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[特集]

SNSでテトのバイク帰省仲間探し、同郷たちと愛する故郷へ

2024/02/04 10:26 JST更新

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 旧暦12月の半ば、南中部高原地方ザライ省出身の会社員のビック・ゴックさん(女性)は、昼休みを利用してテト(旧正月)前の旧暦12月27日にバイクで一緒に故郷へ帰るグループへの参加を申し込んだ。

 ゴックさんは、バイクでの400kmの旅は決して快適ではないとわかっているが、他に選択肢はなかった。「ホーチミン市からザライ省まで長距離バスで帰るとなると、いつもの2倍の50万~60万VND(約3000~3600円)はかかり、さらにバイクの駐車料金も70万VND(約4200円)以上の出費になってしまいます。これだけで、テトに使うお金の5分の1が飛んで行ってしまうんです」とゴックさんは語る。

 2023年のテトにも、ゴックさんはソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)でザライ省までバイクで帰省する仲間を探した。こうしたグループでは、旧暦12月の初めごろからお互いを知って詳細な計画を立てるためにオフラインで交流する。

 そして、皆で約束した日に30~50人のグループで、道案内チームとトラブルサポートチームとともに、故郷へ向けて出発する。「私は女性で1人旅でもあるので、グループに参加することで安全に帰省することができます」とゴックさん。2024年のテトは、ゴックさんにとって2回目のバイク帰省となる。

 ザライ省出身の工場労働者であるルオン・バン・トゥさん(男性・26歳)は、この4年間、同郷の仲間とバイクで一緒に帰省している。トゥさんは乗り物に酔いやすく、テトのぎゅうぎゅう詰めのバスに乗るのを避けるため、バイクで帰省しているという。「バイクで帰れば、途中で休憩したり食べたり飲んだり、時間も自由ですから」とトゥさん。

 トゥさんがバイクで帰省するもう1つの理由は、仕事の都合でテト休みが直前までわからないため、休みがわかった時点ですでにバスの運賃が高くなっていたり、もしくは売り切れてしまっていたりするからだ。そのため、2019年末から「バイク帰省」のグループに参加し、同郷の帰省仲間を探している。

 トゥさんもゴックさんも、メンバー数が3000人にも上るSNSの「ザライ省バイク帰省の会」に参加している。VNエクスプレス(VnExpress)の調べによれば、SNSにはこのようにバイク帰省仲間を募るグループが20件以上存在し、それぞれメンバー数は3000~2万2000人にも及ぶ。その多くはホーチミン市を出発して、南中部高原地方や南中部沿岸地方、東南部地方に帰省する人々だという。

 テトが近づくと、こうしたグループの活動が活発化する。1日に5~10件の投稿があり、帰省の日時や方法を相談するのだ。

 「ザライ省バイク帰省の会」を立ち上げたバオ・トゥエンさん(男性)によると、こうしたグループのメンバーは主に学生や工場労働者、小さい子供がいる家庭、または50歳以上の労働者などだという。「グループは、慈善団体やバックパッカーのグループではなく、ボランティア精神と相互扶助のもとで活動しています」とトゥエンさん。

 各グループは、日によって40~120台のバイクで移動し、特に旧暦12月27日と28日の帰省が最も多い。グループはホーチミン市の集合場所を出発し、東南部地方ビンズオン省、同ビンフオック省、南中部高原地方ダクノン省、同ダクラク省を経由して、ザライ省に向かう。移動距離は400kmで、所要時間は交通状況にもよるが12~14時間ほどだ。

 「ダクラク省バイク帰省の会」の管理人のボー・チャム・ラムさん(男性・31歳)によると、バイクで帰省するメンバーの40%は、様々な事情で長距離バスのチケットが購入できない人々だという。

 ラムさんは、1月の初めから2024年のテトの帰省仲間を募り始めた。旧暦12月20日から29日にかけて、9回の旅が予定されており、一緒に帰省する延べ人数は1000人余りに上るという。帰省グループの主催側は、参加者の氏名や年齢、自宅の住所などの情報を集め、必要な人にはバイクの手配も行う。

 ラムさんのグループには約200人のボランティアメンバーがおり、ボランティアメンバーがサポートチームとして各日の旅程に散らばって参加する。グループは原則として1列になって、時速60km以下、人口密集地域では時速40km以下で走行する。一緒に帰省するバイクの台数は30~50台、旧暦12月27日以降は100台以上になる。参加メンバーは速度を守り、道案内チームより先を走ってはならない。

 ベトナム国家大学ホーチミン市校人文社会科学大学の社会学講師であるブイ・ティ・ミン・ハー氏によると、ホーチミン市やハノイ市などの大都市で働く労働者がバイクで帰省する現象は、様々な理由からますます一般的になりつつある。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行中、大都市では公共交通機関の運行が限られ、多くの人々がバイクで帰省せざるを得なかった。収束後には、労働者は不景気や収入の激減、もしくは失業に直面し、長距離バスのチケットを含めて、出費を最大限に抑えることを余儀なくされている。

 また、ハー氏によれば、特に20~30代の若者がバイクで帰省することを選択している。こうした若者たちは、長距離移動でも身体は元気いっぱいで、年末の「旅行」として、テトの帰省に観光も兼ねるのだという。

 ホーチミン市の大学に通うニュー・クインさん(19歳)は、長距離バスのチケットを買うことができないというわけではないものの、過去6回はバイクでの帰省を選んでいる。「帰省の道中に、冷たい空気と美しい景色を体験するのが好きなんです」とクインさん。唯一の問題といえば、バイクで帰省すると実家に持ち帰るテトの贈り物が詰み切れないため、別途事前に長距離バスで荷物だけ送らなければならないことくらいだという。

 会社員のタインさん(男性・22歳)は、帰省グループは100人を超えることもあり、サポートチームは大変だと話す。タインさんのように大学を卒業したばかりの人々にとって、テトの航空券は手の届かないものであり、さらに長距離バスは長距離バスで不便だ。タインさんの故郷はダクラク省ブオンチャップ町にあるが、中心部から遠く離れており、近くを通るバスもないため、交通の便が悪いのだという。

 一方、先の社会学の専門家であるハー氏は、テトに大勢で一緒にバイクで帰省するグループは、交通管理において問題にもなっていると話す。ただし、「帰省の手段は個人の選択であり、制限はできません」とも語る。こうしたグループには、道案内や車両の修理、常備薬の持参などを担当する経験豊富なメンバーを配置することが求められる。

 先のタインさんは、「テトは皆が実家に帰るとき。テトに帰省したくてもできない人を、誰も置き去りにはしたくないんです」と語った。 

[VnExpress 06:30 28/1/2024, A]
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