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[特集]

薪を蓄えて嫁入り、ジエ・チエン族の結婚の風習

2019/07/14 05:15 JST更新

(C) vnexpress
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 南中部高原地方コントゥム省ゴックゴイ郡ダクズック村には、ベトナムの少数民族の1つであるジエ・チエン(Gie Trieng)族の人々が暮らしている。だいたいどの家にも、大きく均一で見た目の美しい薪の山がある。これらの薪は、火を燃やすためのものというだけでなく、女性が嫁入りするときの結納品でもある。

 ジエ・チエン族の女性たちは、「夫をつかまえる」ため、結納品となる薪をたくさん蓄えて、健康さと器用さをアピールする。ジエ・チエン族のイー・クウさん(女性・62歳)によると、この風習がいつからあるのかは不明だが、家の庭に少女たちが薪を並べる様子を幼いころから見てきたという。

 「昔は、女の子が13~14歳になって恋愛のことを考えるようになると、自分の薪を並べるのに良い位置を選んでいました。これが、女の子が結婚したいと思っているということを家族や親戚に知らせる合図でもあったんです」とクウさん。

 女性たちの結婚に向けた薪の備蓄は、数か月から数年にも及ぶ。中には13歳から薪を準備して、20歳を過ぎてから結婚する人もいる。薪を集めていきながら、女性たちは好きな男性とデートをする。将来の夫が決まったら、トウモロコシやサトウキビ、ウリなどの産品を蓄え始める。そして、自分から積極的に意中の人へ贈る。

 家族や村の長老に認められれば、両家の両親ときょうだいの立ち会いのもと、婚約式を夜にひっそりと行う。婚約式を取り仕切るのは仲人だ。婚約から結婚式までは、3か月もしくは1年かかる。結婚の前に結納品の薪が足りないと感じれば、女性は家族や友人、親戚に頼ん準備を手伝ってもらう。

 「私の結婚式では50束しか作りませんでしたが、準備には5年かかりましたよ」とクウさんは語る。当時は、100束から200束もの薪を準備する家もあったという。

 風習に従うと、結納品の薪は栗の木でなければならない。薪の直径は10~15cm、長さは85~90cmで、束にするときにぐらつかないよう長短を揃える。もしも森に栗の木がなければ、代わりにジタノキを使ってもよい。この2種類以外は、結納品の薪として使うことができない。

 女性側は均一で美しい薪を選び、男性側の家への結納品にする。この結納品の薪の束を見て、男性側の家は女性の資質を評価する。薪の束がまっすぐで均一で美しければ、この女性は健康で器用、勤勉であり、十分に家事を担うことができる、と見なされる。

 女性が薪を伐採する一方で、男性もまた籠を編んだり野生動物を狩ったりして才能をアピールし、女性が家に嫁入りするときに向けて準備する。

 結婚式当日の朝、花嫁側の一団は薪を背負って花婿側の家へ向かう。花婿側は薪を受け取ると、代わりに衣服や織物、籠を花嫁側に贈るとともに、さばいたばかりの野ネズミやリス、ブタで薪を運んだ人々をもてなす。そして、午後になってようやく披露宴が正式に始まる。

 「夫をつかまえる」のに十分な薪を集めるため、女性たちは親戚の力を必要とする。そのため、男性が気まぐれに心変わりしたり、女性を愛していないとなれば、これは女性側の家の努力を軽視しているのと同じことになる。逆に、男性も自分の才能を証明するために努力をしなければならない。

 しかしながら、時が経つにつれて、薪を結納品とするジエ・チエン族の風習も徐々に変わりつつある。夫のそばに座り、イー・トゥイさん(女性・25歳)は、8年前の自分の結婚式について話した。

 結婚式の日が近づき、トゥイさんは母親と畑に入って伐採し皮を剥いだクスノキ科の木と、短いのこぎりを結納品にした。「栗の木はもう森になかったので、私の家族は家に植わっていたクスノキ科の木をいくつかに束ねて、代わりにしました」とトゥイさん。

 トゥイさんのように、現代のジエ・チエン族の女性たちは、栗の木やジタノキの代わりに自分で植えた木を使うことで薪集めの労力を減らし、森を守りながら、自分の民族の伝統をも守っている。 

[VnExpress 00:00 21/6/2019, 00:00, A]
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