VIETJO - ベトナムニュース 印刷する | ウィンドウを閉じる
[特集]

世界遺産チャンアンで船を漕ぐ、女性船頭の生きる道

2015/08/23 05:24 JST更新

(C) dantri
(C) dantri
(C) dantri
(C) dantri
(C) dantri
(C) dantri
(C) dantri
(C) dantri
 紅河デルタ地方ニンビン省にあるチャンアン生態観光区は、2014年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)からベトナム初の世界複合遺産に認定された。ここチャンアンの船乗り場には、観光客向けのレンタル船の船頭を生業とする1000人以上の女性がいる。  周辺に住む安定した職業のない中年女性は皆、生計を立てるために誘い合ってレンタル船の船頭をしている。彼女たちの仕事は早朝から始まり、夜遅くまで続く。毎回、力尽きるまで船を漕いでも、1回の報酬はたった15万VND(約830円)にしかならない。  日差しの強い真夏のチャンアン船乗り場に、観光客はまばらだ。川のたもとでは2000艘近くの小船が出番を待ち、川岸では青色の服を着た女性船頭グループが、日差しを避けるためそれぞれ散らばって木の下に座っている。観光客の少ない船乗り場は静かで、船頭の女性たちは「失業」状態だ。  管理会社は客をそれぞれの船に順番に乗せて分配しているが、観光客が少ないと、女性船頭たちは一日中船着場で客を待ち続けなければならない。古びたノンラーを静かに扇ぎながら、45歳のグエン・ティ・バンさんは「最近はお客さんが少な過ぎるんです。朝から晩まで待ってもなかなか来ません」と嘆く。  「普段はお客さんが来るまで待ち続けないといけないのですが、テト(旧正月)休みはお客さんが多く船の回りも早いです。最近は4、5回漕ぐことができましたが、大した稼ぎにはならないし、この暇さじゃ月末にはお金がなくなってしまいます」とバンさんは続けた。

 バンさんと一緒に座って客を待ち続けている50歳のディン・ティ・ハインさんは言う。「私たちはやむを得ずこの仕事をしています。国は観光地の土地を収用する計画なので、故郷には作業できる田畑がありません。若い人たちは出稼ぎに行ったり都市部の会社に勤めたりしています。私たちのような年老いた女性は遠くまで行けないし、何をしたらよいかもわからないので、家族を養うためここで船漕ぎの仕事をしています。」  ハインさんはさらに打ち明けた。「私たち船頭にとって一番嬉しいことは、お客さんがたくさんいて『失業』状態ではないときです。お客さんが多いと船の回りも早く、多くの収入を得ることができます。一方、お客さんが少ない月の給料は1か月で300万VND(約1万7000円)にもなりません。給料はすぐには受け取れず、3~4か月後にようやく受け取れます。苦労して船を漕いだ後、労をねぎらってくれるお客さんは飲み物代としてチップをくれますが、チップでは家族の助けになりません。」  52歳のグエン・ティ・ハンさんは、「この仕事でお金を稼ぐのは簡単じゃないんです。船を漕いでいる間は常に集中していなければいけないし、乗せるお客さんの数は普段で4名くらいですが、テトの時は6~7名に増えます。ベトナム人のお客さんは軽いけれど、西洋人のお客さん6~7名を乗せて船を漕ぐのはとても大変で疲れます。涼しい日はまだましですが、暑い日は10倍は大変になります」と弱々しく話した。

 ハードな仕事の一方で、船頭の女性たちはしっかりと食事をとることもできない。1食分だと思えないほど、彼女たちの食事は少ない。冷えたごはん1杯とゆで卵だけだ。肉の脂身や野菜の茎でも食べられれば幸運だ。フランスパンしか食べていない女性もいる。食事の時間もまちまちで、船を漕いでいる間は食事が取れず、客が寺院を観光している間に急いで食べる。  バンさんやハインさん、ハンさんのような女性たち数百人が、10年近くこの船乗り場で船頭の仕事を続けている。船頭の女性のほとんどは、周辺に住んでいる貧しい農民だ。船は会社が供給してくれる。女性たちは毎回、飲み水、昼食、そして客が座るゴザの入った簡素なカゴを持って船に乗る。  訓練講習を受け、技能試験に合格して初めて船頭の仕事に就くことができる。彼女たちはまた、常に観光業とコミュニケーション技術についても勉強している。船を漕ぎながら、同時に観光名所についての案内もするためだ。  「大変だけど、楽しくもあります。お金を稼ぐほかに、毎回違うお客さんと出会うことができるからです。ここに来る人は皆チャンアンのことを知りたいと思って来ているので、私たちはお客さんにこの仕事や故郷の美しさを伝えることができます。お客さんもまた、自分の故郷や仕事、今まで行った土地の話などを聞かせてくれて、楽しい時間を過ごすと疲れも癒されます」とハンさんは語った。  チャンアン生態観光区は、面積2168ha。周囲を山と湖に囲まれたその景色は「陸のハロン湾」とも称される。また、18の省級遺跡、21の国家級遺跡、2の特別国家級遺跡が存在し、968年から980年までベトナム北部を支配した丁(ディン)朝が都を置いたホアルー遺跡や、東南アジア最大規模を誇るバイディン寺がある。 

[Thai Son, Dan Tri, 21/07/2015 - 11:50, A]
© Viet-jo.com 2002-2024 All Rights Reserved.


このサイトにおける情報やその他のデータは、あくまでも利用者の私的利用のみのために提供されているものであって、取引など商用目的のために提供されているものではありません。弊サイトは、こうした情報やデータの誤謬や遅延、或いは、こうした情報やデータに依拠してなされた如何なる行為についても、何らの責任も負うものではありません。

印刷する | ウィンドウを閉じる