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[特集]

私設「捕虜になった革命戦士博物館」誕生の物語

2014/05/25 07:32 JST更新

(C)Nguoi lao dong
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 「捕虜になった革命戦士博物館」という少し変わった名称の博物館が、ハノイ市中心部から30キロメートルほど離れた郊外のフースエン郡ナムチエウ村ナムクアット集落にある。元捕虜のラム・バン・バンさん(71歳)が2006年に設立した私設博物館だ。  バンさんは1943年にナムクアット集落の貧しい農家に生まれた。中学校に相当する学校を出ると工員になり、その後志願して軍隊に入った。1965年末に東南部タイニン省に派遣され、1968年のテト攻勢に参加した。しかしこの時手足に重傷を負い、ドンナイ省ビエンホアで捕虜となり、フーコック島(メコンデルタ地方キエンザン省)の収容所に移送された。  バンさんは1973年に釈放されたが、収容所で過ごした4年8か月の間に地獄を経験した。収容所では◇熱湯を口に注ぐ、◇トラの檻に押し込む、◇針を手足の爪の間に刺す、◇歯を折る、◇釘を頭に打ち込む、などの残酷な拷問が行われていた。  バンさんは普通の生活に戻った後も、拷問で受けた痛みや死んだ戦友達のイメージが何度も蘇り悩まされた。眠れぬ夜を過ごした後、バンさんは捕虜になった戦士達の思い出の品を集めることを思い立つ。それが死んだ仲間達に対する責任だと思ったという。  国防省の元高官の支援を受けて、バンさんは1985年から戦友のチュー・ヒュー・ゴックさんと共に全国で収集活動を始めた。しかし資金が潤沢にある訳ではない。長い時間をかけて少しずつ集めていったが、博物館を開く条件は整っていなかった。

 バンさんは2003年に60歳で定年退職した後、1室だけの博物館を2004年12月に開設した。家族と相談し2,000平方メートルの土地を博物館に充てることを決め、2006年10月には旧ハタイ省(現ハノイ市)人民委員会から博物館の設立を公認された。こうして同年11月に正式に博物館が誕生した。  博物館は9つの部屋に分かれている。◇故ホー・チ・ミン主席と戦争烈士(戦死した軍人・従軍者)を祭る部屋、◇ベトナム戦争関連の現物資料や写真を展示する部屋、◇米軍と南ベトナム軍の犯罪の証拠を展示した部屋など。3000点を超える現物資料の一つに、箱に入った釘がある。フーコックの収容所で、頭に釘を打ち込まれて殺されたダン・ホン・ソン少尉の頭蓋骨から取り出されたものだ。  博物館の職員はバンさんを含め15人いるが、いずれも元兵士や元捕虜達だ。全員が無給で働き、博物館も無料で公開している。開館から8年で数万人が訪れた。元兵士だけではなく、全国から多くの生徒達や外国人も見学に来ているという。  展示室にはこう書かれた看板が掲げられている。「ご来館の皆様、静かに歩かれるようお願いします。ここには友人達の魂が眠っています」  

[Nguoi lao dong online,03/05/2014 22:07,O]
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