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[特集]

オンライン学習のため4G電波探し道路沿いに「書斎」を建築したモン族の学生

2020/05/03 05:55 JST更新

(C) vnexpress
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 少数民族モン族のラウ・ミー・サーさん(男性・21歳)は、東北部地方ハザン省ドンバン郡スンチャイ村スンクア地区(ban Sung Cua, xa Sung Trai, huyen Dong Van)を走る道路の間に4Gの電波が入るポイントがあることに気付き、その場に小屋を建てて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う休校中のオンライン学習の準備を整えた。

 広さ15m2の小屋は、トウモロコシの丘の上に木材を組み、屋根はビニールシートで覆った。サーさんはポケットから携帯電話を取り出すと、頭の上で何度か振り、4Gの電波が届いているのを見て微笑んだ。

 「これでオンライン学習の場所ができました」とサーさんは言い、新しい電球をコンセントにつなぎ、小屋の中を照らした。これが、ハノイ市の国家行政学院で公共管理を学ぶサーさんと友人がオンライン学習のために村の道路沿いに建てた「書斎」だ。

 サーさんの学校はテト(旧正月)明けから新型コロナウイルス感染症の影響で休校となり、サーさんはハザン市から約120km離れたスンクア地区の実家に帰った。学校がオンラインで授業を行うことになったものの、サーさんはインターネット接続の問題でオンライン学習を見送らざるを得ないと思っていた。

 理由は、スンクア地区にはインターネットに接続できるポイントが1か所しかなく、しかもその場所は自宅から1kmも離れている上、中国からの出稼ぎ労働者の集中隔離エリアとなっていたためだ。サーさんは自宅の裏の高い山に登って電波を拾おうとしたが、断続的にしか接続できなかった。

 「以前たまたまこの道路を通った時に4Gに繋がることがわかったので、長期的に学習ができるよう、ここに小屋を建てることを決意しました。感染症の流行がいつ終息するかわかりませんから」とサーさん。

 サーさんは国家行政学院で学ぶため3年前にハノイ市に移った。サーさんの唯一の夢は、村の役人になることだ。サーさんの一家はトウモロコシ畑で生計を立てており、時には十分なお米もないほどだったが、幼い頃からの夢をあきらめることはなかった。

 「学校に通って役人になれば、雇われ労働者として働くこともなく、他の人を助けることもできます」。サーさんの母親は少数民族寄宿学校の12年生(高校3年生)のときに、中退を余儀なくされた。また、同い年の友人たちをみると、子供が2~3人いたりする。しかし、サーさんは早い時期に恋愛関係になっても将来に有益でないとの考えから、これまでに誰かを好きになったことがない。

 大学の入学試験に合格し、サーさんはスンクア地区の中で首都の大学に通う唯一の人となった。住民はいずれも皆モン族で、キン族のベトナム語は流ちょうに話せない。両親や住民たちからは、サーさんが学校に通うのはイコール役人になるためだと理解されている。

 「村の副主席は他の人をよく助け、皆から好かれています。両親も、役人になれば副主席のような人になれると考えていて、皆からも喜ばれています」とサーさんは語る。

 ハノイ市の学校に通い始めて1年目、サーさんは生活費を稼ぐため、ポーターからペンキ塗りまであらゆる仕事をした。運転免許証を取得すると、実家の唯一の牛を売ってバイクを購入し、ハノイ市で配車アプリのバイクタクシー運転手を始めた。

 午前は学校に行き、午後はバイクタクシー運転手をし、学費は免除され、サーさんは自分で生計を立てられるようになった。ハノイ市で学校に通う3年間、一度も両親に仕送りを頼んだことはない。

 4Gに繋がる小屋の話に戻ると、サーさんは何度も調査を行い、ようやく近隣の村から飛んでくる4G電波が拾える場所を見つけることができた。サーさんはそのトウモロコシ畑の持ち主の自宅へ行き、小屋を建てたいと頼んだ。

 「(小屋を建てても)トウモロコシは抜きません。小屋の下で育つようにします」と約束し、畑の持ち主が同意すると、サーさんは30万VND(約1400円)でワイヤーやネジ、ビニールシートなどを購入した。

 それからユーチューブ(YouTube)で小屋の設置の方法を学んだ。小屋を建てる場所は道路の路面から1.2m低く、その下には石とトウモロコシ畑がある。直径15cmの木の棒12本と、木の板8枚をもらい、まずトウモロコシ畑に4本の柱を立て、根本を石で囲んで固めた。残りの木の棒8本は小屋の枠に使い、ワイヤーとネジでしっかりと固定した。

 友人の手を借りながら、2枚のビニールシートで屋根を覆うと、小屋の形ができた。電気を引くため、200m離れた自宅からコードを伸ばした。コードの一部は人に借り、一部は購入した。

 こうして面積約15m2の小屋が完成した。サーさんは「6~7人は寝られますよ」と自信満々だ。

 その日の夜、早速サーさんと友人は質を試すためできたばかりの小屋で寝てみた。夜中に大雨が降ったが、2枚のビニールシートからは雨漏りがし、中にいると濡れてしまった。翌日、サーさんは再び市場に出向き、ビニールシートをもう1枚購入して屋根を覆った。

 「今では中にいても、大雨も嵐も心配ありませんよ」。ただしサーさんいわく、この小屋はあくまでも勉強する時のためのものであり、残りの時間は自宅に帰り、両親の畑を手伝っているのだという。

 この道路沿いの小屋は、多くの人々から注目を集めている。「サー、何をしているんだ?トウモロコシでも置いておくのか?」と色々な人がモン族の言葉で尋ねるが、サーさんは「勉強のためです」と答える。それでも人々は、なぜ勉強をするためだけに小屋まで建てなければならないのかと不思議がった。

 モン族の青年がオンライン学習のために小屋を建てたという話は、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)でも関心を集め、数百件もシェアされた。サーさんは、そう遠くないうちにスンクア村落のような高地でもWi-Fiが繋がり、こうした小屋を建てなくてもいいようになればと期待を寄せた。

 小屋ができた後、サーさんは公共管理クラスの50人の学生とともに最初のオンラインクラスに参加した。机は古い木の板で作ったものだ。そして、他の学生がノートパソコンを机に置いてクラスに参加するのと違い、サーさんはやっと拾った4Gに繋がった携帯電話を握りしめていた。 

[VnExpress 06:01 07/04/2020, A]
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