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[特集]

女性が出稼ぎ、男性が子育てする村―別居婚の光と影

2020/02/23 05:12 JST更新

(C) vnexpress
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 北部紅河デルタ地方タイビン省ドンフン郡ドンタン村(xa Dong Tan, huyen Dong Hung)では、村から海外へ出稼ぎに行く人の4分の3が女性だ。女性は子供たちを夫に任せて故郷を離れる。

 ビンニン村落(thon Vinh Ninh)在住のレ・バン・ドゥックさん(男性・45歳)のところは、妻のヒエウさんが出稼ぎに行って6年余りになる。息子は8歳だ。「息子は幼稚園に行くといつもおやつの店の前に立ってわんわん泣いていました。当時はまったくお金がなかったので、息子を甘やかすために借金帳にサインするほどでした」とドゥックさん。

 妻のヒエウさんは、毎年のテト(旧正月)の時期に20日間ほど帰郷する。妻が自宅にいるとき、ドゥックさんはバイクで遊びに出掛ける。1年間『主夫』を務め上げた埋め合わせだ。

 普段は妻から子供の世話を任されているため、ドゥックさんは仕事に行く代わりに小学校3年生の息子と多くの時間を過ごしている。「私は1週間働けば1か月食べていけるのですが、子供の世話をしているので、妻に寄生している、などと言われることもあります」とため息をつく。

 一方、ブー・バン・アインさん(男性・52歳)は、朝一番に義姉の自宅へ行き、その日に父子で食べる食料を受け取る。アインさんの妻と村の何人かの女性たちは、誘い合って15年前以上前から台湾やマカオに出稼ぎに行っている。

 1年目、妻は毎月800万VND(約3万8300円)以上を仕送りしてきた。しかし翌年から、仕送りは妻の姉の銀行口座に振り込まれるようになった。理由は、アインさんにお金を渡すと、アインさんが無駄遣いをしたり、村の女の子をひっかけに行ったりするのではないかと妻が恐れたからだ。以来、アインさんは何か必要なものや毎日の食料を得るのに義姉の自宅へ行かなければならなくなった。

 アインさんの妻が出稼ぎに行ったのは、息子が5歳、娘が離乳して間もないころだった。妻の両親は遠くにいて、アインさんの生みの親は既に亡くなっていたため、アインさんは男手1つで炊事から2人の子供の風呂の世話までしていた。

 「昔、子供が泣くと抱っこして村のあちこちを歩き回っていました。何周かすると、自分と同じように子供を抱っこして歩き回っている男性がいて、お互い顔を見合わせて泣き笑いしたものです」とアインさんは語る。

 現在、ドンタン村では500人近い男性が同じような状況にある。2000年代初頭、ドゥックさん夫妻が一緒に暮らすようになったころ、2人は田んぼで稲を育てていたが、食べていくには十分でなかった。

 そこで妻のヒエウさんは8000万VND(約38万3000円)を借り、台湾に渡って働くことを決めた。3年後に帰国したが、故郷には田畑しかない。そこでヒエンさんは下の子が3歳になったとき、再び子供たちを夫に預けて出稼ぎに行くことにした。

 ヒエウさんが出稼ぎに行ったことで、自宅はおんぼろの家から広々とした2階建てに変わった。ドゥックさんと息子は、家にいても以前のように借金帳にサインすることなく、何でも好きなものを食べることができるようになった。

 一方、アインさんの妻は、息子をハノイ市の大学に通わせるため、毎月1000万VND(約4万8000円)近くを拠出している。

 1990年代初頭、ドンタム村在住のある2人が労働者派遣会社に勤めており、海外へ出稼ぎに行かないかと村で募集をかけた。最初は4~5人しか行かなかったが、出稼ぎに行った人たちやその家族の変化を目の当たりにし、ドンタン村の多くの住民が故郷を離れて人生を変えたいという夢を爆発させた。

 1990年代後半になると、女性が台湾に出稼ぎに行くというのがトレンドになった。ここ5年ほど、ドンタン村の女性は誘い合ってマカオにも行っている。統計によると、2019年はドンタン村から570人が海外へ派遣され、うち74%が女性だった。そのほとんどはマカオのカジノや台湾の家事手伝いの仕事だ。

 こうした海外への出稼ぎにより、村の姿が劇的に変わり、村には複数階建ての家屋が競うように建っていった。村や村落の役人も、貧しい人々や洪水の被害者に対する支援を求めるのにも苦労しなくなった。

 しかし、「全てのことには2つの側面があり、経済的な豊かさが弊害になることもあります」とドンタン村の幹部は話す。ドンタン村人民調査委員会のグエン・スアン・フオン副委員長によると、2019年には調停を要する家庭内トラブルが10件発生した。

 いずれも妻が海外へ出稼ぎに行っている家庭で、トラブルの原因は主に嫉妬や金銭問題だ。遠方へ仕事に行っている多くの女性が夫を信頼せず、夫でなく友人や親戚に仕送りする方法を選ぶ。

 しかし、妻たちの「イライラ」に正当性がないわけでもない。例えばビンニン村落では、妻が台湾へ出稼ぎに行っている間に夫は村の女性と親しくなり、2人で南部に移住してしまったというケースもある。他にも、妻が仕送りしたお金を夫は遊びに使い、ついには麻薬に手を出したというケースもある。

 結婚生活25年間のうち20年間は妻が出稼ぎに行っている、という夫婦も多い。家庭の幸せの崩壊を危惧し、フオン副委員長は自分の子供たちが故郷を離れる際は「2人一緒に」行かせた。フオン副委員長の息子3人はいずれも台湾で働いている、または働いたことがあるが、いずれも夫婦で行った。その代わり、フオンさん夫妻は故郷に残された6人の孫たちの面倒を見ることになった。

 「孫たちのために1日2食を用意するだけでもう他のことをする時間はとれませんでした。一番大変なのは孫たちが大暴れする休日でした」とフオン副委員長は顔をしかめた。しかし、子供たちが出稼ぎに行ったおかげで、2012年には2階建ての家が2つも建った。

 「今はもう末っ子のところの孫2人の面倒を見るだけです。上の2人はベトナムに帰国しました。何はともあれ、辞め時さえ知っていれば、海外へ出稼ぎに行くのは良いことです」とフオン副委員長は語った。 

[VnExpress 01:41 07/02/2020, A]
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