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[特集]

ショービズ界で生きる、ベトナムのLGBTとロトショー

2020/07/05 05:10 JST更新

(C) zingnews
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 ベトナムにおけるLGBTの人々は、「ロトショー(Lo To Show)」をはじめとするエンターテインメント、ショー・ビジネスの分野で生計を立てることで、自らの在り方を探し求めてきた。

 ニャー・ビーさん(26歳)は、南部メコンデルタ地方ティエンザン省の貧しい田舎出身のトランスジェンダーだ。生まれ故郷では子供のころから嘲笑や偏見に苦しんでいた。それでも今は、悲しい過去の記憶も薄れつつある。最近は、ベトナムでもLGBTに対する姿勢や意識がポジティブに変わってきている。

 ビーさんは今や、ベトナムのショービズ界で活躍するLGBTの1人で、伝統的なアオザイ、またはミニ丈のドレスとハイヒールを身に着けて、自信に満ち溢れた様子でステージに上がる。

 「トップの仕事に就いているLGBTの人は多くありませんし、学校でいじめを受けたりして、たいてい大学も卒業していません。卒業証書をもらっても、私は自分が劣っていると感じ、オフィスでの仕事には応募しませんでした」とビーさんは悲しげに言った。

 「それで、お金を稼ぐためにこの道に進みました。この仕事は、ステージに立つときはいつでも1人の女性としていられるので、本当に心地よく、幸せです」。ビーさんは、家族からのプレッシャーを感じ、当時の彼女との間にできた子供がいる。そのため、近所の人たちはビーさんのことを男性として見ている。

 昼間は普通の男性のように生活し、ステージに立つときだけ女性の格好をする。それでも心は第3の性で、男性が好きで、LBGTコミュニティの一員だ。家族も知っていて、悲しみながらもビーさんのこの生き方に同意し、反対はしていない。

 現在、ビーさんは「サイゴンタントイ(Sai Gon Tan Thoi=新時代のサイゴン)」という歌舞団に所属し、週に3回、ビンゴゲームと歌や踊りを組み合わせたロトショーに出演している。

 ロトショーはフランス植民地時代からあるビンゴゲームのような娯楽で、特にベトナム南部で人気がある。ロトショーでは、美しく着飾ったビーさんのような演者がステージで歌や踊りを披露しながら、観客参加型のビンゴゲームを進行する。

 南部の農村部の人々にとって、1990年代まではこうしたショーは生活に欠かせないものだったが、徐々に衰退していった。しかし、2017年にサイゴンタントイが有名になると、ロトショーとともに過ごすナイトライフの人気も復活した。

 2014年には、主に南部のトランスジェンダーの人々から成る歌舞団の旅を追ったドキュメンタリー映画「マダム・フン(英題:Madam Phung、越題:Chuyen Di Cuoi Cung Cua Chi Phung)」が大きな成功を収めた。

 この映画の影響力が引き金となって、サイゴンタントイや同業者も注目を集め、ロトショーに毎晩何百人もの観客が訪れるようになった。

 「私たちは汗と涙、時に血を流してパフォーマンスしています。楽しみを売るというだけでなく、これは1つの職業なのだということを皆さんに知ってもらいたいんです」と、ラー・キム・クエンさん(39歳)は語る。

 クエンさんは女性として生きるトランスジェンダーで、「ロトの女王」と呼ばれている。クエンさんは10代のころからサイゴンタントイと一緒にショーに出演してきた。「私は、自分自身を養える十分なお金を稼ぎ、母の面倒も見ることができているので、人生に満足しています」。

 ベトナムは、LGBTに関して比較的進歩的な国だとされている。しかし学校では、いまだに性的指向や性同一性について誤った情報が一般的となっている。米国の非政府組織(NGO)であるヒューマン・ライツ・ウォッチ(Human Rights Watch)が今年発表したレポートによると、ベトナムの一部の子供は教師や両親から「同性愛は精神疾患だ」と教えられているという。

 ベトナムのNGOであるアイシー(iSEE)でLGBTの権利に関するプログラムを主導するブオン・カー・フォンさんによると、第3の性を持つコミュニティの存在を一般に広めることは、開放性に対する人々の認識にプラスの影響を与えることができる一方、これまでの成功はまだ最初の段階に過ぎず、十分ではないと語る。

 「おそらく、一般の人々のほとんどは、トランスジェンダーの人がバラエティ番組などに登場するのを見て、それを受け入れるでしょう。でもそれは、トランスジェンダーの人々がより良い仕事に就く機会を得ることを意味するものではありません」。

 フォンさんは、LGBTが人生で受ける不利益についても指摘する。「もし我々が受け入れるために心を開かなければ、トランスジェンダーはいつまでもエンターテイナーでいるしかないでしょう」。

 ステージの上でだけ女性らしくいられるビーさんだが、ビーさんにとって最も重要なのは、息子に尊敬される人になることだという。「誰かが私の悪口を言ったとしても、彼には恐れずに、誇りを持って『僕のお父さんはトランスジェンダーだ』と答えてほしいです。そして、彼が自分の才能で高く羽ばたいてほしいと願っています」と、ビーさんは語った。 

[Zing 06:35 01/07/2020 / South China Morning Post, A]
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