を亡くしたフイさんは精神的に落ち込み、火葬して遺骨を手元に置いておきたいと考えた。「ビムのことは自分の子供のように思っているので、きちんと供養してやりたいんです」とフイさんは語る。

 45分後、ペット供養サービス業者のスタッフがフイさんの自宅に到着した。スタッフはフイさんにお悔やみの言葉をかけてから、ビムの遺体をリュックに入れて運んでいった。

 スタッフはフイさんに逐一写真を送りながら、ビムの遺体を清め、毛を乾かし、白い布で包んで、黄色い菊の花とろうそくと一緒にトレイの上に載せた。「葬儀」は15分ほど続き、最後にビムは荼毘に付された。

 フイさんが支払ったサービス料金は200万VND(約1万2000円)だ。約6時間後、フイさんはビムの遺骨が入った骨壺を受け取り、壁に吊り下げた木の板の上に、ビムが使っていた食器と一緒に置いた。

 ペット供養サービスがホーチミン市に登場したのは約3年前だが、多くの人に知られるようになったのは2023年に入ってからだ。ペット供養サービスの登場は、多くのベトナム人がペットを飼うようになり、ペットを家族の一員としてとらえ、ペットに名前を付け、ペットと生活を共にするようになったことを鑑みると、必然の流れだったといえる。

 ホーチミン市直轄トゥードゥック市でペット供養サービスを提供するホー・ダック・チュンさん(男性)によると、以前は、飼い主がペットの遺体を処理する際はごみ捨て場に捨てるか、ビンタン区のビンフンホア火葬センターに持ち込むかのいずれかの方法が一般的だった。しかし今日では、ペット供養サービスを利用するという方法が、飼い主の第一選択肢になりつつある。

 チュンさんによると、このサービスの需要は2023年1月から+30%増加しており、利用者の年齢層は25~35歳が多いという。チュンさんの施設では週に35~40体の遺体を受け入れている。サービスには、遺体の引き取り、葬儀(要望があれば)、火葬が含まれ、料金は54万~290万VND(約3300~1万7600円)となっている。

 チュンさんの施設で受け入れるのは、老衰や事故で亡くなった犬や猫が多い。遺体はアルコールで拭き清め、毛を乾かすことで「死装束」の代わりとする。火葬の前には足形を取り、毛や爪の一部を切って、思い出の品として飼い主に渡している。

 通常、ペットの葬儀は15~30分で終わる。名前と命日をボードに記し、ビデオカメラを設置して、飼い主からペットに宛てた手紙があれば読み上げ、安らかな旅立ちを祈って身体を撫で、その様子を撮影する。飼い主は葬儀に立ち会わないことが多く、後から写真や動画で葬儀の様子を見ることができる。

 ホーチミン市ペットサービス訓練学院のチャン・シン学院長は、ペットの供養はペットケア業界における新たな支流だと話す。動物の遺骸を池や湖、運河に捨てる行為は環境や人間の健康に影響を与えかねないが、ペット供養サービスはこの問題を解決することができると同時に、ペットの飼い主の道義心を表すことにもつながる。

 ただし、ペット供養サービス施設は、火葬場の運営方法、また動物の遺骸の処理や環境に関する法規定の順守について検査を受ける必要がある。

 火葬は大型のペットに最も適した方法だとされる。ホーチミン市12区在住のレ・ハーさん(女性・44歳)は、ロットワイラー種で体重35kgの愛犬シャドウが瀕死になったとき、悲しむ一方で困惑した。「シャドウは体重がかなりあり、市内には埋葬する場所もありません。ごみ捨て場に持って行くなんてこともできませんし、そもそも違法ですから」とハーさんは語る。最終的にハーさんは、獣医からペット供養サービスを勧められた。

 シャドウが息を引き取ったのは午前1時ごろだったが、ハーさんはすぐにペット供養サービス業者に電話をかけた。料金は300万VND(約1万8000円)で、ハーさんはその翌日に、シャドウの遺骨とともに、シャドウの毛と爪が入った瓶を受け取った。ハーさんは時折シャドウの葬儀の写真や動画を見返しては、シャドウが最後の瞬間まできちんと世話をしてもらえたということに慰められている。

 ペット供養サービスの利用者は、亡くなったペットを供養するだけでなく、自分自身の心の痛みも和らげたいと思っている。先のチュンさんはかつて、トゥードゥック市で漏電により命を落とした2頭の犬の供養を受け入れたことがある。飼い主の家族は裕福ではなかったが、2頭が家族の命を救ってくれたのだという思いから、きちんと供養したいと、ペット供養サービスを利用することにしたのだった。

 愛するペットを失った飼い主の中には、精神的にショックを受け、ペットの死を受け入れられないという人もいる。そこで、ペット供養サービスには、ペットの供養だけでなく、飼い主の心のケアも含まれている。

 ホーチミン市12区在住のフイン・トゥイさん(女性・29歳)は、1年間ともに暮らした愛猫ミットの供養に150万VND(約9090円)を充てた。それは、自分を慰めるためでもあった。

 ミットが息を引き取った日、ペット供養サービス業者のスタッフは電話口で遺体の引き取り時間を約束し、それから「ミットは使命を果たして安らかに旅立ったんですよ」とトゥイさんを励ましてくれた。トゥイさんは「ミットがもうこの世にいないとしても、ミットの美しい思い出をずっと大切にしていきたいと思います」と語った。 

[VnExpress 13:31 30/09/2023, A]
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