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[特集]

ベトナム住みます芸人「ダブルウィッシュ」独占インタビュー【前編】

2018/12/23 05:30 JST更新


 吉本興業が主導するアジア版「あなたの街に住みますプロジェクト」の芸人(住みますアジア芸人)としてベトナムで活動するお笑いコンビ「ダブルウィッシュ」。ボケ担当の中川新介さんとツッコミ担当の井手一博さんの2人は、2015年6月にベトナムへ移住し、現地での活動を開始した。

 現在は「現地で売れる」ことを目指して、ベトナムのテレビ番組やイベントに出演するほか、2017年からはベトナム神奈川親善大使に就任し、日本で開催されるベトナム関連イベントに出演するなどして日越両国の架け橋として活躍の場を広げている。

 そんなダブルウィッシュは、12月15日に最新の動画をユーチューブ(YouTube)で公開したばかり。この動画は2017年12月に同じくYouTubeで公開した動画の続編で、ネイティブのベトナム語の発音とはかけ離れた日本人の「ジャパニーズイングリッシュ」ならぬ「ジャパニーズベトナミーズ」に突っ込みを入れ、日本人独特のベトナム語の発音がなかなかベトナム人には通じない、という状況をユーモアたっぷりに表現したものとなっている。



今回、ベトナムに住み始めてから3年半が経過し、ベトナム唯一の日本人芸人として活躍するダブルウィッシュの2人に、ベトナムでの活動やベトナムのお笑い界と裏話、今後のビジョンなどについてVIETJOベトナムニュース編集部が話を聞いた。


【ベトナムでの活動について】

―――「ベトナム住みます芸人」としてベトナムに移住されてから3年半が経ちましたが、3年半前と現在とを比べて、最も大きく変わったことは何ですか?

中川:正直に言いますと、来る前は何となく日本の売れ方を想像していました。ネタをやって、テレビに出て、MCのポジションに辿り着くような。でも、3年半経ってこういった考えは一切なくなりました。ベトナムには「ネタ」という概念もありませんし、日本の芸人とベトナムの「Dien vien hai(コメディアン)」のニュアンスも違う。この国に合った僕らにできる方法で有名にならなければならない、と思いました。未だ確信は持てませんが、何となくは見えてきたような気もしています。

井手:去年と今年、ベトナムの有名なオーディション番組に出演させてもらったのですが、去年は「外国人のコメディアン」ということでゲスト的な扱いを受けていたのですが、今年は放送後にネットで叩かれたりもして、やっと現地の人と同じ土俵に立てたというか、ベトナムで活動する1コメディアンとして見てもらえるようになったのかな、と思います。これからはもっとシビアにやっていかなければと思う反面、少しは知られてきたのかなと嬉しくも思います。

最新動画の1シーンの撮影中

―――ベトナムで活動し始めてから、一番印象に残っているお仕事を教えてください。

井手:ベトナムに住み始めて初めてネタをやらせてもらった時です。住み初めて3週間くらい経った頃、「Touch FES」という日越文化交流イベントに出させてもらえることになって、「もうベトナムでステージに立てるんだ!」とすごく嬉しかったのを覚えています。でも冷静になってみると、ベトナム語なんて全然できないしどうしよう、と。結局、画用紙に台詞を書いて、それをお客さんに見せながらネタをやるということで事なきを得ました(笑)。でもその時に感じたのは、「ステージって楽しい!」ということ。お客さんのリアクションも良いし、何よりも下手くそなベトナム語を話す謎の日本人2人をお客さんが助けてくれて、その場で発音を直してくれたり、一緒にステージを盛り上げてくれました。あの時の一体感は今までで1番だったかもしれません!特に、ドラえもんの歌を歌うとほとんどの人が知っているので一緒に歌ってくれて、あの頃は「ドラえもん最強」が僕ら2人の合言葉になっていました(笑)。

中川:僕はやっぱり、ベトナムのテレビ番組でMCのポジションに立てたことですね。大きなテレビ局ではなかったのですが、こんな経験、僕らクラスの芸人では日本にいたらできませんから。だからこそすごく嬉しかったです。でも、実力不足もあり、1年ちょっとで終わってしまいました。返り咲きたいですね!

ホーチミン市のイオンモールでのイベント


―――日本人とベトナム人、笑いのツボは違いますか?もし違う場合、どういった点が違うと感じられますか。

中川・井手:違いますね!ベトナム人は、物事をストレートに受け取る方が多いですね。

中川:日本のお笑い界では「『押すな押すな!』は『押せ!』」の合図ですが、ベトナムでは「『押すな押すな!』は『押すな!』」です。これには最初驚きました。ある番組で、カズがプールに落ちて僕が助けに行き、手を差し伸べました。そこで、僕は日本のノリで周りに「押すなよ!押さないでよ!絶対押すなよー!」と言うと、あわてて何人ものスタッフが入ってきて、僕を羽交い締めにするぐらい守り、カズもスタッフに助けられていました。

井手:「嘘(本当でないこと)」が通じません。「押すな押すな!」で本当に押してしまえば、「なぜ押すなと言っているのに押してしまうの?」と捉えられます。また、ステージ中に相方が早着替えで女装して出てくるネタがあるんですが、お客さんの中には相方が本当にゲイだと思った人がいたようで、「LGBTの問題を取り入れたネタで今の社会を切っていて面白かった」という感想をもらったことがあります。逆に、ダジャレやうまいことを言ったりする、言葉遊びのような賢いネタのほうが面白いと感じてくれるようです。

ホーチミン市のイオンモールでのイベント

―――これまででベトナム人に一番受けたネタを教えてください。また、逆に一番受けなかったネタがあれば教えてください。

中川:ウケたネタは、僕が女装してミュージカルをするネタです。悲鳴と笑いの共鳴は凄まじかったです。ウケなかったネタは、何のネタか覚えていませんが、「できます」と言っておきながらオチで「できませんでした」となるネタです。例えば、吉本のハイキングウォーキングさんの「コーラを一気飲みしてゲップをせずに山手線の駅名を言い切る」という芸であれは、「ゲップをしてしまい駅名を全て言えなかった」というのがオチですが、ベトナムだとこれは「駅名を全て言えないとダメ」なんです。

井手:ベトナムに住んでいれば誰しもに起こり得る日常を題材にした「あるあるネタ」をリズムに乗せてやるネタはウケました。ウケないことで言えば、例えば真剣にゲームに取り組んでいる人の邪魔をしたりするボケは、そもそもツッコミの概念がないので無視されます。


―――普段どのようにしてネタを思いついたり、作ったりされますか。また、ベトナム人向けにネタを作るにあたり、気を付けていること、工夫していることなどありましたら教えてください。

中川:とにかくベトナム人にウケることを意識していて、ベトナム人に聞いたりしながらベトナムで流行っている歌やワードなどを入れるように心がけています。そして、そこに日本人ならではの目線や切り口も入れつつ、オリジナリティを出すようにしています。

井手:それに加えて、誰かが傷つくようなネタや誰かをいじりすぎるネタはやらないようにしています。ただの悪口ととられてしまうこともあるので・・・。

最新動画の1シーンの撮影中

―後編に続く―
※後編は、ベトナムのお笑い界と裏話、今後のビジョンなどについてのインタビューです!


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ダブルウィッシュ(Double Wish)プロフィール

吉本興業東京本社(東京吉本)所属のお笑いコンビ。メンバーはボケ担当の中川新介(なかがわしんすけ、1982年6月25日生まれ)とツッコミ担当の井手一博(いでかずひろ、1983年2月6日生まれ)。いずれも熊本県熊本市出身。高校時代、テレビ熊本の若者向けローカル情報番組「若っ人ランド」で共演したことがきっかけで、2008年4月にお笑いコンビを結成。2015年6月より「住みますアジア芸人」としてベトナムに住み始め、現地で活動している。

Facebookページ:https://www.facebook.com/doublewishkumamoto/
Youtubeチャンネル:https://www.youtube.com/user/doublewishkumamoto/ 

[2018年12月23日 ベトジョーニュース A]
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