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[特集]

昔懐かしのキャンディを売って30年、片足の退役軍人

2022/12/04 10:03 JST更新

(C) thanhnien
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 古い自転車に「ケオケオ(keo keo)」と呼ばれるピーナッツキャンディの入った箱を載せ、チリンチリンとベルの音を鳴らしながら自転車を漕ぐ60歳の退役軍人の姿が、世代を超えて多くの人々の子供時代の記憶を呼び起こしている。

 北中部地方クアンビン省ドンホイ市で、自転車でキャンディを売っている軍服姿の男性を知らない人はほぼいない。男性はこの自転車とともに、30年以上にわたりドンホイ市内のあらゆる路地や学校を巡ってきた。

 このキャンディ売りの男性は、クアンビン省クアンニン郡ボーニン村出身の退役軍人、ファム・バン・ルオンさん(58歳)だ。ルオンさんは1982年に入隊し、5年後に除隊して南中部沿岸地方ニントゥアン省ファンラン・タップチャム町(現在のファンラン・タップチャム市)の農場で働いていたところ、不運にも地雷を踏んでしまい、若くして片足を失った。

 「片足を失った後、治療のために故郷に戻り、回復してからはクアンニン郡のクアンハウ船着場で自転車修理の店を開きました。1990年に軍隊時代の友人と偶然再会したのですが、彼はフエ(北中部地方トゥアティエン・フエ省)に住んでいて、ピーナッツキャンディやアイスキャンディを作って売っているというので、私も興味本位で習ってみることにしたんです」とルオンさんは振り返る。

 友人から教わって1週間で、ルオンさんはピーナッツキャンディとアイスキャンディの作り方をマスターした。それから毎年、夏にはアイスキャンディを作り、冬には火を焚いてピーナッツキャンディを作っていたが、アイスキャンディの人気がなくなってくると、ピーナッツキャンディの通年販売に切り替えた。

 ルオンさんは、多くの人にとって昔懐かしの味であるこのキャンディを30年以上も売り続けているが、クアンビン省で今もなおこの甘いお菓子を売っているのはおそらくルオンさんだけだろう。

 片足しかないルオンさんは、失った方の足に義足を着け、雨や嵐の日を除いて30年以上毎日、自転車でドンホイ市のあらゆる路地や学校、海辺のレストランなどに出向き、夜の9時から10時ごろにようやく帰宅する日々を続けている。

 ドンホイ市ナムリー街区に住むレ・ティ・ハーさん(女性・39歳)は常連客で、ほぼ毎週、ルオンさんが自転車で路地までキャンディを売りに来るのを待っているという。ハーさんはドンホイ市の小学校と中学校を卒業しており、ルオンさんのキャンディは幼少期の思い出の味でもある。

 「大人になってもルオンさんのキャンディが食べたくなるんです。私だけでなく友人たちも同じで、今でもルオンさんの甘くて素朴なキャンディの味が恋しくなります」とハーさん。

 キャンディを売り始めた当初、1本の値段はたった1~2ハオ(hao、1VND=10ハオ)で、朝の4時に起きてピーナッツを煎り、砂糖を煮詰めるという労力に見合う利益ではなかった。それでも、このお菓子が徐々に姿を消し、売る人も少なくなっていることを知っていたルオンさんは、伝統を守るため、そして自身の生活のために粘り強くキャンディを作り続けた。

 ルオンさんによると、現在の値段は1本5000VND(約27.6円)で、最近の子どもたちはこのキャンディのことをあまり知らないという。そのため、ルオンさんのキャンディを買いに来る子どもの客は日に日に減っているが、一方でハーさんのような昔からの馴染み客が以前よりもたくさん買うようになり、売上に貢献している。

 さらにルオンさんは、ニャットレビーチ沿いのレストランや飲み屋にも自転車を走らせ、観光客にもキャンディを売っている。平均して毎日4kgのキャンディを売って60万~80万VND(約3300~4400円)の売り上げになり、このうち約半分を材料費に充てている。

 この収入での生活は少し厳しいものの、それでもルオンさんはキャンディを売り続け、3人の息子を学校に通わせて育て上げた。そして今は、2人の幼い孫の世話をするために仕事を続けている。 

[Thanh Nien 13:50 08/11/2022, A]
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