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[特集]

透析患者のために無料シェアハウスを建てた夫婦

2024/01/21 10:29 JST更新

(C) VnExpress
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 南部メコンデルタ地方ビンロン省在住のチャン・バン・ヒエンさん(男性・43歳)は、今から5年前に同地方カントー市総合病院を訪れた際、多くの透析患者が病院の廊下で寝ている状況を目にし、「彼らのために何かしなければ」と思い立った。

 ヒエンさんは妻のグエン・ティ・キム・ホンさん(女性・38歳)に病院での状況を話し、透析患者を無料で受け入れるシェアハウスを建設したいのだと打ち明けた。ホンさんは夫の計画に賛成し、無料で寝泊まりしてもらうだけでなく、食費や水道光熱費も援助してはどうか、と提案した。

 「でも、このアイデアは親戚や友人から反対されました。見ず知らずの人を住まわせるための家を建てて、飲食や交通手段まで世話をする人がどこにいるんだ、と、皆が口を揃えて言いました」とヒエンさんは振り返る。

 しかし、そんなことには耳を傾けず、ヒエンさんとホンさんは家族が持っていた土地に家を建てることにした。透析を受けている人は、1日過ぎればその分また1日困窮することになる。そのため、一刻も早く家を建てるべく、夫婦は協力して資材を買い集めた。

 夫婦の決意を目の当たりにして、友人や慈善家たちも納得するほかなく、労力や資金を提供して夫婦に協力した。

 2019年2月、ビンロン省ビンミン郡タインフオック街区の広さ200m2の土地に、30床ほどのベッドを備えた3部屋の家が完成した。予算は限られ、建設も急いでいたため、プレハブ住宅しか建てられなかったが、ベッドにゴザ、マットレス、クローゼット、テレビまで完備した部屋ができた。

 家が完成すると、ヒエンさんはカントー市総合病院と第121軍医病院に行き、透析患者たちに声をかけた。

 カントー市ビンタイン郡出身のファム・バン・ホアさん(男性・34歳)は、夫婦のシェアハウスの最初のゲストだ。ホアさんは、最初はヒエンさんの誘いが本当のことだとはとても信じられなかったと語る。「見ず知らずの人に声をかけて、寝泊まりさせて食費まで出そうなんて、この人は頭がおかしいんじゃないかと思いましたよ」とホアさん。

 ヒエンさんに何度も説得され、ホアさんは「失うものも何もない」と考え、ようやく荷物をまとめて夫婦が建てた家に移った。数週間寝泊まりして、夫婦の熱意と誠実さを目の当たりにしたホアさんは、ようやくヒエンさんの誘いは嘘ではなかったと信じることができた。

 「ヒエンさんとホンさんのことを恩人だと思っています。2人がいなかったら治療費を支払う余裕などなかったでしょう」とホアさんは語る。

 南部メコンデルタ地方ドンタップ省出身のルー・バン・フーさん(男性・44歳)は腎臓病を患っており、やせ細って肌の色も浅黒く、身体のあちこちにこぶができている。3年近くこのシェアハウスで寝泊まりしているフーさんにとって、ヒエンさん夫婦は親戚のような存在だ。

 「2人は毎日、私たちの食事の世話をしてくれています。それから、時々有志の皆さんに薬の購入や透析にかかる費用もサポートしてもらっています」とフーさん。

 この5年近くの間に、透析患者のシェアハウスは何百人もの貧しい人々を救ってきた。最も多い時で約30人、少ない時でも約15人がここで生活してきた。健康状態が悪くなって亡くなってしまう人もいれば、地元で治療を受けるために親戚の家に移る人もいるため、入居者の数は一定ではない。

 「誰かが亡くなるたび、親戚が亡くなったような、とても悲しい気持ちになります。もうずっと長いこと、皆さんのことを自分の人生の一部のように思っていますから」とホンさんは語る。

 シェアハウスに住んでいる間に亡くなり、身寄りもなかった人にはヒエンさん夫婦が葬儀を執り行った。「生前に大変な肉体的苦痛を味わっていらしたので、私たちが葬儀を手配して、せめて亡くなった後は安らかに眠ってほしいという思いからです」とヒエンさんは話す。

 「無料シェアハウス」を維持する資金源は、ヒエンさんが工事現場でショベルカーやクレーン車を運転して稼ぐお金と、ホンさんが縫製工場で稼ぐお金、そして有志の人々からの寄付で成り立っている。

 「シェアハウスの月々の費用は600万~700万VND(約3万6000~4万2000円)ほどです。ここ数年は景気が悪く、収入も減少してしまいましたが、入居者の皆さんへの待遇は何とか維持しています」とホンさんは話す。

 今から約2か月前、ヒエンさん夫婦は、南部メコンデルタ地方ティエンザン省にも透析患者のためのシェアハウスを建設した。ここでは約30人を受け入れているが、入居者の多くが経済的に極めて困難な状況にある。

 さらに、南部メコンデルタ地方カマウ省にも、近くシェアハウスを建設する予定だ。

 「エネルギーがある限り、そしてコミュニティの協力が得られる限り、透析患者の皆さんに寄り添っていきます。人間のエネルギーには限界がありますが、私はもっともっとエネルギーが欲しいんです。シェアハウスが美しい思い出のたくさん詰まった場所となり、透析を受けている皆さんの痛みを少しでも和らげることができればと思っています」とヒエンさんは語った。 

[VnExpress 12:13 15/01/2024, A]
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