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[特集]

出会いは交通違反、「違反者と警察官」の関係から始まった夫婦の恋物語

2021/09/19 10:31 JST更新

(C) dantri
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 今は一緒に暮らしているものの、初めて出会った日のことを思い出すと、夫婦は今でも夢のようだと感じている。

 「交通違反をした女性が交通警察官に罰せられ、後に2人がカップルになるというシチュエーションの映画をよく観ていたのですが、まさか実生活で自分がこういった話の主人公になる日を迎えるとは思ってもいませんでした」と、ラン・アインさんは笑いながら語った。

 西北部地方イエンバイ省出身で1999年生まれのラン・アインさんと夫のグエン・バン・タンさんは、他のカップルとは全く違う出会い方をした。ラン・アインさんは今でも2人が出会った日付と時刻まで正確に覚えているという。

 「私が交通違反をして、交通警察官の彼に取り締まられたんです。だから、出会った時刻も調書に記録されていて…。今でもその調書を記念に保管しています」。

 2018年6月29日、ラン・アインさんはバイクの運転免許証の試験を受けるため、自分でバイクを運転して出かけた。無事試験に合格して家に帰る途中、交通警察官に止められ、運転免許証不携帯で罰せられることになった。ラン・アインさんはその日試験に合格したことを伝えたが、それでも違反になるのだと言われた。

 自身が交通違反を犯したことを理解したラン・アインさんは、違反調書に署名し、バイクも1週間没収されることになった。この時、ラン・アインさんの調書を作成したのが、現在の夫であるタンさんだった。

 初めてタンさんに会ったときの印象をラン・アインさんに聞くと、「初めて会った時の状況はとても悲惨で、とても緊迫していました。彼の印象は、真面目な顔つきで気難しい警察官の『おじさん』という感じ。あの日はとても暑かったので、皆の表情にイライラがにじみ出ていたんです」と教えてくれた。

 一方、タンさんが感じた初対面での妻の印象はというと、もっと特別だ。「処罰を受ければ自身の生活にも影響が生じますが、彼女の行動はとても適切で、優しさと礼儀正しさも持ち合わせていました。調書に署名するとすぐに父親に電話をかけ、迎えに来て欲しいと頼んでいました」とタンさん。

 その後、タンさんの方から積極的にラン・アインさんにSMSを送り、互いに日常的に連絡を取り合うようになった。そして、2人の間にはいつからか愛情が芽生えていた。「いつから2人がお互いに恋愛感情を抱くようになったのか、正確にはわかりません。どちらも告白はせず、ただ話をしているうちに相性の良さを感じ、自然に恋愛感情が生まれたんです」とラン・アインさんは語る。

 運転免許証を取得すると、ラン・アインさんは仕事のため西北部地方ラオカイ省に引っ越した。一方、タンさんも専門的な勉強のためハノイ市に行かなければならなかった。遠距離にもかかわらず、ラン・アインさんに会うため、タンさんは毎週長距離バスに乗ってハノイ市からラオカイ省まで出かけた。

 「結婚した後に彼の同僚たちから聞かされたのですが、彼はラオカイ省まで私を訪ねるため、毎月給料を前払いしてもらっていたんだそうです。私に会いに来るときは、交通費から宿泊費、飲食費まで全て彼が自分で払っていました。後からそのことを知り、とても気の毒に思いました」。

 ラン・アインさんが仕事を始めるためラオカイ省に移った日、タンさんは自ら引っ越しを手伝った。細かなことまで気遣ってくれるタンさんに、ラン・アインさんは心を動かされ、守られているような、安心した気持ちになった。

 1年間の遠距離恋愛の末、ラン・アインさんはラオカイ省からイエンバイ省に戻る決心をした。同時にタンさんもハノイ市での勉強を終えた。2人はさらに1年間の交際を続け、ついに夫婦となり、一緒に暮らし始めた。

 結婚して1年が経ち、子供も授かったが、特殊な仕事の都合で2人は今でも離れている時間が多い。現在、タンさんは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の一環として交通の検問業務に従事しており、この1か月間、夫妻は会うことができていない。

 「子供もまだ小さく、自分も仕事でなかなか家に帰ることができない今の状況は私たち夫婦にとってとても大変です。妻には、『新型コロナが収束してあなたが家に帰っても、子供は父親の顔を忘れてしまっているかもね』とからかわれています。家族と地域社会を守るため、警察官は全員検問所で寝泊まりしなければならないので、家にも帰れず、家族に会うこともできないんです」。

 「幸い、今は簡単に電話で連絡を取り合うことができます。私の宿泊施設から家までわずか3kmの距離ですが、それでも帰ることはできません。だから、いつも電話で『国民のために仕事をしているけれど、その国民の中には君と子供も含まれている。だから安心して。収束したら帰るから』と妻を励ましているんです」とタンさんは苦しそうに胸の内を語った。

 ラン・アインさんはいつも夫を理解し、夫が安心して仕事ができるよう後ろからしっかりサポートしている。「今の私の望みは、夫と部隊の皆さんが元気に過ごし、健康でいてくれることです。私も子供も、夫をとても誇りに思っています」。 

[Dan Tri 14:45 10/08/2021, A]
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