[特集]
世界のベトナム人街を訪ねて【プラハ編・前編】
2025/06/08 10:37 JST更新
) (C) T.Sasaki |
small>(※本記事はVIETJOベトナムニュースのオリジナル記事です。)
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プラハ:ここはプラハかベトナムか?!「少数民族」が集う市場へ
チェコのプラハ郊外に「サパ」がある。サパといえば西北部地方ラオカイ省にある町だが、チェコでは大規模なベトナム市場「サパ・プラハ」を指す。チェコには非常に多くのベトナム出身者が居住しており、政府がベトナム出身の居住者を少数民族として認定しているほどだ。本国のサパは多くの少数民族が住んでいることで有名だが、サパ・プラハもまた「少数民族」であるベトナム系住民たちが働き、買い物し、集う場所となっている。どのような場所なのか訪ねてみた。
ベトナムが凝縮された市場
プラハ中心部から地下鉄とバスを乗り継いでどんどん南下し、不安になるほど住宅がまばらになってきた頃、ベトナム語の大きな看板広告と「SAPA」の文字が掲げられたゲートが目に飛び込んできた。サパ・プラハの入り口だ。
「Sídliště Písnice」という停留所のそばに、大きなベトナム語の看板が立つ
レストランと書いてあるがこれもサパ・プラハのゲート。バス停に一番近い
自転車で回った方が効率がいいほど広大な敷地に立つ同市場には、食品店から衣料品店、日用雑貨店、食堂、理髪店まで、ありとあらゆるベトナム系店舗が集まっている。海外の場合、ベトナムや日本、中国などの商品が一緒になった、いわゆるアジア系店舗が多いが、ここは見たところほとんどがベトナムだ。
看板という看板にはベトナム語。通りを行き交う商人同士の挨拶から、ベトナム系顧客と商人の接客トーク、休憩中の作業員同士の雑談まで、いずれもベトナム語がチェコ語より多く聞こえた。各店舗からはBGMとして流しているベトナムの歌謡曲が聞こえ、食堂付近に行くとブンチャーの肉を焼く香ばしい匂いがただよう。ベトナムに来たのだろうかと錯覚してしまうほど、市場のいたる所、あらゆる状況から、ベトナムを身近に感じることができる。
構造としては、敷地の中央にハノイ市のドンスアン市場のような衣類やファッション雑貨を扱う店が集まった屋内市場があり、それを取り囲むようにその他の独立した店が入る建物が並んでいる。正確な店舗数はとても把握しきれないが、見たところ屋内・屋外でそれぞれ80~100店舗ほどあるのではないかと思われる。
日用雑貨店が並ぶ通り
理髪店にはチェコ人の来店客もいる
食品店の店頭にはたくさんの南国の果物
結婚式場もある。長く住めば結婚や宴会の需要もあるのだろう とある店の前の軒下に複数吊り下げてあったTシャツを見ていたところ、店の人が「それは一般客に売らないものなんですよ」と申し訳なさそうに言ってきた。日用雑貨類や衣類を中心に、卸売りが目立つ点がサパ・プラハの一つの特徴だ。特に屋外市場では、造花や文具、おもちゃなどを扱っている卸売店が多くを占めていた。ベトナム人、チェコ人問わずバイヤーと思える人たちとベトナム系商人が商談する姿や、大量の商品を配送するトラックが行き交う様子、荷台に箱を積み上げ出荷している光景なども見られ、大口の取引も頻繁な市場であることが分かった。
もちろん屋内・屋外市場ともに小売りにも対応していて、品ぞろえが豊富なうえ価格も決して高くははない。例えば屋内市場では、部屋着に最適なウエストゴム入りのパンツが250チェコ・コルナ(約1650円)、麦わら帽子が300チェコ・コルナ(約2000円)で売っていた。現地でも知られた場所なのだろう。複数の店を回り、服をまとめ買いしているベトナム人やチェコ人が多かった。
サパ・プラハ中央にある、ドンスアン市場のような屋内市場
屋内市場の帽子店。ノンラー(Non La、円錐形の葉笠)から冬用・夏用帽子まで取りそろえる
現地の商習慣なのか、屋内・屋外市場にある店舗ではいずれも、店員による来店客への売り込みはきつくない。価格を聞けば答えてくれる程度。店員によるプレッシャーに負担を感じることなく、思う存分商品選びが楽しめた。
後編に続く:商人たちのコミュニティが根付く/陸路でベルリンへ
【Text & Photo by T.Sasaki】
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