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[コラム]

【第18回】2021年以降に深刻化するベトナムの電力不足:再生可能エネルギー開発が加速【未来を創るベトナムビジネス】

2020/10/17 06:32 JST更新


 これまで当社ONE-VALUEによるベトナム電力市場への分析では、ベトナムの再生可能エネルギー市場の今後の成長性が高く、特に昨年からは太陽光発電の開発が進んできたという見解を述べてきた。また、申請手続きが簡素化される1MW未満の屋根置き型の開発が今年から特に進むと分析している。今回の記事では、ベトナムの再エネ市場について改めて電力市場を俯瞰し、2021年以降の動向について見解を述べていきたいと思う。

2021年以降の電力不足リスクが高まっている

 2020年初頭より、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が世界中の経済活動に大きな影響を及ぼし、エネルギー需要は減少した。しかし、ベトナム国内の電力需要は依然として+7%以上の成長を維持しており、地域によっては+11%以上成長した地域もある。特に、2020年6月の強烈な猛暑は、記録的な電力消費につながった。ベトナム電力グループ(EVN)によれば、2019年における1日の電力消費で最も多い日の数値を超えたとしている。

 一方、電力供給側に目を向けると、水力発電に関する懸念点が指摘されている。近年、国内の水分状況が良好ではなく、水力発電所の運転に悪影響を与えている。EVNのボー・クアン・ラム副社長によると、2020年5月、一部の地域では記録的な大雨にも関わらず、貯水池の水量は全体の30%程度でしかなく、長期間の貯水率の平均を見ても60%でしかないことが指摘されている。そのため、2020年1~5月期における水力発電による総発電量は9480GWhに留まっており、年間計画と比較すると、現時点で3266GWhの不足が生じている。

 ラム副社長は「2020年までEVNは基本的には国内の電力需要を満たすと予測しているが、2021年以降は電力不足のリスクが存在している。特に、南部の電力不足は2025年まで続く可能性が非常に高い。また、貯水率の回復も見込めない」と述べている。

輸入燃料への依存リスク

 こうした電力不足を受けて、ベトナム商工省再生可能エネルギー・電力局のホアン・ティエン・ズン局長は、現在のベトナム国内の電源容量は約5万5000MWであるが、2020年に導入が見込まれる約4300MWの太陽光、約2000MWの風力を含めると、国内での電源容量は約6万MWに達すると述べている。また、同氏によれば、改定第7次国家電力マスタープラン(改定PDP7)に基づいてベトナム国内の電力需要は2025年までに9万MWに達すること予想されている。そのため、2021年から2025年、ベトナムは毎年5000MW程度の新たな電源開発の必要性がある。

 同氏によれば、ベトナムはこれまで発電を目的として石炭の輸入に依存し、これからもガスの輸入に頼らざるを得ない状況が続くだろう。しかし、輸入燃料に依存することは電力不足のリスクを高めることになると分析している。

本格的な再生可能エネルギー開発の始まり

 電力産業界の予測によると、2021年から2025年にかけて、ベトナム国内の電力需要は年率+8.5%~9.5%程度成長が見込まれている。従来のエネルギー源である石炭や水力は既にそのポテンシャルを最大限に活用している現状では、太陽光、風力、液化ガスといった新たなエネルギー源の開発に焦点を当てる必要がある。

 EVNのラム副社長によると、ベトナム政府が推し進めてきたFIT制度などの一連の優遇措置が功を奏し、太陽光発電は5000MW、風力発電については1000MWの導入が進んできた。今後1~2年にかけて、1000MW規模の風力発電が稼働し、ナショナルグリッドへの接続が見込まれている。ただし、これら再生可能エネルギーの開発においては依然として多くの課題が残っていることも指摘されている。

再生可能エネルギー開発の課題:高額な投資コスト

 課題の1つが高額な投資コストの問題である。チュンナムグループ(Trung Nam Group)のグエン・タム・ティエン社長は設備のほとんどは海外から輸入しなければならないため、風力発電の投資コストは非常に大きくなっているのが現状であると述べている。そのため、同氏は政府の優遇政策は拡大すべきであると見解を述べている。

 同じく、ベトナムクリーンエネルギー協会の科学評議会の会長であるグエン・マイン・ヒエン博士は、再生可能エネルギー開発を促進するためには、投資コストの削減を目的とした電力料金、金利に関する更なる優遇政策が必要であると述べている。一方、ベトナム経済研究所所長のブイ・クアン・トゥアン准教授は、ベトナムの経済成長の戦略が拡大から深化の面が問われる中、再生可能エネルギーの開発、特に民間企業や外国企業からの投資を誘致するため、資金を生み出すための多様な政策の導入の必要性を主張している。

投資環境の改善に向けた政府の取り組み

 こうした問題に対し、ホアン・クオック・ブオン商工次官は国家のエネルギー需要を満たすために、今年2020年2月11日付け政治局決議第55号NQ/TW「2030年までのベトナムの国家エネルギー開発戦略、2045年までのビジョン」の実施に焦点を当てるとしている。この決議では、2030年、2045年をターゲットとして国内のエネルギー開発戦略を定めている。同氏によれば、「現在、商工省は入札制度を含めたあらゆる方法を検討しており、太陽光発電の開発に投資を行う投資家の選択メカニズムを策定している。これらのメカニズムの導入により、透明性が高く、オープンな競争環境が生み出され、投資家にとってより多くの条件を作り出すと同時に、電力需要への対応が可能になるだろう」と述べている。

ベトナムの再エネ市場の今後

 こうしてみると、ベトナムの再エネ市場は発展性を秘めているものの、優遇措置および採算性等でいくつかの課題が依然として残っている。今後のベトナム政府によるFIT政策の動向、プロジェクトの採算性は日本企業が太陽光発電や風力発電などの再エネ市場への投資を行う上で非常に重要なポイントとなるだろう。この点については引き続き、当社も分析を続けていきたい。 

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