VIETJO - ベトナムニュース 印刷する | ウィンドウを閉じる
[特集]

アオザイ姿の香水「ミスサイゴン」、25年間変わらぬ人気の理由

2016/07/10 05:18 JST更新

(C) vnexpress
(C) vnexpress
 ベトナムを代表する香水ブランド「ミスサイゴン(Miss Saigon)」。誕生から25年が経った今も、アオザイ(Ao Dai)姿でノンラー(Non La、円錐形の葉笠)をかぶった少女を模したボトルのデザインは変わることなく、世界中の人々に愛されている。  かつて香水は上流階級の人々が使う贅沢品の1つだった。ホーチミン市の人々にとっては苦難の時代に誕生した香水ブランド「ミスサイゴン」は、ボトルのデザインは1つだが、色や香り、価格の異なる幾つかの種類が販売されており、特に国際市場で根強い人気を誇っている。  ミスサイゴンは、グエン・キム・トア女史が取締役会長を務めるサイゴン化粧品社(Saigon Cosmetics、ホーチミン市)の商品だ。その前身となる会社は1975年まで「イモルテル(Imortel)」ブランドとして香水を扱っていた。その後「第2化粧品工場」となり、1990年にサイゴン化粧品社が設立され、1999年に株式化された。  化学研究に没頭したトアさんは、ベトナム香水業界の発展のために心血を注ぎ、人生の全てを費やしている。1980年代に入社し、香水について学ぶため多くの国に出向いた。シャネル(Chanel)やランコム(Lancome)のような有名ブランドに引けを取らないベトナム人の香水を生み出すことができないだろうか、と試行錯誤を続けた。そして、トアさんと会社のメンバーは、アオザイを纏った少女の形のボトルをデザインすることに決めた。  同社は設立時から、香水の生産量においてベトナムで首位に立つことを目指していた。多くの困難にも直面したが、ミスサイゴンは25年間にわたり人々の好みに合わせて幾多の改変を重ねながら、大きな成功を収めた。

 2010年から2014年までの間に、同社の売上高は1540億VND(約7億円)から2060億VND(約9億4000万円)に増えた。売上高成長率は年平均+7%、年間利益は110億VND(約5000万円)程度と安定していた。更に2015年の売上高は前年比+47%増の3030億VDN(約13億8000万円)に達し、税引後利益は前年比約4倍となる410億VND(約1億8600万円)に上った。ベトナムの香水ブランドとして初めて3000億VND(約13億6000万円)の売上高を達成したのだ。  この成功は、同社の輸出戦略によるものだ。偽物のブランド香水が蔓延しているベトナムで、ミスサイゴンはベトナムのオリジナル商品として人々に選ばれるようになった。それに伴い、同社の輸出量は全体の4~5割を占めるようになり、時に6割を超えることもあった。  通常、輸出用または観光客向けの土産物用の香水は高値で売られており、1本250万~300万VND(約1万1400~1万3600円)のものもある。一方、ミスサイゴンは、一般的な香水と並んで主に市場やスーパーマーケット、小売店などで販売されている。  ミスサイゴンがベトナムと世界中の人々の心をつかんでいるもう1つの理由は、この数十年間、そのデザインが変わっていないことだ。 ベトナムの少女が優雅なアオザイを纏い、美しいノンラーをかぶっているボトルのデザインこそが、ミスサイゴンの魅力となっている 。  ベトナムを訪れる観光客は、そのベトナムらしいデザインにひかれて親しい人への土産物にこの香水を買っていく。そして、現在ミスサイゴンは、米国、東欧、フランス、台湾、フィリピン、マレーシア、シンガポール、タイ、中国、カンボジア、ラオスなどを含む20か国以上の市場に輸出されている。

 伝統のデザインは変えずに様々な商品を展開していく狙いで、同社は地場陶磁器メーカー大手のミンロン社(Minh Long)と協力し、陶器のボトルをデザインした。デザインは、北部地域の伝統的な 四つ身の上着「アオトゥータン(Ao tu than)」に「ノンクアイタオ(Non quai thao)」と呼ばれる葉笠をかぶった少女、中部地域(北中部地方トゥアティエン・フエ省)の伝統的なアオザイにターバン型の帽子「カンドン(Khan dong)」をかぶった少女、南部地域のアオザイにノンラーをかぶった少女の3パターンだ。それぞれ違った香りで、好みに合わせて選べるようになっている。  同社は2016年、売上高2750億VND(約12億5000万円)、税引前利益215億VND(約9800万円)の目標を掲げている。更に、2020年までに商品を多様化し、中でも高級ラインの売上を大きく伸ばすことを目指す。  ミスサイゴンブランドは確かに人々に好まれているものの、未だに流通ルートが整っておらず国内市場での普及度が低いという意見も多い。そのため、同社は主力香水商品を普及させるため、長期的なブランド戦略構築に向けて投資する計画だ。  大きな時代の変化を前に、同社もまた不動産や美容サービスへの投資など紆余曲折を経たが、それらは付帯収入に過ぎない。今でも売上高の8割を占めるのは、香水や化粧品だ。同社は現在、シャンプーやハンドソープ、ルームスプレーなど、性別や年齢に合わせた多くの香水関連商品を展開し、更なる商品の多様化を進めている。 

[Bach Duong, VNExpress, 13/6/2016 | 04:00 GMT+7, A]
© Viet-jo.com 2002-2024 All Rights Reserved.


このサイトにおける情報やその他のデータは、あくまでも利用者の私的利用のみのために提供されているものであって、取引など商用目的のために提供されているものではありません。弊サイトは、こうした情報やデータの誤謬や遅延、或いは、こうした情報やデータに依拠してなされた如何なる行為についても、何らの責任も負うものではありません。

印刷する | ウィンドウを閉じる