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[特集]

日本の鉱山保安第一人者、「年収1円の先生」として活躍

2014/03/30 08:02 JST更新

(C)  vietnamnet., 井清武弘氏
(C) vietnamnet., 井清武弘氏
 鉱山保安分野で日本の第一人者である井清武弘氏は、自ら志願してベトナムへ赴いた。ベトナムの技師たちが常に危険と隣り合わせになっている現在の状況を改善するのが井清氏の望みだ。ベトナム炭鉱ガス安全管理センターの職員からは「年収1円の先生」と呼ばれている。  井清氏は、JICAが鉱山保安分野で派遣した最初のシニアボランティアだ。このプロジェクトは2001年に始まり、これまでに140人を超えるシニアボランティアが派遣されている。JICAによると、井清氏は日本で豊富な経験を持つ専門家として、40以上の国を訪れ、20を越える国々で数々の研究や問題解決に携わってきたという。  井清氏は、ベトナムに関わるようになったきっかけについて、「2001年に日本政府から推薦されて、ベトナム炭鉱ガス安全管理センターのチーフアドバイザーに就任し、研究室の立ち上げなどに参加するなど、2006年まで5年間働きました」と語った。在任期間が終わってからも、ベトナムで知り合った友人や同業者たちからの相談を受け続けたという。

 帰国後も井清氏は自らの意思で度々ベトナムを訪れており、センターの活動を見守り続けた。その熱の入れようたるや妻が「ベトナムにいい人でもいるのでは?」と疑ったほどだ。  その後、JICAがベトナムでのシニアボランティアを募っていることを知って参加を申し込み、受理される。さらに、東北部クアンニン省の安全管理センター開所に合わせて、JICAに手紙を書き、技術指導役を買って出た。  シニアボランティアとして井清氏は、試験室の運用や立ち上げを手伝っている。立ち上げ後は、メンバーと共に、鉱山で危険を早期発見する技術・自然火災の防止などについて研究している。  井清氏によると、メンバー間で安全点検を徹底することが何より重要であり、鉱山事故防止に直結するという。「私たちの研究によれば、事故は月曜日の朝に起こり易くなっています。休み明けで各担当者の点検が甘くなっていたりして、事故に繋がることが多いのです。開山して10日足らずで発生したドンモン鉱山での事故やマオケー鉱山での事故も、月曜日の朝に発生しています」  さらに、どの事故も理由は明確だという。「逐一記録して分析することが重要なのです。ベトナムの鉱山の事故防止能力が向上して、事故が減ることを切実に願っています」と、希望を語った

 井清氏は、単にシニアボランティアとして仕事の模範を示すだけでなく、厳格な自己規律と若者顔負けの身体能力においても尊敬を集めている。毎朝5時ちょうどに起床し、心音や歩数を測る計器を持って公園を散歩するのが日課で、クアンニン省にあるイエントゥー山には、旧正月のたびに登り、年に4回登ったこともあるという。  ベトナムでの暮らしが長い井清氏だが、理解ある家族の支えがあって、ここまでやってこれたと語る。「妻の協力がなければ、ベトナムへの貢献を続けることは出来ませんでした。彼女もまたベトナムを愛していて、10回ほど訪れたことがあります。母も子供たちも皆ベトナムが大好きなのです」  井清氏曰く、ベトナムは良い伝統をまだたくさん残しているという。「ベトナムでは私がバスに乗ると、必ず若者が席を譲ってくれ、年配者に敬意を払う習慣が続いています。暮らしは快適ですし、これまでに様々な場所を訪れて各地の風習を見てきました。ベトナム人よりもよく知っているかもしれませんね」と、井清氏は笑いながら語った。  ただ一つ満足できないことといえば、10年近くいるのにベトナム語が上達しないことだという。「勉強するには年を取り過ぎていたのでしょう。また、ベトナム語は発音がとても難しく、いまだに市場に行って値切るぐらいしかできないのです」 

[2014年3月28日  Tô Phương Thủy Vietnamnet 09/02/2014 ]
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