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[特集]

世界のベトナム人街を訪ねて【ロンドン編】

2025/05/04 10:30 JST更新

(C) T.Sasaki
(C) T.Sasaki
small>(※本記事はVIETJOベトナムニュースのオリジナル記事です。)

 ロンドン:歌謡曲でムードたっぷり、街角カフェでベトナムコーヒーを1杯

 国外に住むベトナム人、いわゆる越僑は、2024年末時点で世界130か国・地域以上に約600万人いるとされる。その歴史は長いが、最近でも労働者派遣や留学などさまざまな形で海外に移住する人は多い。そんな人の流れが、海外でベトナム人街を形成するきっかけとなっている。興味深いのは、国が変わればベトナム人街やそこにいる人の様子も異なる点。世界各地の小さなベトナムを訪ねてみた。

 最初に訪ねたのは英国のロンドンだ。街を南北に分かつテムズ川にかかる巨大な橋「タワーブリッジ」の北側に、ベトナム系の店が集まる一角がある。通りの名称はキングスランドロード(Kingsland Road)。鉄道「ロンドン・オーバーグラウンド(London Overground)」のホクストン(Hoxton)駅からは徒歩約3分、バスはフォルカーク・ストリート(Falkirk Street)停留所から降りてすぐとなる。

英国名物の2階建てバスとキングスロード・ストリート

 ベトナム人街といっても、横浜市にある中華街のようにいかにも現地と異なる建物が立っていたり装飾がなされているわけではなく、ベトナム系の店が現地の通りや建物に溶け込みながら並んでいる。伝統的なベトナム料理店からフュージョン料理の高級店、小さなカフェまで、約200mの範囲に大小20~30軒ほどが軒を連ねる。


ベトナムレストランが並ぶキングスロード・ストリート

メニューは観光客だけでなく在住ベトナム人も喜ぶような品揃えで、ベトナム語と英語が併記されている

 特に、気軽に入って楽しめる家庭的な店が多く見えた。メニューはもちろん看板までベトナム語の店もあり、現地の人には興味をそそられ、ベトナム人には懐かしさを感じさせる一角となっている。

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 「ハノイカフェ」で楽しむベトナムコーヒー

 さまざまある店の中で、ピンクの店構えがひときわ目を引く「ハノイカフェ」に入った。

ピンクの外観と立て看板がかわいらしいハノイカフェ

 足を踏み入れた瞬間、驚いたのはBGMだ。かわいらしい外見から若手歌手のVポップ(歌謡曲)やジャズなどが流れているのだろうと思いきや、聞こえてきたのはベトナムの古い歌謡曲。壁にはプロパガンダアートのポスターが並び、一瞬にしてベトナムの世界に引き込まれた。


店舗各所からベトナムを感じる

 ベトナムコーヒーを打ち出す同店で、カフェタイムと決め込む。バインミーが得意料理のようで、「オリジナル」「バーベキュー」など数種類ある。持ち帰りしようと決め、スタッフを呼び止めた。

 ところがそのスタッフは、英語がそれほど得意ではないようで意思疎通がうまくいかない。特に「持ち帰り」を巡り手を変え品を変え伝えてみるが要領を得ない。そこで「マンベー(Mang Ve)」と拙いベトナム語で言ってみたところ、彼の顔がぱっと明るくなり「OK」とのジェスチャーと満面の笑顔をもらえた。スタッフは気分を良くしたのか、おすすめのバインミーまで推薦してくれた。ちょっとしたことで店員とも一気に打ち解ける、ベトナムのローカル店にいるような感覚を、遠く離れたロンドンでも味わうことができた。

 ベトナムコーヒーは英国人向けなのか量が多めで、ドリップが終わった頃にはコップの7~8割程度を満たしている。さながら、ラージサイズのベトナムコーヒーといったところだ。現地ではあまり知られていないのだろう。ガラスのコップに載ったアルミのドリッパーは、他の現地来店客から注目を集めた。注ぐ時から楽しいこのイベント性のある独特のコーヒー、ぜひ英国人にも楽しんでいただきたいものだ。

ベトナムコーヒーは4.5ポンド(約860円)

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 ハノイカフェを出て、近くにあったアジア系スーパーマーケットへ。中国商品もあるが、街が街だけにベトナム商品が圧倒的に多い。目にとまったのは店名と同様の「Longdan」という商標を持つ、ベトナムでは見かけないベトナム商品たち。後で調べてみたところ、ベトナム系オーナーによるアジア系スーパーマーケットチェーンのようだった。自社サイトやプライベートブランド(PB)も展開しているところを見ると、現地にしっかり根付いているもようだ。海外には海外ならではの大手ブランドがある。こうした本国との違いが面白い。


プライベートブランドのほか、ベトナムでもおなじみの製品がそろうスーパー


「ユーロスター」でパリへ

 次なる目的地は、フランスのパリにあるベトナム人街だ。もちろん飛行機でも行けるが、せっかくなので「ユーロスター」で行くことにした。

 ユーロスターは、英国と欧州を結ぶ高速鉄道だ。ドーバー海峡の海底にある英仏海峡トンネルを渡る鉄道で、トンネルの前後では変わりゆく現地の景色を楽しめる。乗客がサンドイッチや菓子など思い思いの食べ物を持ち込んで食べている様子は、さながら新幹線で駅弁を食べている人を見るようで旅風情を感じさせてくれる。

ユーロスターの出発点となるセントパンクラス駅。壮大な建物が目印

英国と欧州をつなぐユーロスター

 たった2時間で、異なる景色と文化を持つフランスに到着。ベトナムはフランスの影響を多分に受けているが、そのフランスにいるベトナム人たちはどう暮らしているのか気になるところ。そんなわくわく感を抱き、パリの街へと踏み出した。


【Text & Photo by T.Sasaki】 

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