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[特集]

材料は本物の葉っぱだけ、環境に優しいお皿で起業した女性

2023/06/25 10:30 JST更新

(C) phunuvietnam
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 自然を愛するブー・ティ・トゥー・ハーさん(女性・42歳)は、本物の葉っぱだけを使った環境に優しいお皿を作って販売している。現在、お皿の生産量は国内外での需要に追い付かないほどの人気となっている。

 美しい自然がプラスチックや発泡スチロールの容器によって日に日に汚されていく状況に気づいたことがきっかけで、ハーさんは友人のグエン・バン・トゥエンさん(男性)と共に、使い捨てのプラスチック皿の代替となるような、シーグレープ(ハマベブドウ)の葉を圧縮したお皿の製造販売会社を立ち上げた。

 ハーさんは、自然への愛から南中部沿岸地方フーイエン省に移り住み、「10億の木」というプロジェクトを立ち上げた。また、ハーさんはビーチ周辺のごみ拾いの集まりにも熱心に参加していた。

 フーイエン省で、美しいビーチがプラスチックや発泡スチロールの容器で汚されていることを知ったハーさん。地元の人々は生分解性ではないごみであっても、何の対策も講じず、何の気なしに地面に捨てたり埋めたりしていた。

 これがきっかけとなり、ハーさんはエンジニアのトゥエンさんが発明した、再利用可能で使い捨てのプラスチック皿に代替できるシーグレープの葉のお皿のプロジェクトにすぐに興味を持った。

 シーグレープの葉は厚みがあり丈夫で、また葉の表面には油分を含む層があり撥水性と耐久性に優れていることから、ハーさんとトゥアンさんは何度も試作を重ねた上でこの葉を主原料として使うことに決めた。

 シーグレープの葉の最大の特徴は丈夫でありながら柔らかい点だ。ハスの葉やバナナの葉を圧縮してお皿にするには何枚もの葉が必要になり、またモモタマナの葉はパリパリしていて押し葉にすることができず、丈夫で柔らかいシーグレープの葉が最適だった。さらにシーグレープの葉には毒性がなく、実は食べることもできるというのも利点だった。

 ハーさんは実際に製作していく中で、木から落ちたばかりの枯れ葉も利用できることに気づいた。葉は木から落ちてもまだ柔らかく丈夫で、油分を含む層のおかげで圧縮しても美しい艶やかさを保つことができる。

 さらに、フーイエン省のシーグレープの木は海風を吸収しているため、圧縮した時に独特な塩の模様が形成される。葉が違えば仕上がりも異なり、1つとして同じ模様のお皿はなく、それがこのお皿に独自性をもたらす。ハーさんは、葉っぱのお皿は環境を保護するだけでなく、自然そのものの循環のような、環境からの贈り物でもあると考えている。

 葉っぱのお皿は紙皿やプラスチック皿と違って何度でも使用することができ、使用後は消毒をしてからジッパー付き保存袋に入れて冷蔵庫に保管することで、適切な湿度での保管が可能となる。

 製造過程では一切の化学物質を使わないため、保管と再利用にも安全だ。ただ1つの注意点は、お皿を濡らさないように気を付けること。もし濡らしてしまうと圧縮した葉がふやけて普通の葉っぱに戻ってしまう。そのため、お皿に入れるのはナッツやムット(mut=果物などの砂糖菓子)など、乾燥したものが適している。

 トゥエンさんとハーさんの葉っぱのお皿はヨーロッパの多くの国に輸出され、もうじき米国に3万枚が輸出される予定だ。しかしながら、輸出については問題もある。

 ハーさんは2021年に圧縮したお皿を製造する機械を注文し、2022年6月にようやく機械を設置・稼働することができた。長い時間がかかったものの、それ自体は問題ではなかった。ここで言及しなければならない問題は、原材料であるシーグレープの葉についてだ。

 ハーさんによると、以前フーイエン省には多くのシーグレープの木があり、収穫できる葉の量も充分だった。しかし、ここ数年はシーグレープの木を買いに来る集団が現れ、葉の供給源が少なくなってしまった。

 そのため、現在お皿は国内市場に供給するのみで、海外輸出は制限せざるを得ない状況にある。将来的に生産量を増やすのであれば、今からシーグレープの木を植えて、収穫まで2~5年待つ必要があるという。

 さらに、このお皿はほぼ手作業で作るため、人件費に一番コストがかかる。地元の人々が葉を選別し、洗い、乾燥させる工程をすべて手作業で行っており、機械は葉の圧縮段階を担っているに過ぎない。

 また、葉によっては機械も手作業で調整する必要がある。例えば葉が乾燥し過ぎている場合は、葉が割れてしまわないように作業者が機械を適切な温度と湿度に調整しなければならない。ハーさんが自身の従業員を職人に例えるのはそのためだ。

 これらの理由により、葉を圧縮したお皿の価格は、使い捨てのプラスチック皿とは比べものにならない。また同業でもそれぞれかかる費用が大きく異なる。ハーさんによると、こうした葉っぱのお皿で起業した若者は何人かいるが、原材料である葉の供給源を見つけることができず、また労働力も最適化することができず、お皿の販売価格が大幅に上昇してしまっているという。

 例えば、ハーさんが製造するお皿の国内での小売価格は全サイズ1枚当たり2300~2500VND(約13.9~15.2円)で、輸出用は2500VND(約15.2円)から、またピザ用の大きいサイズは2800~3000VND(約17~18.2円)となっている。一方、若者たちが手掛けるものは1枚当たり7000~8000VND(約42.4~48.5円)になってしまい、売上を上げることが難しい状況だ。

 ハーさんは、1000枚単位で卸売りをする場合、1枚当たりの価格を1800VND(約10.9円)に設定することで、スーパーマーケットで売られている紙皿と同等の価格にして、葉っぱのお皿をより多くの人に届けたいのだという。

 シーグレープの葉以外でも、この圧縮したお皿で起業したい若者たちは注意深く学ぶべきだとハーさんは語る。何の葉でも構わないが、原材料と労働力の確保が重要であり、それらが確保できなければ、手作業による自然の製品から利益を上げることは非常に難しい、とハーさんは付け加えた。 

[Phu nu Viet Nam 12:23 23/05/2023, A]
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