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[特集]

白髪に輝く修士帽、片道40kmをバスで通い続けた85歳の院生

2018/07/01 05:40 JST更新

(C) laodong.vn
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 レ・フオック・ティエットさんは、南中部沿岸地方クアンナム省ダイロック郡アイギア町の自宅から同地方ダナン市内の大学まで、片道40kmの道のりを路線バスで2年間休まず通い、このほど修士号を取得した。ティエットさんはなんと83歳で大学院へ行くことを決意し、85歳で修士課程を修了した。

 ティエットさんは、髪は白いが目は眼鏡に頼らずともよく見えるという。ティエットさんは深みのある声で、自身が歩んできた人生について語った。

 貧しい家庭に生まれ育ち、13歳の時に家族の元を離れて旧制中学校へ進学したティエットさん。ところが、戦争や家庭の事情で学業の道は閉ざされてしまった。

 それでもティエットさんは学業に対して志を抱き続け、70歳の時に米国の大学で学士号を取得。さらに2016年には、ダナン市のズイタン大学で経営学の修士課程に願書を提出した。

 80代でさらに高みを目指し進学する人はそういないだろうが、ティエットさんが大学院進学に至った背景はこうだった。

 3年前に愛妻に先立たれ、寂しさを紛らわすために勉強に打ち込もうと決意したのが大学院進学のきっかけだった。大学へ通うようになっても、がらんとした部屋に帰宅すると哀しみが押し寄せたが、誰でも通る道だと自分に言い聞かせた。同じ哀しみの時間を過ごすなら、より良い時間にしようと決めたのだった。

 願書を提出するも、子供や親類からは「大変だから家にいるように」と進学を反対する声ばかりだった。しかし、誰かに強いられるのではなく、自分の希望で大学院に通いたいのだとティエンさんの意思は揺るがなかった。

 学期が始まってから、ティエットさんは夕方4時になるとアイギア~ダナン間の40kmの道のりを路線バスに乗って大学へ向かった。帰路に着くのは夜11時、孫に自宅まで連れて帰ってもらう。

 「勉強も論文を書くのも全く苦になりません。ただ行き来がねぇ」とティエットさん。孫もいつでもティエットさんを送り届けられるわけではない。孫や親類が忙しい時には、宿屋に泊まって翌日そのまま大学へ行っていたのだという。

 特に雨風が強い季節が大変で、家に着く頃にはシャツもズボンもずぶ濡れのこともあった。それだけでなく、ティエットさんは慢性肺疾患を患っているため、何より苦労が多いのが通学だった。それでもティエットさんは挫けなかった。修士課程の2年間、ティエットさんは常に一番乗りで教室に入り、皆勤を成し遂げた。

 そして遂に、大歓声の中でティエットさんは孫ほどの年齢の若者たちに交じって最年長で修士課程の修了証書を受け取った。修了証書を手にした気持ちを問うと、ティエットさんはこう答えた。

 「若者は学歴が必要でしょうが、私が勉強するのは学歴のためではありません。この歳で学歴も何もないですからね。脳を働かせるために勉強するんです。人生の中で起こった出来事を忘れないためにね。歳をとって物事を忘れていくことが年寄りには一番怖いことなんですよ」。

 85歳で卒業式に出席し、白髪にアカデミックガウンを羽織り角帽を被ったティエットさんの写真は、今後もダナン市で勉学を志す幅広い世代の学生や教員たちの励みになることだろう。 

[Thuy Dung - Thanh Tam, laodong.vn, 17/06/2018 07:28, T]
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