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[特集]

200年の歴史を有する毒ヘビ養殖村、高収入も危険と隣り合わせ

2025/04/06 10:19 JST更新

(C) thanhnien
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 ハノイ市の北西約50kmに位置する北部紅河デルタ地方ビンフック省ビントゥオン郡ビンソン村は、「ヘビ養殖村」として知られている。この村は、ベトナムの毒ヘビ(コブラ)の一大産地となっている。

 高齢者の話によると、この地域におけるヘビの養殖は約200年の歴史を有する。当初は野生のヘビを捕獲して飼育する人もいたが、ヘビがもたらす経済的価値に気づいた住民たちは、家庭でのヘビの養殖の規模を大きく拡大した。同時に、地域の他の家庭に対してヘビの養殖の経験を広め、支援することで、ヘビの養殖と商売のモデルを発展させていった。

 ビンソン村は1979年、人類生物生物学・生化学センター(現在のバイオテクノロジー研究所)の支援を受けて、「ビンソンヘビ養殖場」とも呼ばれるヘビ養殖・繁殖センターを設立した。2006年には伝統工芸村の基準を満たしたヘビ養殖村として認定され、2007年にはビンソンヘビ養殖村協会が設立された。

 この地域でのヘビの養殖は森林警備隊によって毎年定期的に監視されている。現在、ビンソン村の世帯全体の7割近くにあたる500~600世帯がヘビを養殖しており、飼育されているヘビの数は1000~5000匹に上る。

 ヘビの養殖はそれほど難しくない。餌を与えて小屋を掃除し、成長を待つだけだ。養殖小屋もそれほど大きなスペースを取らない。ヘビの養殖小屋は箱型で、1部屋の高さは約30~40cmと、ヘビが中で丸まるのに十分な大きさだ。小屋の扉の外側は木製で、鉄鋼が貼られ、厳重に施錠されている。

 飼育者は3~4日おきに給餌し、半月に1度は小屋の掃除に1日を費やす。給餌が不要な日は、農業や物売りなどの他の仕事に時間を使うことができる。

 村の主要産物は商業用のヘビと繁殖用のヘビで、このほかにも商人たちは酒や軟膏に加工するためにヘビを購入したり、薬にするために蛇皮を購入したりする。

 ヘビの養殖者は、養殖を始めて2年経つと商業用ヘビを販売できるようになる。現在、商業用ヘビ1kgあたりの価格は70万~80万VND(約3950~4500円)で、卵は1個あたり6万~8万VND(約340~450円)となっており、ほとんどが中国市場向けに販売されている。

 ビンソンヘビ養殖村協会の会長であるグエン・バン・ティンさん(男性)は、毒ヘビ養殖歴42年のベテランだ。ティンさんによると、村の人々はかつてヘビ毒も販売していたという。ティンさんは、もし東欧市場が変動していなければ、ビンソン村の人々の経済状況は間違いなく今よりずっと発展していただろう、と話す。「1992年当時、ヘビ毒は金よりも高価だったんですよ」。

 長年にわたってヘビを養殖する中で、多くの家庭は物質的にも精神的にも生活の質が向上した。村には複数階建ての近代的な家屋が建ち並び、農村の交通システムも急速に発展し、広々とした学校や診療所などの社会福祉施設も建てられた。

 ティンさんによると、ビンソン村では毎年約2000tのヘビの餌が消費され、自然の餌では需要を満たすことができなかった。そこでティンさんは、廃棄される鶏や家禽の頭や首に微量栄養素を加えてヘビの餌にする研究を行い、現在は全てのヘビ養殖世帯がこのタイプの餌を使っている。

 ビンソン村人民委員会のハ・バン・フン副主席によると、ビンソン村は毎年ヘビの養殖で数千億VND(1000億VND=約5億6500万円)を稼いでおり、経済的価値の高さからフン氏自身も20年以上にわたりヘビの養殖に携わっているという。

 また、2022年には、ビンソン村はベトナム版ギネスブックのベトナム・ブック・オブ・レコード(ベトキングス=Vietkings)から「ベトナムでコブラ養殖の許可を取得した世帯数が最も多い伝統工芸村」として認定された。

 経済的価値は非常に大きいヘビ養殖だが、常に多くの潜在的なリスクが伴い、養殖者の命は常に危険にさらされていることから、ビンソン村の人々はこの仕事を「死と隣り合わせの仕事」と呼んでいる。フン氏もヘビに4~5回は噛まれたことがあるという。

 「一番痛かったのは指を噛まれた時で、焼けるような激しい痛みを感じました。それでも、私たちには応急処置の経験があります。ヘビに噛まれた時の治療のポイントは、安静にして、傷口に止血帯を当てて毒が心臓までまわらないようにすることです。次に傷口を洗い、身内に連絡して、薬を使い、診療所に行って次の処置を受けます。その後、ハノイ市のバックマイ病院に移送され、さらに治療を受けることもあります」とフン氏は語る。

 ヘビに噛まれて大事に至ることのないよう、村の各家庭の冷蔵庫には必ず血清が常備されているほか、村にはヘビに噛まれた際の治療を専門とする2人の医師もいるのだという。

 そのため、最近はヘビに噛まれて命を落とす人はいなくなったが、各世帯が養殖を始めたばかりのころはヘビに噛まれるケースが多発し、年に200件近くもの事故が起き、多くの死者が出た年もあった。しかし、最近はヘビの養殖技術と応急処置の技術が向上し、ヘビに噛まれる件数も大幅に減少し、2024年にはわずか20件余りで死者はゼロとなった。

 フン氏と同じく、先のティンさんもヘビに11回も噛まれ、最もひどい時は死にかけて手の指1本を失った。ティンさんによると、養殖されているヘビは獲物をとらえるために毒を分泌することがないため、野生のヘビよりも毒が強いという。そのため、ヘビに何度も噛まれるとアレルギーを起こし、適切なタイミングで応急処置を受けなれば、死に至る恐れがある。

 「ここではヘビに噛まれることはいたって普通なんです。私は11回も噛まれましたが、怖くはありません。ヘビを捕まえた時に、知らないうちに噛まれていたこともありますが、血を見て初めて噛まれたことに気づき、応急処置をしました」とティンさんは話す。

 直接触れるどころか、コブラを写真で見ただけで多くの人は恐れおののくだろう。しかし、ビンソン村の人々にとって、給餌や小屋の掃除、捕獲などの仕事は日々ごはんを炊くのと同じようなもので、女性たちも素手でヘビを捕まえることができる。

 幼いころから両親にこの仕事を教えられてきたフン・ティ・クックさん(女性)は、以前はヘビの小屋に近づくのも嫌だったが、しばらくすると慣れてきて、高収入をモチベーションに徐々に恐怖心を克服し、ヘビに触れたり捕まえたりできるようになったのだという。

 クックさんはこれまでに数えきれないほど多くのヘビを養殖してきた。そしてこの仕事によって、家族は毎年数十億VND(10億VND=約560万円)の収入を得ている。「今年は巳年なので、私たちはこのヘビ養殖村の一員であることをとても光栄に、誇りに思っています。今年はヘビ製品の価格が上昇し、市場も安定して、村の皆の生活が向上することを願っています」とクックさんは語った。 

[Thanh Nien 08:27 29/01/2025, A]
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