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[特集]

雌雄見分ける「ひよこ鑑定士」、高収入も人手不足

2020/05/24 05:16 JST更新

(C) danviet
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 養鶏場のニワトリのヒナ(ヒヨコ)の性別を鑑別する需要が日に日に高まっているが、総排出腔(直腸・排尿口・生殖口を兼ねる器官)で雌と雄を見分けられる人材がごくわずかしかいないため、この仕事は常に人手不足だ。

 ハノイ市ホアイドゥック郡ドゥックザン村在住のチン・ティ・メンさん(女性)は、まだ外が暗いうちに家を出て、早朝5時から恒温室で仕事を始める。

 メンさんの仕事場である恒温室は、住宅街から畑に向かって約500mのところにある。近付くほどにひっきりなしの機械音やヒヨコの鳴き声が大きく聞こえてきて、ヒヨコ特有のにおいが漂ってくる。

 恒温室に入ると、メンさんの「仕事机」が左側に整然と置かれている。手元には明るい電気スタンドとヒヨコの糞を入れるプラスチックの容器が、机の周りには合わせて1万羽ものヒヨコが入ったトレイがたくさん置いてある。

 メンさんは服を着替え、マスクと帽子を身に着けると、総排出腔を目視してヒヨコの性別を分け始める。メンさんの鑑別は熟練が必要な総排出腔による肛門鑑別法で、肛門をわずかに開けて体内にある生殖器官を目視し、雌雄の違いを区別している。

 まず、左手でヒヨコを持ち上げ、腹部をそっと押して糞をプラスチック容器に入れる。そして右手で肛門を軽く押し開けて総排出腔を露出し、両目で見て雌か雄かを鑑別する。1羽の鑑別はほんの数秒で終わる。

 「もし雄鶏であれば、総排出腔に針のような小さな突起があります。もし雌鶏であれば平らです。鑑別したら、雄鶏は右に、雌鶏は左に分けておきます。言うのは簡単ですが、正しく見分けられるようになるまでに私は5か月かかりました。技術を習得するための受講料は3000万VND(約14万円)以上でした」とメンさんは語る。

 手先の器用さ、両目の高度な集中力、迅速な判断により、1日で6000~7000羽のヒヨコを鑑別し、150万~200万VND(約7000~9300円)の収入を得ている。

 「小さい子供がいて家事をしながら子供の世話もしているので、仕事は不定期にしかできません。そのため月にどのくらい稼げるかわかりませんが、村には定期的にこの仕事をしている人がいて、その人は月に数千万VND(1000万VND=約4万6500円)稼いでいるそうです」。

 メンさんと同じくドゥックザン村在住のグエン・ティ・フエンさん(女性)も、ここ5年ほどヒヨコの鑑別の仕事をしており、家族の毎月の主な収入源となっている。4つの恒温室でヒヨコを次々と受け入れるため、フエンさんの仕事がなくなることはない。しかし、家族や子供のための時間、休憩時間を確保するため、月に4~7日の休日を作る。

 フエンさんはその日に分けたヒヨコの数と仕事の効率に応じて報酬を受け取る。ひよこ鑑定士の1日あたりの収入は、技術と扱う数によって100万~200万VND(約4650~9300円)になる。

 「顧客が鶏肉用と鶏卵用のいずれの鶏を購入したいかに合わせて、雌と雄を分けています。報酬は種類にもよりますが、1羽につき150~600VND(約0.7~2.8円)です。収入は、1日で平均およそ100万VND(約4650円)、一番多いときで200万VND(約9300円)になります」とフエンさんは語る。

 高収入を得られるが、現在のところこの仕事について知っている人はほとんどいない。特に、肛門鑑別法で雌雄を見分けられる人はとても希少だ。方法は簡単なように見えるが、勉強すれば誰でもできるようになるわけではない。そのため、需要も収入も高いにもかかわらず、人手不足が続いている。

 フエンさんによると、高収入と聞いて多くの人が勉強しようとするが、コースの受講料は3000万~6000万VND(約14万~28万円)、期間は3~6か月だ。受講料に加えて、生徒は鑑別の練習をするためのヒヨコを自費で購入しなければならない。受講料はコース登録後すぐに徴収され、途中で辞めても返金されない。

 仕事では目を酷使するだけでなく、手をすばやく動かし、1か所に長時間座っていなければならず、さらに手はヒヨコの糞で汚れてしまう。

 「この仕事はとても大変です。同じ姿勢で5~6時間も座っていなければならず、腰は痛むし目は疲れます。恒温室は常に暑いですし、ヒヨコの羽が舞い、糞の臭いが漂います。特に注意深さと手先の素早さが求められるので、多くの人は耐えることができません」とフエンさん。

 また、この仕事の収入について先のメンさんは、他の人にとっては1日100万~200万VND(約4650~9300円)というと多く見えるかもしれないが、これだけの収入を得るためには1秒1秒努力し頑張らなければならないのだと語る。

 「暑い天候のときは早朝、場合によっては深夜から仕事をし、分けたヒヨコを翌朝に顧客に引き渡せるようにします。もし、この仕事が楽で高収入であればこのような人手不足にはなりませんよ」とフエンさんは付け加えた。 

[Dan Viet 04:55 22/05/2020, A]
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