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[特集]

10代で結婚、30代で孫の世話…連鎖する児童婚

2024/04/21 10:12 JST更新

(C) dantri
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 他に人のいない家の中で、タオ・バン・ポーさん(男性・36歳)が子供をあやして泣き止ませようとしている。一見、ポーさんが自分の子供をあやしているのかと思いきや、実はこの子供はポーさんの「孫」だ。

 少数民族のモン族が多く暮らす北中部地方タインホア省ムオンラット郡プーニー村のプーグア地域では、結婚したカップルの30%が児童婚で、近親婚のケースも少なくない。両親が児童婚ならその子供も児童婚と世代をこえて連鎖し、30代で孫がいるということも珍しくない。

 ポーさんの妻、ホー・ティ・トーさんは37歳だ。ポーさんとトーさんは3年近く前に祖父母になった。父親は早くに亡くなり、母親は再婚し、叔父と一緒に暮らしていたポーさんは、経済的に苦しい生活だったことから、幼いころに学校に通うことができなかった。

 2003年の春のこと、15歳だったポーさんは遊びに出かけた先で、同じ村のファーデン地域出身で当時16歳のトーさんと出会い、恋に落ち、2人は結婚した。

 トーさんは17歳で長女を出産。若い夫婦には次々と子供が生まれ、ますます生活は苦しくなっていった。トウモロコシ畑やキャッサバ畑がいくらあっても、一家が貧困から抜け出すことはできなかった。2004年に建てた家は老朽化が進んで修繕もできないほどだった。2021年になって、ポーさん一家は公安省から新しい家を割り当てられた。

 ポーさん夫婦は、子供たちには親と同じ過ちを繰り返してほしくないと、子供たちを学校に行かせようとした。しかし、長女のタオ・ティ・ドーさん(15歳)は進学を望まず、結婚したがった。

 長女のドーさんは中学2年生(日本の中学1年生に相当)だった2020年のテト(旧正月)に、ムオンラット郡クアンチエウ村のプードゥア地域に暮らすダオさんに恋をし、母親の反対も聞き入れず、ダオさんとの結婚を決めた。ドーさんはその後、中学校を中退し、ダオさんの実家に入り、トウモロコシやキャッサバを栽培して生活した。そして2021年、16歳で出産を経験した。

 ドーさんは痩せこけて肌も青白い。早くに結婚・出産し、必死で働いているせいで、実際の年齢よりも老けて見える。夫のダオさんも小柄で痩せこけ、子供も栄養失調で発育が不十分だ。

 「早くに結婚することが、こんなに大変だなんて思いませんでした。私も夫も結婚手続きをしていないので、もうすぐ3歳になる息子もまだ出生証明書がないんです」とドーさんは今にもこぼれ落ちそうな涙をこらえて話す。

 プーニー村人民委員会によると、10年前の村内の児童婚の割合は45%だったという。現在、30%の夫婦が30代で祖父母になっている。2023年にプーニー村では60組が結婚手続きを行い、このうち13組は児童婚だった。注目すべきは、13組のいずれも、年齢差はなく夫も妻も若いという点だ。

 プーグア地域では最近、こんな事件もあった。家族に恋愛を禁止された13歳の少女が、有毒な葉っぱを食べて救急搬送されたのだという。少女は中学3年生(日本の中学2年生に相当)で、同じ郡の少年に恋をした。

 しかし、両親は2人がまだ幼いことを理由に反対し、学業を優先させるように言い聞かせた。少女は泣きじゃくり、飲食もせずに部屋に閉じこもってしまった。

 少女は、結婚を認めてくれないのであれば、自分の真実の愛を証明するために自殺する、両親は後悔すればいい、と何度も両親を脅した。そして、早朝に森に行って葉っぱを採り、実行に移してしまったのだ。

 児童婚の連鎖は、プーグア地域だけの問題ではない。プーニー村のカーノイ地域は、ムオンラット郡の中で児童婚の割合が2番目に高い地域となっている。この地域でも、30代の夫婦の30%にすでに孫がいる。

 児童婚の割合が高い理由として、子供たちが早くから家族のもとを離れて学校に通うということが挙げられる。中学1年生(日本の小学6年生に相当)から全寮制の学校に通い、両親の目が行き届かないのだ。こうした中で、インターネットなどを通じて様々な情報が入るようになり、思春期を迎えるとそういった情報の影響を受けて、異性への興味が芽生える。

 もう1つは、地域の人々、特にモン族の人々の考え方に、古くからの慣習が深く根付いているということがある。彼らは、子孫を残すために、多くの子供に囲まれて幸せになるために、労働力を得るために、早く結婚すべきという固定観念がある。

 児童婚の年齢は主に13歳、14歳が多いという。夏休みやテトに遊びに出かけ、そこで相手と出会って恋に落ちるパターンが多いためだ。また、家族に反対されて、有毒な葉っぱを食べたり、殺虫剤や除草剤を飲んだりして自殺未遂を起こすケースも毎年後を絶たない。自殺未遂に終わらず、実際に命を落とした少年少女もいる。

 多くの両親は子供が死んでしまうことを恐れ、子供の望みをしぶしぶ受け入れざるを得ず、好きにさせるしかないというのが現状だ。

 2023年にムオンラット郡では412組が結婚手続きを行い、このうち12%にあたる50組が児童婚だった。50組のうち、21組は夫と妻の年齢差がなくどちらも若い。しかしながら、ムオンラット郡における実際の児童婚の割合は統計のデータよりもずっと高い。なぜなら、児童婚のケースのほとんどが、結婚式を行わず、結婚手続きも行わないからだ。

 以前は当局が児童婚を阻止する宣伝や運動を行っていたが、近年は児童婚をさせた家庭に行政処分を科しているため、児童婚の割合は減少しつつある。

 しかしながら、依然として多くの家庭では世代をこえて児童婚が連鎖している。2人、3人と子供がいても結婚手続きを行わないカップルもいる。そして、そのまま30代になり、子供も若くして結婚し、孫ができるのだ。

 児童婚、貧困、文盲はもはや、タインホア省のへき地に暮らすモン族の人々の生活の大部分をひっ迫させる、「悪循環」のようなものとなっている。 

[Dan Tri 06:59 19/03/2024, A]
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