[特集]
8人兄弟の学者一族「グエン・ラン家」、故クオン氏を偲ぶ【後編】
2025/06/29 10:35 JST更新
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ベトナムを代表する考古学者・人類学者で、音楽家としても知られるグエン・ラン・クオン(Nguyen Lan Cuong)氏が2025年5月6日、ハノイ市のベトナム国家大学ハノイ校(ハノイ国家大学)医科薬科大学附属病院で死去した。
クオン氏は、辞書編纂者・作家で「人民教師」の称号を授与された故グエン・ラン(Nguyen Lan)氏の三男だ。クオン氏は兄と姉、弟たちとともに、きょうだい8人で父親に倣い、学者一族としての伝統を築き上げた。
前編はこちら
クオン氏の弟で、一家の七男であるグエン・ラン・チュン(Nguyen Lan Trung)氏は、兄との数えきれない思い出の中で、特に忘れられない一件として「海での救出劇」を挙げた。
ある日、クオン氏は東北部地方クアンニン省の海食洞(波による浸食で海岸の崖にできた洞窟)での発掘調査中に転倒してしまった。クオン氏がチュン氏に助けを求めて電話をかけると、偶然にも、チュン氏は同じタイミングでクアンニン省にいた。そこでチュン氏はすぐに友人たちを頼って迎えの船を手配し、無事にクオン氏を救出したのだった。
本土へ向かう船の上で、クオン氏は骨折した脚の痛みに耐えながらも、洞窟や出土遺物について熱心に語り続けた。そのときチュン氏は、兄の研究に対する情熱と献身に感服したという。
クオン氏とチュン氏の父親であるグエン・ラン氏はベトナムの著名人で、1906年に生まれ、2003年に死去した。ラン氏は「人民教師」として、また辞書編纂者・作家・学者として、生涯をベトナムの教育に捧げた。
ラン氏は北部紅河デルタ地方フンイエン省ミーハオ郡(現在のミーハオ町)の貧しい家庭に生まれ、奨学金を得て名門のブオイ学校(現在のチューバンアン高校)に進学した。高校生だった1925年には、初の小説「田舎の少年(Cau Be Nha Que)」を執筆した。
ラン氏は後に、教育学と心理学の分野をベトナムの師範学校システムに導入する上で、大きな功績を残した。
グエン・ラン家は、8人の子供たち全員が研究に携わる教授・准教授・博士という、極めて珍しい学者一家だ。チュン氏は、きょうだい皆が父親を尊敬し、父親に感謝の念を抱いていると語る。
「父は子供たちに決して何かを強制することはなく、ヒントを与えてくれるだけでした。叱ることもなく、正しいことと正しくないことをただ説明してくれました。家族は常に団結し、お互いがお手本のような存在でした。父が机に向かえば、次男のズンも自然と勉強を始め、それに続いて三男のクオン、六男のベト、そして七男の私も、自発的に勉強を始めたものです」とチュン氏は話す。
チュン氏はこう続ける。「この精神は、私たちの子供、そして孫の世代にも引き継がれています。家族は常に励まし合い、お互いに学び合い、年長者がお手本を示します。こうして、大きな家族が小さな家族のお手本になっているのです」。
8人きょうだいは皆、人生を有益なものにしたいという願いから教師となり、父親のアドバイスに従ってコミュニティ活動のための協会などにも積極的に参加してきた。
多くの人が、グエン・ラン家には教育に関して何か特別な秘訣があるに違いないと考えている。しかし、チュン氏によれば、グエン・ラン家も他の家族と変わらず「普通」で、特別な教育方針があるわけではない。グエン・ラン家に世代を超えて受け継がれる精神は、常に家族を大切にし、家族の中にお手本を作り、他の人に目を向け、良い習慣を心がけることで自然と育まれたものだという。
チュン氏は「末っ子の私は、父や兄、姉を見て学びました。父に禁止されたわけでなくても、父がやらないことはやりませんし、兄がやらないこともやりませんでした」と話す。
チュン氏は、学生時代のことを今でも鮮明に覚えている。チュン氏は当時、奨学金のほかに、兄のズン氏から毎月1万VND、クオン氏から5000VNDの支援を受けていた。六男のベト氏もまた、兄たちから金銭的に支えられていた。
こうした絆と愛情が家族の伝統となり、きょうだいたちはそれを誇りに思い、感謝の気持ちを抱き続けているのだ。
[Dan Tri 05:58 09/05/2025, A]
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