[特集]
世界のベトナム人街を訪ねて【パリ編】
2025/05/11 10:30 JST更新
) (C) T.Sasaki |
small>(※本記事はVIETJOベトナムニュースのオリジナル記事です。)
【ロンドン編】は
こちら
パリ:本場バゲット&ピリ辛だれのバインミー、学生街の繁盛店
フランスには越僑が多い。歴史的にベトナムからの移住者が多かったため、すでに何世代にもわたって住み続けている家族もいる。在住者の多さを象徴するものなのか、パリにはベトナム人街と呼べる場所が2か所ある。5区と13区だ。
パリのベトナム人街で特徴的なのは、いずれの区も英国のロンドンのように1つの通りにベトナム系店舗が並んでいるというより、区内に多くのベトナム系店舗が点在している点だ。ぶらぶら歩いていればベトナム系店舗に当たるという状況だったため、街を見物がてら散歩して、いいと思える店に立ち寄ってみることとした。
5区のバインミー専門店
5区には大学などの教育機関が多く、学校の周囲は学生街になっている。気軽に入れそうな雰囲気や価格の店が並ぶ通りがあったりと、散歩にぴったりの街並みだ。
パリの学生街にたたずむベトナムレストラン
ちょうど昼前だったのでベトナムレストランを探してみたところ、目に飛び込んできたのが「ボンジュール・ベトナム」の看板。この街の店を代表するかのような、学生好みの入りやすそうな店構えで、バインミー4種はいずれも5.5ユーロ(約890円)と非常に分かりやすい。創業者が南中部沿岸地方クアンナム省ホイアン出身なのか、ホイアンの木の置物が置いてある素朴なウィンドウディスプレーも気に入り、入ってみた。
小さな店が立ち並ぶ、ボンジュール・ベトナムが並ぶ通り
ボンジュール・ベトナムのショーウィンドウや内部は、まるで雑貨店のよう
中にはまるでベトナムの昔の家のように年季の入ったカウンターや小さなテーブル、椅子があり、懐かしい雰囲気に包まれていた。ベトナム系の主人が、カウンターで注文を受けている。客はベトナム系と思われる男子学生だが、どちらもネイティブそのもののフランス語だった。
注文すると1人しかいない調理担当の女性が手際よくぱっと作り、2~3分程度で出してくれる。片手でも食べやすいよう紙にくるまれているので、学生も食べながら店を出ていった。間を開けず、フランス人女子学生が2人入ってきて、バインミーを1つずつ注文。その後も小さな店に学生がどんどん入ってきて、たちまち次から次へと注文・テイクアウトの大にぎわい。押し寄せる学生たちにひるまず主人がうまくさばき、女性がさっと作って出す。阿吽の呼吸とはまさにこのこと。繁盛店の昼の光景はとても忙しく、しかし小気味よい。
黙々と手際よくバインミーを作り続ける女性
学生たちが向かう先が、近くのごく小さなラウンドアバウトだ。この中央のスペースでベンチや地べたに座り、仲間同士でバインミーをほおばっている。真似して青空の下で食べてみると、「ボンジュール・ベトナム」人気の理由が分かった。さっくりとした新鮮なバゲットは、さすがフランスといったところ。そこに、存在感ある濃いめの味付けの豚チャーシュー、口の中をさっぱりとさせるキュウリやなますと、味の調和のとれた具材が挟まれている。ほんの少しだけピリ辛のたれが食欲をそそり、一気にたいらげてしまった。
昼時は、カフェに囲まれたラウンドアバウトでバインミーを食べる人が多い
5区をさらにぶらぶらしてノートルダム大聖堂方面へ向かうと、ベトナム系スーパーがあった。店頭幕にはベトナム・タイ・日本と書いてあるが、実際はベトナム商品が約8割で品ぞろえ・量共に豊富。特に伝統茶菓子は売れ残りが心配されるほど積みあがっていたが、商品を手に取って熱心に品定めしているベトナム系の女性がいたため、現地での需要もあると思われる。フランス菓子は味の良さで有名だが、たまに東洋的な甘味も欲しくなるのかもしれない。
スーパーは品ぞろえが非常に豊富で、南部メコンデルタ地方キエンザン省のフーコック産ヌックマムなど地方の商品もそろえる 中華街の中にたたずむベトナム
5区を後にし、南に位置する13区へ。メトロ7号線メゾン・ブランシュ駅周辺に中華街が広がっているのだが、この中に紛れ込むようにベトナム系レストランも点在している。この中華街もロンドン同様、華やかな装飾などはないのだが、雑貨店から食堂、スーパーまで、中国系店舗が多く並んでいる。
13区中華街の目印となる「門」の形の門
5区ほど中心にはないためか、住んでいる人も多いようだ。ベトナムレストランも高級店はあまりなく、日常的に入れる定食屋のような店が点在していた。このほかベトナム人による保険の販売店もあるなど、生活密着の店が多い印象だ。
13区にあるベトナム系店舗は、中国系店舗の合間にあるといった印象
路頭では普段着姿で買い物袋を下げ、ご近所同士でおしゃべりしているベトナム人も見かける。ベトナム語で話しているので、それだけ見ているとまるでベトナムの街角にいるかのような光景なのだが、決定的に違うのは挨拶。別れ際、互いに「メルシー」と言いつつ手を振って解散。ここはパリだったとはっとする。
行き交う人やちょっとした風景からベトナムを感じる
活気あふれる5区、生活感が感じられる13区。パリの小さなベトナムは特色が違っていて興味深い。気ままな散歩を楽しみながら巡るのがおすすめだ。
【Text & Photo by T.Sasaki】
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