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[特集]

父親は麻薬中毒に暴力・母親は家出…幼い弟を育てる小学4年生の少年

2022/05/15 10:40 JST更新

(C) vnexpress
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 西北部地方ソンラ省に住む小学4年生のザン・アー・ソン君は、麻薬中毒の父親から暴力を受け、母親が家出する中で、これまで3年間にわたり母親の帰りを待ちながら弟の世話を続けている。

 ソン君は2019年末のある日の朝に、母親から部屋の隅で言われた言葉を今でも鮮明に覚えている。「家でもしお父さんに殴られたら、弟を連れて逃げなさい。お母さんは仕事に行ってお金を稼いでから、2人を迎えに来るから」。

 ソン君は、母親は数日で戻ってくると思っていたが、それから3年近く経った現在も、まだ母親は迎えに来ていない。

 バンホー郡ロンルオン村ルンサー地域には、ソン君の他にも麻薬中毒の問題を抱えている家庭はあるが、ソン君のように幼いうちから両親の代わりに兄弟の面倒を見なければいけない子供は他にいない。

 家庭は元々貧しく、母親が家を出る前の家族は数百m2の広さの田畑と果樹に頼る生活を送っていた。かつての父親は妻子を愛し、真面目に仕事をしていたが、麻薬に手を出してから別人のように人が変わってしまった。禁断症状が出てお金が手に入らないと、両親や子供すらも引きずって暴力を振るうようになった。

 ソン君と弟のザン・アー・ヌー君が通う小学校の保護者会会長を務めるザン・アー・パオさん(男性・28歳)が、ソン君の家族の状況について教えてくれた。「ソン君はまだ幼いのに、一生懸命に弟の面倒を見ています。家庭は貧しく、麻薬中毒の父親が子供たちに暴力を振るうので村の誰もが痛ましく思っています。改心して子供たちの面倒を見るよう何度も父親を説得しているのですが、うまくいっていません」。

 母親が家出してから兄弟は互いに助け合って生きているが、2人を心配する村人や教師が時々食べ物や衣服を与えて支援している。

 兄弟が通う小学校のクアット・ティ・ホア校長によると、全校生徒877人のうち14人が孤児で、34人が親の麻薬中毒や収監、家出などにより困難な家庭環境にあるという。「その中でも、ソン君兄弟の家庭環境は特別です」とホア校長は語る。

 妻が出て行ってから麻薬を買うためのお金を貸してくれる人がいなくなり、ソン君の父親は禁断症状が出るたびに狂ったように暴れた。家中の物は破壊され、田畑は全て売られ、父親の怒りの矛先は2人の子供たちに向かった。

 ソン君は思い出せないほど何度も身体にあざができるまで父親に殴られ、走って逃げ出したこともある。そのまま家に帰る気にもならず、弟を連れて村中をさまよい、疲れたらその場で休み、朝が来て学校に行けるのを待ったという。父親のことに言及するとソン君はガタガタと震え、目を赤くして「お母さんと一緒にいたい」と泣き出した。

 2021年9月、ソン君の担任のロー・バン・ゴアンさん(男性・29歳)が、ソン君兄弟を自分の家で世話すると学校に申し出た。それからはソン君もヌー君も笑顔が増え、2人の体調と学力も著しく改善した。

 放課後になると2人は先生の家で料理や掃除を手伝い、その後は教室で授業の復習をした。ソン君の学力は平均レベルだが、勉強熱心で、クラスで出される宿題もいつも頑張っているのだとゴアン先生が教えてくれた。

 先生たちの負担になることを懸念し、2か月後には2人の叔父が迎えに来て、2人は叔父の家で暮らすことになった。2人の父親は今年初めに麻薬更生施設に連れて行かれ、一家の木造の家は一時的に空き家になったが、暴力を受けていたことを思い出してしまうその家に、2人は帰りたがらなかった。

 叔父の家で暮らすようになっても、ソン君は朝早く起きて朝食を準備し、弟を学校まで連れて行き、そして自分の授業に参加するという習慣を続けている。2人の母親は時々子供たちに電話をかけ、頑張って勉強するように励まし、なるべく早く迎えに行くからと約束するが、母親自身いつその約束を果たすことができるのかはまだわからない。

 3月のある午後、授業の終わりを知らせる太鼓の音が鳴るとソン君は弟がいる1Bクラスまで走り、一緒に歩いて叔父の家まで帰った。家に着くと弟を風呂に入れ、朝に炊いた冷えたご飯をお碗によそい、数粒の塩を振りかけて弟に渡した。「ご飯はこんな感じだけど、それでもお父さんと暮らしていたときよりはずっと美味しいです」とソン君は胸の内を明かした。

 将来について尋ねると、ソン君は弟の手本になれるよう一生懸命勉強して優秀な成績を収め、ゴアン先生のような教師になることが夢なのだと話した。「学校に行って勉強したい。お母さんと一緒に暮らしたい。僕を助けてくれた先生たちみたいに、苦しい環境にある子供たちを助けたい。そして働いてお金を稼ぎたいです」と、ソン君は語った。 

[VnExpress 06:00 14/03/2022, A]
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