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[特集]

オバマ大統領訪越の裏、ホーチミンの医師団が語る緊張の30時間

2016/06/19 05:29 JST更新

(C) vnexpress, T.D., オバマ大統領に同行するFV病院の救急車
(C) vnexpress, T.D., オバマ大統領に同行するFV病院の救急車
(C) vnexpress, Duc Dong, ホーチミン市を飛び立つエアフォースワン
(C) vnexpress, Duc Dong, ホーチミン市を飛び立つエアフォースワン
 万が一発砲や爆発で負傷者が出た場合は、FV病院とチョーライ病院に搬送する―。米国のバラク・オバマ大統領がホーチミン市を訪問するにあたり、ホワイトハウスはベトナムの医師団に対し、事故が起きた場合を想定して緊急時対策を準備するよう要請した。  オバマ米大統領は、ベトナムと日本を歴訪するため、5月21日に米メリーランド州のアンドルーズ空軍基地を出発。22日21時30分頃にハノイ市ノイバイ国際空港に到着し、23日から大統領就任後初のベトナム公式訪問を開始した。オバマ大統領は5月24日と25日の2日間、ホーチミン市に滞在した。  オバマ大統領がベトナムを訪問する数週間前、ホワイトハウスの医療専門員2人が実地調査のためホーチミン市のFV病院を訪れた。彼らは何の情報も知らせずに各部門の調査を始め、病院幹部と医師らの面接を行った。十分な能力を有すると認められれば、米国外交団の支援を委任する、ということだった。  「ホワイトハウスの専門員は、医師らの専門資格を調査し、発砲や爆発で負傷者が出た場合などを想定して、医師らの緊急時対応能力をチェックしていました」とFV病院の救急科長チン・バン・ハイ医師は振り返った。ハイ医師は、この調査の真の目的を知るまで、理由もわからず綿密に調査されたことに驚きを感じていたという。  ホワイトハウスの専門員たちは特に救急科の無菌室を細かくチェックし、更に万が一化学兵器で攻撃された場合にも対応できるよう準備を要請した。救急車についても、小型移動式病院並みに車内の医療機器が十分に整っているかどうか、入念なチェックが行われた。

 ハイ医師によると、ホワイトハウスの専門員は医療機器・用具、人工呼吸器、医薬品などを確認するだけでなく、病院の緊急時対応プロセスを把握できるよう、通常業務のチェックリストも提出するよう要請した。そしてその後も度々、準備と確認のために病院を訪れたという。  5月24日正午、オバマ大統領がハノイ市で2000人の市民を前に演説を行っている最中、ホーチミン市ではハイ医師、看護師のグエン・タイン・ソンさん、そして救急車運転手のグエン・ゴック・フイさんがエアフォースワン(Air Force One)を迎えるためタンソンニャット国際空港に到着していた。彼らは厳重なセキュリティチェックを受けて空港内の専用待合室に入ったが、大統領が到着する正確な時間は知らされていなかった。  「私たちは、米国の特殊部隊が目を光らせる中、緊張しながら待っていました。その雰囲気は、トイレに行くのも我慢するほどでした」とハイ医師はオバマ大統領を迎える準備をしていた当時の状況を振り返った。そして16時頃、ついにオバマ大統領がタンソンニャット国際空港に降り立った。  タンソンニャット国際空港からホーチミン市中心部まで救急車に乗ってオバマ大統領一行に同行する道中、ゲストを歓迎して大勢の人々が道の両側で手を振っている様子を目にして、ハイ医師は様々な感情が込み上げてきたという。  ハイ医師はこれまでにも各国の元首や要人の支援に携わってきたが、今回のように熱烈で心のこもった歓迎ぶりに立ち会ったのは初めてのことだという。「これは私の医師人生の中で忘れがたい経験です」とハイ 医師は打ち明けた。

 一方、オバマ大統領に同行する米国使節団のホーチミン市滞在中の緊急時支援病院には、チョーライ病院が選ばれた。5月19日から、ホワイトハウスの医療専門員は在ベトナム米国大使館医務室のベス・キング博士と共に、チョーライ病院の緊急時対応の状況を調査した。  彼らは負傷者を搬送する場合を仮定して、救急車から救急救命室、画像診断室、手術室に至る搬送経路のほか、スタッフルームやVIP患者向けのセキュリティ部門についても入念にチェックを行った。  チョーライ病院のグエン・チュオン・ソン院長によると、様々な状況に備えるため、病院側はホワイトハウス使節団専用の固定電話を設ける必要があったという。また、救急科、心臓科、画像診断科などの各医師とセキュリティ部門を含む緊急時対応チームも立ち上げた。  オバマ大統領がハノイ市からホーチミン市に向かう直前の5月24日正午から、ホワイトハウスの専門員2人がチョーライ病院の救急科に待機していた。彼らはホーチミン市でのオバマ大統領の任務には同行せず、使節団一行に関わる事故が起きた場合に対応に当たるという特別な任務を負っていた。  この日も診察は通常通り行われており、病院内はいつも通り混み合っていたが、一方で医師たちは並々ならぬ緊張感を漂わせていた。ソン院長は、「緊急時に対応する準備はできていましたが、私たちはオバマ大統領の全ての動きを固唾を呑んで見守っていました」と思い返した。  5月25日午後、 オバマ大統領を乗せたエアフォースワンはベトナム訪問を終えてタンソンニャット国際空港を出発した。大統領に同行していたFV病院のベトナム医師団、そして病院で待機していたチョーライ病院のチームは安堵のため息をつき、彼らの緊張の30時間が終わった。 

[Le Phuong, VNExpress, 1/6/2016 | 17:26 GMT+7, A]
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