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[特集]

半世紀続くホーチミンの路上ビンロウジ市場

2018/02/11 05:31 JST更新

(C) vnexpress
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 ホーチミン市6区のレクアンスン(Le Quang Sung)通りの路上は、盛衰を経ながら50年以上にわたり「ビンロウジ(檳榔子、ヤシ科植物ビンロウ(檳榔)の種子)」を専門に売る市内最大かつ唯一の場所として知られている。

 半世紀以上にわたり存在する「ビンロウジ市場」。毎日、深夜から明け方にかけてビンロウジを運ぶトラックが市場にやってくる。時を経て、現在この通りでビンロウジを売っているのはわずか15人ほどしかいない。売り手のほとんどが50歳から80歳くらいの女性たちだ。

 ベトナムでビンロウジは、刻んだりすりつぶしたりしたものをキンマ(コショウ科植物)の葉にくるんで少量の石灰と一緒に噛む嗜好品として、また夫婦の象徴とされることから婚約・結婚の儀式で新郎が新婦の家へ贈るものとしても使われる。

 ホーチミン市のビンロウジ市場で一番の古株は、同市ホックモン郡在住のサウ・レンさん(女性・83歳)。ここでビンロウジを売って60年余りになる。毎日、ホックモン郡バーディエム村の自宅からバスに乗ってこの通りまで来て、夜に帰宅する。

 「私が幼い頃、この通りはビンロウジを売り買いする人で賑わっていました。当時この通りは『チュオンタンブウ(Truong Tan Buu)通り』という名前で、何十もの店が並んでいました。スパイシーな香りが特徴的な、ホックモン郡バーディエム村のビンロウジを主に売っていました」とサウ・レンさん。

 サウ・レンさんと同じくビンロウジを売っているガイさん(女性・61歳)は、「私は15歳の頃からここでビンロウジを売っています。ここの売り手の多くがホーチミン市のビンロウジの産地であるバーディエム村出身です。以前はここから市内の各市場へビンロウジを供給していて、時には東南部地方にも卸していました」と語る。

 しかし、キンマを噛む習慣のある人も少なくなり、人々は婚約・結婚の儀式のためにビンロウジを買うだけというケースがほとんどのため、市場は昔のような賑やかさを失ってしまった。そのため、ビンロウジ市場が本当の賑わいを見せるのは、婚約式や結婚式が行われる週末だという。

 ビンロウジは30個あたり10万VND(約490円)ほどで売る。実は3日もすれば腐ってしまうため、売り手は1日に多くても30kgしか仕入れない。かつてはバーディエム村のビンロウジだけを売っていたが、今はメコンデルタ地方や時に南中部沿岸地方のクアンガイ省やビンディン省からも仕入れなければならない。

 枝のついたまま仕入れて、見た目の悪い実は外して個別に売る。新鮮で見た目の美しい実は、きれいに飾って「ヒー(hy=漢字で「喜」を横に2つ並べたもの)」の文字のシールを貼り、婚約・結婚の儀式に使う。

 8区に住むフイン・トゥアンさん(男性・62歳)は40年以上もの間、毎週この通りにバイクでやってきてはビンロウジの実を買い、その場で噛む。「いつも10kgほど買って帰り、少しずつ噛んでいます。私はバーディエム村のビンロウジしか口にしません。他のところのビンロウジにはない独特な風味があるからです」とトゥアンさんは語った。 

[Quynh Tran, VnExpress, 24/10/2017 | 05:00 GMT+7, A]
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