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[特集]

悩み多き越僑「サンドイッチ世代」の話

2007/09/02 08:29 JST更新

 親世代の思いと子ども世代の関心の間には隔たりがある。海外に暮らし、自分の子どもたちにベトナムの文化を伝えようとする越僑「サンドイッチ世代」の苦悩は、あまり知られていない。  ドイツに20年間暮らしているファン・バン・タンさんはこう嘆く。タンさんがベトナムにいる娘と孫に電話した時のこと。娘が「おじいちゃんとお話ししなさい」と言うと、孫は平然として「そんな人知らない」と答えたのだという。タンさんは言葉を失った。  親はベトナム語で話し、子どもは現地の言葉で答えるというケースもよくある。子どもの方は小さいころから学校で習うのも友達と話すのも現地の言葉、見るテレビも現地のテレビなのだから、無理もないことだ。ポーランドのある新聞には、ポーランド人かベトナム人か聞かれたベトナム人の子どもが、「多分ベトナム人だと思う」と答えたという記事が載っていた。これらの子どもたちが悪いというわけではなく、彼らとふるさと、彼らと離れた親族を結びつけるきずなが弱くなっていることが問題なのだ。  アメリカで暮らすベトナム人家族の場合、子どもたちは英語を日常的に話し、小さいころから学校でアメリカの歴史を学ぶことになる。ベトナム文化に触れる機会は家庭においてしかなく、ベトナムの伝統を学ぶ機会は非常に少ない。家庭が頼みの綱だが、西洋社会の中でアジアの生活様式を維持することには困難が伴う。  欧米で暮らす若い世代のことを、よく「バナナ世代」と形容することがある。見た目は黄色(アジア人)だが、中身は白(西洋人)ということだ。バナナ世代の親の世代は「サンドイッチ世代」と呼ばれる。自分たちの親世代と子ども世代の板ばさみになっているという意味だ。この世代は、いかに子どもたちに伝統を伝えつつ、西洋の暮らしにもなじんでいくかということで常に頭を悩ませている。  子どもを連れてベトナムへ里帰りするのは誰でも思いつく一つの方法だ。しかしそれには時間もお金もかかるという現実がある。里帰りできたとしても、親せきの顔もよく覚えられず、食事にも慣れず、もちろん伝統など学べないうちに帰路につくパターンがほとんどだ。  一方で、アメリカに長く暮らしているグエン・ディン・ミンさんの家では、アメリカで生まれた子どもたちも流ちょうなベトナム語を話すという。53年間もアメリカに住んでいるブイ・キエン・タインさんの家庭もそうだ。このように、うまくいっている家庭もまったくないわけではない。  ベトナム語を強要するといやがられるのではないかと心配する親たちもいる。ある母親は考えた揚げ句、ベトナム語を教えるために昔話を話して聞かせている。子どもに話をする前に、まず自ら母国について学びなおす必要があることに気付いたという。彼女は、生活環境を考えると簡単ではないけれど、時間をかけて子どもたちに教えていきたいと語った。  

[2007年8月19日 Tien Phong紙 電子版]
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