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[特集]

長身美男子のベトナム人若手微生物研究者、新種微生物8種を発表

2018/11/04 05:13 JST更新

(C) Vnexpress
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 オーストラリアはニューサウスウェールズ大学の大学院に在籍するグエン・ベト・フンさん(男性・28歳)は、180cmの長身に端正な顔立ちが印象的だ。微生物を研究するフンさんは、8月にドイツのライプツィッヒで開催された第17回国際微生物生態学会(ISME17)で、水産養殖における病気予防への応用が期待できる新種の微生物を発表した。

 世界各国から2000人を超える微生物の研究者が一堂に会するこの学会で300人が口頭発表をしたが、その中でフンさんは唯一のベトナム人研究者だった。

 フンさんはなんと8種類もの新種微生物を発見しただけでなく、それらの微生物が最良の状態で生息できる環境を知るために、微生物の特性を調べる方法を導き出した。これにより、必要に応じて微生物を培養して植物や動物に有益な要素を増やすことができるという。

 メコンデルタでは、あらゆる養殖魚や甲殻類が疫病で死亡する事例が多発しており、主な原因は環境の変化や土砂とされている。環境の変化などにより生物に有益な微生物が生態学的機能を失うことで、水中の硫酸水素塩やアンモニアなどの物質が急増し、魚や甲殻類が死亡してしまうのだ。

 このような場合にフンさんの研究技術を応用すれば、魚や甲殻類に有益なだけでなく、この悪環境でも生き残れる微生物を研究・培養し、生態系を再生することが可能になる。さらに悪環境を生み出したのが微生物だった場合に、フンさんの技術を応用すれば、微生物1種類ずつを培養し、DNA分析をすることなく、大量の微生物の中からどの微生物が原因なのかをいち早く見つけ出せる。

 祖父と父が交通分野の科学者、母が金融分野を専門とする家庭に生まれたフンさんは、幼いころから海洋科学と生物学が好きだった。5歳の頃には家族で日本へ渡り、毎日母に図書館へ連れて行ってもらった。母は英語の本を借りてはベトナム語に訳し、フンさんに読み方を教えた。さらに、どの本も1日3回は読み、1週間に3冊、休日には10冊の本をむようフンさんに言った。そのうち、フンさんは読書好きの少年になっていった。

 小学校2年生の時にベトナムへ帰国してハノイ市のインターナショナルスクールへ編入すると、フンさんは恐竜と無脊椎動物に魅了された。大学から修士課程、博士課程へと進学すると、興味は微生物や藻類へと移っていった。学士を取得したクイーンズランド大学では遺伝子学を専攻し、卒業論文ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌における抗生物質耐性遺伝子の水平伝播に関する研究をまとめた。
 
 遺伝子学研究の傍らで生物学も探究し続けた。「研究者にとって柔軟性が大切だと分かったので、多分野を研究することで自分の技術や能力を高めようと決めたんです。海洋学の学会へも参加しましたし、プログラミングや統計学も学びました。これまで学んできたことが大きな価値を持ち、私の研究の中で相互に補い助けてくれています」とフンさん。

 修士課程ではマッコーリー大学で真珠貝の病気に対する反応を研究した。そして、オーストラリアの名門大学3校で奨学金を得て博士課程の研究ができるチャンスに恵まれたが、いずれも辞退しニューサウスウェールズ大学で研究を続けることにした。

 フンさんは毎日9時間を研究に費やす生活だが、これまでにクイーンズランド大学ベトナム人留学生会会長にバレーボール部キャプテン、ニューサウスウェールズ州ベトナム学生協会顧問、ニューサウスウェールズ大学ベトナム学生協会会長を歴任してきた。オーストラリアのベトナム人留学生コミュニティのイベントへも積極的に参加し、コミュニティでフンさんのことを知らない人はいないほど。フンさんはこれが自分流のワークライフバランスだという。

 今後は寄生虫中の細菌の連鎖についての研究を通して、人間の健康管理に有益または必要な細菌を見つけたいと話すフンさん。「人間の身体にはそれぞれ異なる微生物がいます。それが詳しく分かれば、その人の健康に有益な微生物を再生することも可能になります」。

 自分自身の研究のみならず若手研究者のネットワーク構築にも意欲的で、若手研究者グループを立ち上げ、アイディアの共有や各々の強みを生かして社会にとって大きな成果を出すことも目標にしている。 

[Vnexpress 12:15 23/10/2018, T]
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