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[特集]

ベトナムのソフトウェア技術を世界へ、29歳プログラマーの挑戦

2019/12/22 05:22 JST更新

(C) Tuoi Tre
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 起業からわずか8か月余りで、グエン・フウ・アインさん(男性・29歳)のソフトウェア会社「テソ(TESO)」は、国内外の大手テクノロジー企業と50件ものアウトソーシング契約を結んだ。

 ある日、シンガポール国立大学(NUS)の講師と学生の団体が、ホーチミン市3区にあるテソのオフィスを訪問した。NUSのメンバーがここを訪れたのは、観光や交流のためではなく、起業やインターンシップ、雇用の機会について学ぶためだった。

 NUSがテソを訪問先に選んだのは、スタートアップ企業としての戦略と活動モデルに感銘を受けたからだという。ある学生はアンさんに「米国で働いていたのに、どうして起業するためにベトナムに帰国したのですか?」とたずねた。

 アンさんは「米国では、社会がとても発展していて、全てが安定しています。一方ベトナムでは、解決すべき問題がまだまだあると思いました。多くの問題があるところには多くのチャンスがあるという考えから、そのチャンスをものにして起業したいと思ったのです」と答えた。

 アンさんの自信に満ちた様子と説得力のあるメッセージからは、まさか彼がテソを立ち上げてまだ8か月しか経っていないなどと考えもつかないだろう。前年の同じころ、アンさんはまだハノイ市ドンダー区に暮らす1人のプログラマーだった。

 2018年8月、アンさんの開発した英語学習アプリケーション「クレバーチューブ(CleverTube)」が、ホーチミン市ベトナム青年連合会傘下のビジネススタートアップサポートセンター(BSSC)が主催するスタートアップコンテスト「ベトナムスタートアップホイール(Vietnam Startup Wheel)」で最優秀賞を受賞し、多くの人にアンさんの名が知られるようになった。

 「クレバーチューブ」は、機械学習や自然言語処理を使用してデータを構築し、ユーザーが標識やテキストなどに書かれた英単語にカメラを向けるとカメラが文字を認識し、これを翻訳することで語彙が学習できるというものだ。また、発音時の映像・音声を記録することで、お手本と比較して自分の口の形や発音が正しいかどうかを確認することもできる。

 北部紅河デルタ地方ナムディン省出身のアンさんが、ハノイ市にある郵便電気通信学院(Posts and Telecommunications Institute of Technology=PTIT)でソフトウェア工学を専攻していた頃は、プログラマーの仕事に関する悲観的な評判ばかりを耳にしていた。

 心は揺れ動き、勉強も手につかず、日に日に恐れる気持ちが大きくなり、自分が学んでいるプログラミングが退屈になっていった。代わりに、アンさんは他の学生たちに英語を教える家庭教師の仕事に熱中していた。

 英語を教えて4年目、アンさんは英語教育センターを開設することに決めた。しかも、場所はハノイ市から離れた北部紅河デルタ地方ニンビン省だった。そこはアンさんが生まれ育った場所でも、学校に通った場所でも、生活したことのある場所でもない。

 それでもニンビン省を選んだことについてアンさんはこう説明した。「当時、起業について色々な話を聞きました。英語教育なら勉強したい人がたくさんいるし、収入も良いのでセンターを立ち上げようと決めました」。

 「(世界複合遺産のチャンアンを擁する)ニンビン省は観光地で、観光客も多いはず。でも、多くの観光客を受け入れるのであれば、地元の人々も英語を学ぶ必要があります。そこで私は勉強を辞めて、ニンビン省での外国語学校ビジネスに集中することにしました」。

 しかし、「起業というのは始めてみると最初に考えていたほど簡単ではありませんでした。仕事の隅々まで理解していなかったし、何でもかんでも手を付けるというのも難しい。数か月経って、センターを閉めることにしました」とアンさん。

 ただ幸いなことに、英語センターを閉めてから学院に戻り、卒業論文を書いて無事にPTITを卒業することができた。そして将来について熟考し始めた。

 アンさんは、外国語センターを開けば数百人、数千人に英語を教えることができると思っていた。しかし、もしそれがアプリケーションだったら、教えられる数はもっとたくさん増える。思いついたらやるしかない。アンさんは、英語学習アプリの開発に集中することにした。その間、米国を含めていくつかの会社に勤めながら、6年かけてアプリを開発した。そして6つ目のアプリでアンさんはようやく成功を手にした。

 2018年のスタートアップコンテストで最優秀賞を受賞し、アンさんは「シャーク(Shark)」の名で知られる起業家のレ・ダン・コア氏をはじめとする投資家たちから支援を受けることができた。そして2018年10月にハノイ市を離れてホーチミン市に移り住み、テソを立ち上げた。アンさんは、急成長を遂げ競争力が高まる世界のIT市場においてもどんなテクノロジーソリューションも作り出すことができる、ベトナムの質の高いソフトウェアエンジニアを輩出したいのだと語る。

 わずか8か月で、アンさんの小さなビジネスは着実なステップを踏み出した。アンさんは大手テクノロジー企業から若くて優秀なソフトウェアエンジニア約30人を集めた。全ての時間を仕事に捧げ、一晩中皆で解決策を探したりもした。そして、アンさんは2019年末までにエンジニアの数を60人に増やすという目標を掲げ、日々挑戦を続けている。

※最終更新:2019年12月27日 10:21 JST 

[Tuoi Tre 06:13 24/07/2019, A]
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