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[特集]

「男になりたい」愛する女性とともに自分らしく生きる道

2020/01/05 05:51 JST更新

(C) vnexpress
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 ハノイ市に暮らすホアン・リン(本名:ドアン・フオン・ラン)さんは、幼い頃から自分は男の子だと意識し、「本当の自分として生きる」ために様々な方法を模索してきた。しかし、小さな変化を遂げるたび、両親や親戚からの激しい反対があった。

 両親の目に、リンさんは「美しくてかわいらしい女の子」として映っていた。しかし、リンさんは物心がついた頃から常に自分のことを「男の子」だと思っていた。学校に通うようになると、友人から「アイン(anh=年上の男性に対する人称)」と呼ばれ、とても心地良かった。

 幼い頃から男の子の服を好み、男の子のように闊歩する姿を見て、父方の祖母はいつも嘆いていた。学校からウエストの締まった女子用の制服が配られると、リンさんは校章だけを切り取り、市場で買っただぶだぶのシャツに貼り付けた。「そういう服を着ているほうが、自分らしく感じられたんです」とリンさんは語る。

 9年生(中学4年生=日本の中学3年生)のとき、リンさんは長かった髪の毛をばっさりと切り、ショートカットにした。そして、手首に初めて入れ墨をした。

 母親はそれを見てショックを受け、「まだどこかにも入れ墨があるなら、そこを突き刺すわ」と言い放った。一方の父親は、リンさんの顔を真っ直ぐ指さして「この『おなべ』が!」と叱った。リンさんは何も言わず、家を出た。

 ある晩、学校から遅く帰宅すると、父親が1人で静かに座り、お酒を飲みながら泣いていた。それを見て、リンさんの目から涙があふれ出した。

 11年生(高校2年生)のときに両親が離婚し、母親の代わりに叔母が世話をしてくれるようになった。叔母はリンさんの性別が「普通」と違うことに気づくと激怒し、リンさんを1日中ひざまずかせた。

 「その時はとても悲しかったですが、絶対に泣かないと決めていました。なぜなら男性は必要なときにしか泣かないからです」とリンさんは回想する。他人にあれこれ言われることは構わなかったが、家族に自分の境遇を蔑ろにされることには心が痛んだ。

 リンさんは、LGBTのコミュニティに参加するまで、そして本当の自分に誠実に生きなければならないのだと気づくまで、逃げ道のない、曲がりくねった人生を送ってきた。内にこもる代わりに、リンさんは持前の歌声を活かして学校の芸術活動に積極的に参加した。

 大学に入学すると、自分の収入のため、そして5歳年下の弟の養育費の足しにするため、アルバイトを始めた。大学2年生のとき、初めての彼女ができた。彼女を家に連れて帰った日、父親は一言もしゃべらず、さっさとご飯を食べてどこかに行ってしまった。

 父親に少しずつ慣れてもらうため、1週間続けて彼女を家に連れて帰り、ご飯を作り、掃除をした。そうこうするうちに父親も徐々に受け入れるようになり、「きっとたくさんの人が本当のお前を受け入れてくれるよ」と言ってくれた。

 1年少し前、リンさんはダオ・ホアン・ランさんと知り合った。2人はハノイ市ハイバーチュン区にあるカフェのアルバイト仲間だった。ランさんはバイセクシャルで、2人は愛し合うようになり、一緒に生きていこうと決めた。しかし、ランさんの家族から猛反対された。

 恋人の家族、特に母親を説得するため、リンさんはお金を貯めて性転換手術を受けることにした。「ずっと前から男性の身体になりたいと望み、自分の愛する女性の拠りどころになりたいと思っていました」とリンさん。

 リンさんの母親は「娘」の変化に何度となく怒り、泣き叫んでいたが、今では現実を受け入れ、一緒に性転換手術について調べてくれるまでになった。一度、リンさんと母親で母親の友人を訪ねたとき、「あなたのところの上の子は女の子だと思っていましたよ」と言われたリンさんの母親は「いいえ、今から来年にかけて、この子は『長男』になるわ」と答えた。

 2か月前、リンさんは恋人にドレスを贈った。2020年のテト(旧正月)明けにウェディングフォトを撮る予定だ。「いつの日か、ランさんがリンさんに飽きて別の男性と恋に落ちてしまうのではないかと怖くありませんか?」と聞かれると、リンさんは「その時にはもう自分は男性になっていますから」と自信を持って答えた。

 リンさんは今も毎日カフェで働き、経験を積んでいる。夢は自分の茶店を開くことだ。 

[VnExpress 09:02 24/12/2019, A]
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