VIETJO - ベトナムニュース 印刷する | ウィンドウを閉じる
[特集]

お金があっても手に入らない「本物の蓮茶」ができるまで

2014/10/05 06:11 JST更新

(C) vietnamnet 早朝から蓮の花を仕入れる
(C) vietnamnet 早朝から蓮の花を仕入れる
(C) vietnamnet 「ガオセン」を手作業で取る
(C) vietnamnet 「ガオセン」を手作業で取る
(C) vietnamnet 「ガオセン」を手作業で取る
(C) vietnamnet 「ガオセン」を手作業で取る
(C) vietnamnet お茶の葉と混ぜて熟成させる
(C) vietnamnet お茶の葉と混ぜて熟成させる
 ベトナムのお茶と言えば蓮茶。蓮茶と言えば、ハノイ市にあるタイ湖の蓮茶「Tra sen Ho Tay」が代表的だ。タイ湖の蓮茶は1kg当たり500万VND(約2万5900円)で販売されている。この価格を聞いた多くの人が、あまりにも高いと頭を振るかもしれない。しかし、伝統的な蓮茶作りの工程を知れば、その価格がいかに理にかなっているかがわかるに違いない。実際には、いくらお金があっても本物のタイ湖の蓮茶を入手することは容易ではないのだが。  タイ湖の蓮茶は、タイ湖で育てられた蓮の花を用いて香りをつけたお茶で、お茶の愛好者たちの間でも貴重かつ希少な飲み物として知られている。ベトナム人だけでなく外国人も、同市を訪れたら1度は本物のタイ湖の蓮茶を試してみたいと思うだろう。  タイ湖の蓮茶の熟練工、ホアン・バン・スオンさん(41歳)は、亡くなった父のチュオン・スアンさんから蓮茶作りの方法と「チュオンスアン」ブランドを受け継いだ。スオンさんは、タイ湖の蓮茶を通じてベトナム人のお茶文化を世界に広く紹介したいという希望を抱いている。  スオンさんによると、タイ湖の蓮茶の特徴はまず、タイ湖で育てられた蓮の花にあるという。タイ湖の環境は、気候や水、土といった好条件が揃っているため、ここの蓮の花は他のところで育てられたものとは全く異なる独特の香りと色味を持っている。タイ湖では、6月から8月末ごろが蓮の花が満開になるシーズン。つまり、蓮茶作りができるのもこの時期に限られる。

 蓮茶作りは、早朝に蓮の花を買い付けに行くところから始まる。スオンさんは朝5時に起きて、タイ湖の蓮畑へ向かう。蓮の花を持ち帰ったら、外側にある花びらを剥がし、おしべを取る。次に、おしべから、蓮茶作りの主な原料となる白いガオセン(「蓮の米」、おしべの先ぶあるやくの部分と花の内側の小さな花びら)を取っていく。もちろん全て手作業だ。そして、取り終えたガオセンとお茶の葉を混ぜ合わせて、紙の蓋をして1日熟成させる。その後、蓮茶の品質や香りを長く保つため、一定の温度で乾燥させる。蓮の花200輪から、2日かかってやっと1kgの蓮茶ができるという希少さだ。  また、蓮茶作りに用いられるお茶の葉は、西北部ソンラ省のタスア茶や東北部タイグエン省のタンクオン茶といった、有名な産地で調達したものでなければならない。更に、蓮茶作り用の蓮の花は、日の出前に摘んだ、花びらがまだ大きく開いていないものだけを選ぶ。蓮の花は、花びらが開くと独特の良い香りが飛んでしまうためだ。  蓮茶作りへのこだわりは、それだけではない。蓮茶を作る人は清潔でなければならず、かつては「月経中の女性は蓮茶作り用の蓮の花を摘んではならない」とされていた。洗練された文化の物忌みとして不文律になっていたというが、この考え方は今ではもうほとんど残っていない。  タイ湖の蓮茶作りを専業にする人々にとって、最大の問題は原料となる蓮の花の供給が不足していることにある。タイ湖は広いが、このうち蓮畑は面積の小さい区画がたった4~5か所あるだけ。また、蓮の花が咲くシーズンは約3か月間しかないため、蓮茶の原料調達は極めて難しいのが現状だ。  スオンさんは、「国内には様々な種類の蓮の花があるが、タイ湖で育てられた蓮の花の香りに及ぶものはない。タイ湖の蓮の花で香りをつけた蓮茶は、他のどんな蓮茶にも勝る『本物の蓮茶』なんだ」と話す。

 スオンさんは蓮の花が咲くシーズンになると、タイ湖の一角で育てられている蓮の花をまとめて1億VND(約55万円)で仕入れる。蓮畑の管理人は毎朝、花びらがまだ開いていない蓮の花を選んで摘み取る。そして1日合計数千輪もの蓮の花を売るのだという。数年前は、1輪当たり6000VND(約31円)程度で販売していたが、今では10輪ずつまとめて数十万VND(10万VND=約518円)で販売することで、より高い利益を上げているという。  しかし近年、蓮の花が満開になったタイ湖は市民たちの「撮影スポット」として、蓮の花を背景に写真撮影をするカップルや若者などで溢れる。こうした風潮を受けて、蓮畑の管理人は蓮茶作り用の蓮の花の販売を抑えて、より利益の高い写真撮影サービスの提供に力を入れる傾向にある。毎日写真撮影のために数百人が訪れるため、撮影スポットへの入場料や個人向けの蓮の花の販売などで得られる収入は決して少なくない。  また、最近は個人で簡単に作れる「自家製蓮茶」が広まりつつある。「自家製蓮茶」は、蓮の花の中にお茶の葉を詰めて、1~2日間熟成させるだけ。販売されているものよりも安く、簡単に作ることができ、しかも自分の手で作業をするため「清潔」だからという理由で人気を集めている。蓮畑の管理人は早速トレンドに乗り、管理人自らこの「自家製蓮茶」を作って、茶葉入り蓮の花1輪当たり5~8万VND(約259~415円)で販売している。  こうした蓮茶作りの現状についてスオンさんは、「本物のタイ湖の蓮茶は、天然の蓮の花から香りをつけたもので、香りを長く保つことができる。一方で現在流行している『自家製蓮茶』は、冷蔵庫で保管しようとすれば品質は変わってしまうし、健康に良い効果もなくなってしまう」と語る。スオンさんは、近年の新たな文化や風潮に合わせようとすることで、伝統的な蓮茶作りの文化が失われつつあることを危惧している。 

[Kien Trung, Vietnamnet, 02:00 (GMT+7) 08/09/2014, A]
© Viet-jo.com 2002-2024 All Rights Reserved.


このサイトにおける情報やその他のデータは、あくまでも利用者の私的利用のみのために提供されているものであって、取引など商用目的のために提供されているものではありません。弊サイトは、こうした情報やデータの誤謬や遅延、或いは、こうした情報やデータに依拠してなされた如何なる行為についても、何らの責任も負うものではありません。

印刷する | ウィンドウを閉じる