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[特集]

食事代は「心付け」、若者が営むハノイの精進料理食堂

2015/03/08 06:51 JST更新

(C) soha 食事代は「心付け」を箱に入れる
(C) soha 食事代は「心付け」を箱に入れる
(C) soha おかずは自分で選んでとる
(C) soha おかずは自分で選んでとる
(C) soha 店主のダットさん
(C) soha 店主のダットさん
 ハノイ市カウザイ区ズイタン通り76番地の路地にある精進料理食堂「フオックハウ」は、「おかずは自分で選んでとり、食事代は自分が払いたい分だけ払う」という何とも珍しいシステムで多くの人を惹き付けている。  店主は東北部タイグエン省フービン郡出身、1987年生まれのズオン・カイン・ダットさん。父は農民、母は教員の貧しい家に生まれたダットさんは、母と同じ教師の道を志した。しかし勉学は思うようにいかず、タイグエン省にある商業観光短期大学のレストラン学科に転入する。  ダットさんは、学費を稼ぐためにバイクタクシーの運転手や大工、食堂の店員などとして働いた。こうした中、2年近く食品加工会社で動物を殺生する仕事を担当していた時には、罪悪感にさいなまれることがあったという。  短大を卒業した2009年、殺生に対する罪悪感から、彼は若くして同省のフーリエン寺に入門し、精進料理の作り方を学んだ。その後、北から南まであちこちの精進料理食堂で修行を重ねながら、彼は1800万VND(約10万円)の資金を貯めた。

 彼はそのわずかな資金を手にハノイ市に戻り、精進料理食堂をオープンする計画を練り始めた。まず、1400万VND(約7万9000円)でバイクを購入し、店舗の賃料や従業員の人件費に充てるお金を家族に借りるために故郷へ帰った。善意から始まった彼の計画に、たくさんの人が賛同し助けてくれた。こうして2012年の旧暦3月1日、フオックハウ精進料理食堂はオープンした。  初期資金は少なく店を開いたのもビジネス目的ではなかったため、従業員は2人しか雇わなかったが、親戚や友人がたくさん手伝いに来てくれた。彼は毎朝4時に起きて市場へ買い出しに行き、厨房に入り調理をし、更にホールの仕事までこなした。  2014年の旧暦5月15日からは、店のシステムを「おかずは自分で選んでとり、食事代は自分が払いたい分だけ払う」ように変更した。このシステムを導入することで彼が目指したのは、収入の少ない人でも精進料理が食べられる食堂だ。彼は、精進料理を食べる人が増えることで、殺生も減ると考えた。

 客は自分の好きな額だけ払うため、ダットさんの収入は多くはない。売上は1日平均だいたい200万~300万VND(約1万1000~1万7000円)。ここから従業員の人件費や材料費、その他の支出を差し引く。赤字の日もあり、黒字の日があってこそ何とかやっていけている状況だ。しかし彼にとって自分の儲けが目的ではないため、彼は今の仕事に十分満足している。  ダットさんはこれまでに、炊き出しや、入院中の患者や孤児への精進料理の振る舞いなど、多くの慈善活動に参加してきた。こうした活動を通じてダットさんは、今の暮らしが裕福ではなくても、慈善の心がありさえすれば、自ら人に施すことでいつか自分にも返ってくるということを証明した。  更にダットさんはこの仕事が縁で、生涯の伴侶も見つけた。学生時代、食堂の開店当時からアルバイトとして働いていた女性と結婚することになったのだ。「より多くの人に精進料理を食べてもらって、殺生が減っていけば良いと思っています。もし機会があれば、2店舗目を開くことも考えています。」ダットさんは、そう教えてくれた。 

[Ba Thuc - Thien Di, Soha News, 28/01/2015 07:00, A]
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