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[特集]

ベトナムの「おくりびと」、遺体回収から死化粧まで

2013/02/03 07:35 JST更新

(C)Dan tri, 遺体安置冷蔵庫の前で
(C)Dan tri, 遺体安置冷蔵庫の前で
 ある大病院の霊安室の職員であるグエン・バン・ディエムさん(50歳)は、映画「おくりびと」で広く知られることになった納棺師の仕事をしている。この20年余り、遺体のそばで寝食を共にし、死化粧をして遺体の見栄えを整えては送り出してきた。  ディエムさんがこの仕事を始めたのは、軍隊を除隊してからだ。軍隊時代に死と向き合う訓練を積んでいたにもかかわらず、初めのうちは霊安室での仕事が怖くて仕方がなかったという。  その当時、感染症が流行し多くの人が病院で亡くなった。夜になって遺体を霊安室に運ぶよう指示を受けると、薄暗い廊下を台車の音をきしませながら1人で引き取りに向かった。宿直室は霊安室の隣にある。今は4人の職員が交代で2人ずつ宿直しているが、以前は職員が2人しかおらず、夜は1人で遺体を見守らなければならなかった。  遺体を安置するのは、4本足のベッドではなく1本の太い柱で支える台だ。ネズミが上って遺体をかじるのを防ぐためにそうなっている。しかし「ここのネズミは頭がいい」とディエムさんが言う。ちょっとでも油断すればネズミが台に上がってしまうので、宿直の夜は何度も見回らなくてはならない。

 ディエムさんは、死因究明のために遺体の解剖をする医師の助手も務める。ばらばらにされた内蔵や体の一部をホルマリンの瓶に入れる仕事で、慣れないうちは悪夢に悩まされた。交通事故などで無残な姿になった遺体を回収するのも役目の一つだ。多くの人がこの仕事に就いて半月も経たずに止めてしまうのは、これに耐えられないためだという。  経済の発展に伴って、ディエムさんは遺族から遺体の見栄えを整えるよう頼まれることが多くなった。当初は遺体を洗浄し経帷子(きょうかたびら)を着せるだけだったが、やがて髭剃りや白粉、爪切り、眉毛の手入れまで頼まれるようになり、死化粧の専門家になっていった。白粉のことさえ何も知らない状態から、お化粧上手のどんな女性にも引けを取らないほどの腕前になることなど、想像もつかなかったという。  ディエムさんはこの20年余りを振り返って、「たとえ勇気があっても、心がなければこの仕事はできません。これは人を幸福にする徳のある仕事だと、そう自分を励ましながら続けています」と語った。  

[Dan tri,26/01/2013 - 10:31,O]
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